先に市中からウォンを回収するために韓国銀行が発行する「通貨安定証券」についてご紹介しました。中央銀行にとってその機能が必要であることは理解できますし、韓国銀行の保有する資産が少ないため、債券を発行して(売りオペ用の)資産の代わりに充てるのもまあいいでしょう。
問題は、債券発行というのは借金の手段であって、大量に膨れあがってしまうと大変なことになるという点です。韓国銀行のバランスシートを見ると、2019年12月時点で通貨安定証券の発行残高が「164兆623億ウォン」もあるのです。
ざっくり1/10で円に換算しても約16.5兆円です。ちなみに韓国銀行のバランスシートの負債の部合計は474兆ウォン(同様にざっくり1/10で約47.4兆円)なので、なんと1/3超に当たる金額が通貨安定証券による借金なのです。
驚くべき金額ですが、これでも減った方で一時は「200兆ウォン」に達する勢いでした。
⇒データ出典・引用元:『KOSIS』「한국은행 주요계정 (말잔)」
http://kosis.kr/statHtml/statHtml.do?orgId=301&tblId=DT_054Y001
通貨安定証券の利率がどのくらいなのか詳細は不明ながら、ネット上でいわれることの多い「4%」と仮にしても、16.5兆円の4%ですと「6,600億円」にもなります。このような利払が続くことは韓国銀行にとって大変な事態です。
ですから、一時は世界で唯一の赤字の中央銀行(2004年から4年間続いた)などという珍奇な存在になってしまったわけですが。
また韓国の場合、この借金が「国の借金」として認識されていない点も問題です。一国の中央銀行は、政府から独立して存在しています。政府の発行する国債は国の借金とされますが、中央銀行の借金はこれに含められないというわけです。「ナニやってんの」と思われるかもしれませんが、本来なら通貨安定証券による借金も潔く国の借金に入れて対処を考えるべきなのです。
追記
韓国銀行は通貨安定債によってこのような状況ですが、韓国政府自身が「為替介入用資金」を入手するために発行してきた「外国為替平衡基金債券」(「外平債」と略されます)も毎年利息を「300億円」(約3,000億ウォンなのでざっくり1/10で換算)も支払わなければならない事態となっております。この外平債について以下の記事にまとめましたので、併せてお読み頂ければ幸いです。
(柏ケミカル@dcp)