まず、最も枚数の多い韓国債3年物の金利が上がっています。以下をご覧ください。
韓国の金融通貨委員会は、基準金利を「3.50%」に据え置き続けているのですが、ひたひたと3年物の金利は上昇しています。つまり韓国債が売られる傾向にあるわけですが、この影響は当然市中金利にも反映されています。
預金金利がまた上昇傾向です。特に貯蓄銀行が顕著で、それには金利上昇圧力だけではない理由があります。
貯蓄銀行がお金を集めている
貯蓄銀行中央会によれば、2023年08月04日時点で、79の貯蓄銀行の定期預金(満期12カ月)の平均金利は年利4.04%と集計されています。
07月初めには年利「3.97%」でしたから、再び4%台に突入しました。
最も利息が高いのは、『HB貯蓄銀行』などで「4.5%」を提示するようになっています。また、満期が1年未満、6カ月、9カ月といった商品ラインアップも拡充しており、例えば『JT貯蓄銀行』は6カ月満期の定期預金金利を最大1.75%引き上げ、「年利4.3%」の商品があるほどです。
なぜ、こんなに一所懸命金利を上げているのかというと、直近で貯蓄銀行の預金残高が減少傾向にあるからです。
そもそも貯蓄銀行は、市中銀行よりも金利が高いのがメリットです。その分、預金者を引き付けてお金を市中銀行より多く集め、それを市中銀行よりも高い金利で貸し付けます。
ところが、韓国政府が家計負債の増大を気にして「金利を上げることまかりならん」としたため、融資金利を上げられず、ということは預金金利も上げられません。
高い金利で貸し出すからこそ、高い預金金利を提供できるわけですから。
そもそも貯蓄銀行は、信用が低い人を対象とする商売なので、不良債権のリスクが高いのです。そのため、市中銀行よりも融資金利が高くないと商売が成り立ちません。
しかし、融資金利を上げるなと当局からの指導があります。
2022年下半期の満期支払いが来る!
融資金利を上げられないし、預金金利も上げられないとなると、資金が集められず八方塞がりです。
預金金利が上げられず、貯蓄銀行と市中銀行の預金金利が横並びになったら、預金者としては安定性の高いと思われる市中銀行にお金を預けるでしょう。これも貯蓄銀行を苦しめている要因です。
ですから、貯蓄銀行が預金金利を「それでも」上げるというのは、捨て身の策であり、「とにかく、まず資金を集めなきゃ」という意識の表れです。
実は、この「とにかく資金を集めなきゃ」という背景には、Money1でもご紹介した2022年下半期の「高金利で預金を集めた」ツケがあります。満期が2023年の下半期に到来するため、その満期支払いのためのお金がいるのです。
まるで銀行の自転車操業です。
貯蓄銀行は「どうすんのこれ」という隘路にはさまっています。ここで、貯蓄銀行の一角でも、預金者に対して満期支払いが滞るようなことが発生すると――取り付け騒ぎが起こる可能性があります。
韓国の「金利を巡るドタバタ」はまだ続きます。
(吉田ハンチング@dcp)