日本ではあまり報じられませんでしたのでご紹介しておきます。
2021年09月08日、韓国政府与党『共に民主党』の尹昊重(ユン・ホジュン)院内総務が第391回通常会合で演説を行いました。
この演説の内容が、文在寅政権の自画自賛に満ちたものと韓国メディアでも「いかがなものか」と非難されています。
特に目を引くのは、「解放後75年で日本超えた」「(文在寅政府は)韓国を先進国にしたとして歴史に記録されるだろう」と述べたことです。
別の意味で歴史に残るような気がするのですが、それはともかく、何をもって「日本を超えたのか」としているのかが気になるところです。
『全国経済人連合会』のリポートの流用です
ユン院内総務の論拠としているのは、「購買力(PPP)基準の1人当たりのGDP」「スイス『IMD』が発表した国家競争力ランキング」のようです。
Money1を読んでいただいている方でしたら「うん?どこかで聞いたような……」と思われるでしょう。
そうなのです。これは、先に韓国の経団連といわれる『全国経済人連合会』が出したリポートから引っ張ってきたものです。
以下の記事でご紹介しましたが、『全国経済人連合会』は2021年08月12日に「過去30年間の『日韓の経済・競争力格差』の変化を比較」というリポートを出しました。
このリポートでは「経済指標の中には日本を追い越したものもあるし、30年で縮めてはいるもののまだ差はある。技術競争力は日本が優位である」としていました。
ところが韓国メディア『中央日報(日本語版)』ではこのリポートが曲解され、なぜか「ほとんどの経済指標で日本に追いついた」というタイトルの記事になりました。
リポートに挙がった、数少ない日本を追い越したという指標が以下のものでした。
②『IMD』国家競争力
③『S&P』国際信用格付け
つまり、ユン院内総務はこのリポートから引用して「解放後75年で日本超えた」と豪語したわけです。
先にご紹介したとおり、①で使われる「PPPベースのGDP」というのは、後進国の方が数字が大きくなり、三橋貴明先生が指摘していらっしゃるとおり国際間の比較に適したものではありません。
そもそものGDP(これこそ主要な経済指標です)が「韓国:1兆6,310億ドル」「日本:5兆490億ドル」と3.1倍も違うのにどこが日本を超えたのでしょうか。
②と③についても、それぞれの機関の判断であって、なにほどのものでしょうか(そもそも経済指標に含めるべきかも疑問です)。『S&P』の格付けで日本は韓国より低いレーティングになっていますが、だからといって金融市場における日本の信用が韓国より下になっているでしょうか? 答えはもちろん「NO」です。
つまり、ユン院内総務の「日本を超えた演説」は全く事実を見ていないものです。この演説は文政権を讃えるために無理から行ったものであり、いわばゴマすりの産物と指摘されても仕方ありません。
(吉田ハンチング@dcp)