『韓国経済研究院』が「韓国の家計負債の異常な増加速度は圧倒的に世界一」であるというリポートを出し、これを基に韓国メディア『朝鮮日報』がジョ・ギョンヨプ経済研究室長にインタビュー取材を行っています。
①②に分かれる大部の記事ですが、これが非常に興味深い内容ですのでご紹介します。
文政権の住宅政策の失敗こそ最大の原因である
まず以下の発言をご覧ください。
(前略)
リポートを出したジョ・ギョンヨプ『韓国経済研究院』の経済研究室長は「ここ数年の家計負債の急増は、文在寅大統領の不動産政策の失敗に一次的な原因がある」とし「アメリカ合衆国が金利を引き上げる可能性がある、今後1年が家計負債管理の節目になるだろう」と予想した。また、「家計負債危機が爆発すると、最終的に政府財政が安全弁の役割をするべきなのに、文大統領就任期間中に政府も借金が急激に増え、家計負債の安全弁が壊れた状態」と懸念を示した。
(後略)⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「文大統領住宅政策の失敗で南欧型経済危機の兆し」
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
Money1でも随分ご紹介してきましたが、ジョ室長が懸念する韓国の家計負債の増加速度が世界一という指摘は、『BIS』(Bank for International Settlementsの略:国際決済銀行)のデータを基にしています。
2020年末現在で、韓国の家計負債は前年比「9.4%」も増加しました(金額では1,998兆3,000億ウォン/約187.8兆円)。
この伸び率「9.4%」は『BIS』が調査対象とした43カ国のうちで韓国が最も高いのです。
他の国でもコロナ禍に見舞われたのは同じなわけで、なぜ韓国だけこのように家計負債が異常に増えたのか? ジョ室長は、それはひとえに文政権が不動産価格高騰を抑えるのに失敗したからだ、と断じています。
つまり、不動産価格の高騰のため、借金して不動産を購入する人が増加し、その金額も莫大なものになったのだ――という説明です。
以下にジョ室長の発言を引きます。
(前略)
――G5もコロナ事態を経験したのは韓国と同じです。韓国家計負債が特に急増した理由はなんですか?「コロナ事態のために自営業者が生計を維持するために融資が増えた側面もあるが、根本的には、住宅価格があまりにも速く上昇したのが原因です。
2030世帯が住宅価格上昇の爆弾を受け、落雷乞食に転落していないために借金してまで住宅、株式、暗号資産を仕入れているのがG5との最大の相違点なのです」
――政府の住宅政策の失敗が家計負債の増加の主な理由という意味ですか?
「そうです。住宅政策の失敗が最大の原因である」
(後略)※引用元は同上
借金をしてまで「今、資産を増やさないと」と考えた人々の動きが家計負債の異常な伸びの原因で、その大本は文政権の失政だと指摘していらっしゃいます。
韓国に到来するかもしれない「南欧型経済危機」とは?
①記事のタイトルにもなっている「南欧型経済危機」とはなんでしょうか?
それは2010年に起ったポルトガル、ギリシャ、スペイン、イタリアを襲った財政危機のことを指しています。
そもそも2008年にあったリーマンショックの余波のようなものですが、これらの国々では2010年に先立つ数年で政府負債と家計負債が急速に増えていたのです。
ポルトガル、ギリシャ、スペイン、イタリアの4カ国では、2005~2009年に民間負債(家計負債と企業負債を足したもの)が5年間で29%も増加しました。このように民間部門で体力が奪われた状態でリーマンの余波が来たのです。
以下にジョ室長の発言を引きます。
(前略)
「このように、民間部門の負債が急増して体力が弱くなった状況で、世界的な金融危機の火の粉が来ました。2010年に政府が借金についての消防士の役割をさせられると、財政危機に拡大しました。2016年から2020年までの5年間、韓国の民間債務は33.2%増加した。
韓国は、財政危機直前の南欧諸国より民間債務の状況が深刻です」
※引用元は同上
危機は瞬間的に来るのだ
また、危機の到来については以下のように述べていらっしゃいます。
(前略)
――負債危機はどのような方法で起こりますか?「南欧の場合を見ると、負債危機は瞬間的に来ます。
外国人投資家は、政府や民間部門で投資回収が危険であると考えると急にお金を抜きます。
ギリシャ場合には、政府の統計操作疑惑が引き金の役割をしました。
離脱する外国資本をとどめるには高い金利を与えるしかありませんが、国家財政が良くないと、リスクが高いと判断します。高い金利を提示しても投資家は無視します」
――韓国経済のファンダメンタルズ(基礎体力)は南欧よりいいのでは?
「もちろん、南欧よりファンダメンタルズはいいでしょう。しかし、負債危機は瞬間的に発生します。
金融会社が脆弱層から資金を回収し始めると、脆弱層の不良債権が、金融機関と実体経済に順番に移動していきます。民間債務、政府負債の増加速度と質的な側面を見ると、南欧諸国と比較して安心はできない。危機意識を持って管理しなければならない時点です」
(後略)※引用元は同上
というわけで、『韓国経済研究院』のジョ室長は韓国に経済危機が瞬間的に来るのではと懸念していらっしゃいます。アメリカ合衆国の利上げが見込まれるここ1年が勝負だ、とも。
また、家計負債を適切にコントロールしなければならない大事な時期であるのに、韓国は次期大統領選挙に突入しているため、具体的な施策が打てない状況に陥っています。これが心配とのことです。
このジョ室長の懸念が現実にならないといいのですが。
(吉田ハンチング@dcp)