韓国の隠れ借金といわれる、韓国銀行の「通貨安定証券」について触れましたので、今回は韓国政府の「外国為替平衡基金債券」(以下「外平債」と表記)についてご紹介します。
先にご紹介したように外平債はそもそも為替介入用の資金を調達するためにあり、ドル建て・ウォン建ての両方で発行されています。通貨安定証券と同様、これも借金ですので大量に発行すると利払いだけでも大変なことになります。
実際、この外平債も発行残高が積み上がっており、2020年には11兆1,000億ウォンに達する予定です。
2019年12月30日、『韓国経済新聞』が「国会で、2020年に上限15億ドル(約1兆7,400億ウォン)の外平債を発行することが承認された」として、その利払いを憂慮する記事を出しています。以下に一部を引用します。
政府の外平債の発行残高は約9兆4,000億ウォンである。 2015年末(約7兆ウォン)以来、4年間続けて増加した。来年計画どおりに15億ドルを調達すると、発行残高は11兆1,000億ウォン水準まで増える見込みだ。外平債の発行残高が10兆ウォンを超えることは、2006年(14兆7,000億ウォン)以来13年ぶり。
(中略)
政府は、通貨危機直後の1998年に40億ドル分の外平債を発行したことを皮切りに、これまで12回海外で外平債を発行している。このうち半分の6回(発行額の合計7兆7,800億ウォン)が、最近7年間集中的に行われた。2013年から今まで外平債の発行がなかった年は2016年だけである。
外平債の発行残高が急激に増え、利子負担への懸念が高まっている。一年間に支給する外平債利子だけで約3,000億ウォンに達する。来年外平債を追加発行すると350億ウォンの利子を新たに負担しなければならない。
(後略)
※原文は韓国語。意訳・強調文字は筆者(バカ)による⇒参照・引用元:『韓国経済新聞』「매년 이자만 3000억 달하는데…외평채 또 찍겠다는 정부」
https://www.hankyung.com/economy/article/2019123020101
後略の部分に「政府は、外国為替平衡基金ほとんどを米国債などの確定金利型安全資産に投資している」という非常に重要と思われる部分があるのですが、ここではひとまず置きます。
通貨安定証券の発行残高が「164兆623億ウォン」でしたから、ケタが一つ少ないですけれども発行残高が2020年に11兆1,000億ウォンに達するということは、ざっくり1/10で換算しても1兆1,000億円の借金です。
また、発行残高約9兆4,000億ウォンの段階で年の利払いが3,000億ウォン(同様にざっくり換算して「300億円」)ということは年利「3.19%」になります。
記事では2020年に約1兆7,400億ウォンの外平債が追加され、350億ウォンの利払いが追加されるとなっていますが、この場合「2.01%」の金利と計算していることになりますね。
外平債による借金がここまで膨らんでいるというにもナニですが、さらにドル建ての借金というのが問題です。
外平債をドル建てで発行できれば、ドルが入手できますので「ウォン安阻止」のための財源に使いやすいのは確かでしょう。
しかし、ウォン安の局面ではドル建ての借金を返済するのが大変になります。しかも、返済を楽にするため(ウォン高に誘導するため)に市場にドルを突っ込めば突っ込むほど、返済用のドルがなくなるという、ナニをやってるのか分からない状況になります。悲喜劇といいますか、日本人でなくても「ナニやってんの」と突っ込みたくなるような話ではないでしょうか。
(柏ケミカル@dcp)