初出記事で名目GDPをひと桁間違っていましたので修正いたしました。日韓の差「○倍か」は変わりません。
08月15日の終戦記念日が近付くと日本では戦争関連の報道が増えますが、韓国でも日本併合期が終わったことを祝す光復節として、日本に関する記事が増加します。
2021年08月12日、韓国メディア『中央日報』に「韓国全国経済人連合会『韓国、この30年でほとんどの経済指標で日本に追いついた』という記事が出ました。
⇒参照・引用元:『中央日報(日本語版)』「韓国全国経済人連合会『韓国、この30年でほとんどの経済指標で日本に追いついた』」/スクリーンショット
上掲のとおり日本語版『中央日報』にも、翻訳記事が出ていますので、すでに読んでいる方も多いかもしれません。
本当にあの※『全国経済人連合会』がそんなリポートを出しているのかと確認してみましたが、同連合会は「ほとんどの経済指標で日本に追いついた」なんて言っていません。
日本を追撃しているが差はまだある
以下が『全国経済人連合会』が自らの公式サイトで出したプレスリリースです。『Chrome』の自動翻訳で日本語にしていますので、リポートのタイトルを見てください。
韓国、ほとんどの経済指標で日本を追撃、しかし技術競争力は日本が優位
[韓国が日本を追い越し]国家競争力、PPPベース一人当たりGDP、製造業の競争力指標
[日韓格差の縮小]`20年日本の名目GDPは韓国の3.1倍、日本の輸出額は韓国の1.2倍、日本の海外直接投資(流出)は韓国の3.6倍
[日本が優位]】素材・部品の対日貿易赤字↑、源泉技術競争力の指標であるノーベル科学賞の格差↑
ご覧のとおり、『全国経済人連合会』のリポートは、「ほとんどの経済指標で日本に追いついた」なんてひと言も述べていません。
「ほとんどの経済指標で日本を追いかけている(追撃:差を縮めている)
と書いています。なぜこれが「追いついた」になるのでしょうか?
同連合会は、このリポートの公表について以下のように述べています。
(前略)
『全国経済人連合会』(以下、「全経連」)は、8.15光復節を控えて、日本の「失われた30年」が始まった1990年代初め以降、日韓間の経済・競争力格差の変化を比較して、韓国が過去30年間、日本との格差を減らした部分とまだ日本に比べて不十分な部分を分析した結果を発表した。
(後略)※引用元は同上
その上で、「国家競争力」「PPPベース一人当たりGDP」「製造業の競争力指標」は日本を追い越したが、「名目GDP」「輸出額」「海外直接投資」については縮小傾向にあるものの「まだ格差がある」と認めています。
また、素材や部品の対日赤字は上昇しているし、基礎技術においてはまだまだ太刀打ちはできないと正直に書いています。
例えば、名目GDPひとつ取っても、
1990年
韓国:2,830億ドル
日本:3兆1,970億ドル
(日韓差:11.3倍)2020年
韓国:1兆6,310億ドル
日本:5兆490億ドル
(日韓差:3.1倍)※データ引用元は同上
と提示しています。
『全国経済人連合会』は「ほとんどの経済指標で日本に追いついた」なんて書いていません。そもそも、そんな事実はないので『全国経済人連合会』がそのように書くわけがないのです。
このリポート内で、『全国経済人連合会』のキム・ボンマン国際協力室長は「大半の主要な経済指標で日韓の格差は減少し、いくつかの分野ではむしろ逆転した」と述べていますが、これがなぜ『中央日報』の報道で「ほとんどの経済指標で追いついた」になるのか、謎です。
上掲のとおり、日韓の名目GDPだけでもかつての「11倍」より格差は縮小しましたが現在でも「3倍」あるのです。これが追いついたことになるのでしょうか?
というわけで、『中央日報』の記事は『全国経済人連合会』のリポートの内容を曲げて伝えています。
このリポートが本当に言いたいことは、結びの部分にある、キム室長の以下の言葉だと思われます。
(前略)
「韓国経済が持続的な成長するためには、日本との格差が依然として大きい科学技術の競争力を育てなければならず、そのために政府の積極的かつ長期的なR&D支援が必要である」
(後略)
結局、こつこつ頑張るしかないよね、みたいな話なのです。
付記
韓国が「日本に追いついた!」としている「PPPベースの1人当たりGDP」ですが、その比較の無意味さについては明日に記事をアップいたします。
※時に韓国の経団連と呼ばれる『全国経済人連合会』は、韓国経済について極めて興味深いリポートを出してくれる有り難い存在です。もう何度だって言いますが、お気の毒なのはそのリポートが正鵠を射ているにもかかわらず、現在の左派・文在寅政権が一顧だにしないことです。『全国経済人連合会』の提言をもう少し柔軟に聞き、受け入れていれば、韓国経済は現在のような支離滅裂な状態にはならなかったかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)