2020年、韓国造船企業が「カタールからLNG(液化天然ガス)運搬船を100隻受注!」というニュースがメディアを賑わせました。
しかし、これは「スロット契約」というもので正式に発注するかもしれないからドックを空けておいてね――というもので本決まりではありません。
あれからほぼ1年以上たち、そろそろ本発注が来るのではないか?と韓国メディアもそわそわしだしています。
ガス生産を超拡大するカタールは大船団を作る予定
そもそもこの発注は、カタールの国営エネルギー会社『カタール・ペトロリアム』(以下「QP」と略)からのもの。
カタールではノースフィールドガス田開発プロジェクトを行っており、2027年までにガスの生産量を現在の7,700万トンから1億2,600万トンまでに増やす予定です。この大量のガスを外国へ輸出するのに大規模な船団を編成しようというわけです。
LNG運搬船は74隻から190隻に増やすことを計画しています。
受注競争に参戦しているのは、毎度おなじみの韓国の造船3社『大宇造船海洋』『現代重工業』『サムスン重工業』です。
全数発注が来るとは限らない
国策会社である『QP』は韓国造船企業とスロット契約を締結し、韓国の造船業界は湧きました。
そりゃそうです。1隻ざっくり2億ドル(約228億円)として、100隻で200億ドル(約2兆2,794億円)にもなります。
この200億ドルは『大宇造船海洋』と『サムスン重工業』の2021年の受注目標金額よりも多いのです。取れたらそれこそジャックポットです。
しかし、実はスロット契約したからといって全数発注が来るとは限らないのです。
『QP』からの発注には以下のような過去があります。
韓国造船企業3社と90隻以上のスロット契約を締結
⇒実発注:53隻
このとき受注できたのは90隻のうち53隻で、本受注は「58.9%」でした。
ですので、丸々100隻受注できると期待するのは危険なのです。また、取れたからといって韓国の場合、廉価で受注していることから「結局、赤字でした」みたいなことになる可能性があります。
その証拠に本件を報じた『ChosunBiz』の記事に非常に気になることが書いてあるのです。以下に該当部分を引用します。
(前略)
造船業界は、カタールの大規模なLNG船の受注に基づいて長期好況を意味する「スーパーサイクル」を継続する展望だ。今年は、船舶建造コストの20%を占めるプレート(厚さ6㎜以上の厚い鉄板)価格の引き上げで赤字が避けられないが、昨年末から受注した船舶を来年以降に納品して初めて黒字転換が可能だろう。
(後略)⇒参照・引用元:『ChosunBiz』
先にご紹介したとおり、韓国の造船企業は廉価受注を行ってきたため、鋼板価格の上昇によって業績は大きな赤字に陥っています。
「今年は赤字が避けられない」ともう投げている点がすごいですし、「来年には黒字になるだろう」――なんて書いています。
この黒字は、なんの根拠があってのことなのでしょうか。鋼板価格が下がらなかったらどうするつもりなのでしょうか。100隻受注できても赤字なんてことにならないのでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)