韓国の前文在寅政権で起こった事件の裏面が暴かれようとしています。
被害者遺族は文在寅前大統領自身を告訴するつもりです。
「小延坪島海域公務員銃撃事件」と呼ばれるものです。
どんな事件だったのか?
2020年09月22日夜、海洋水産部の公務員であるイ・デジュンさんが失踪と判断されます。
失踪地点から38km離れた北朝鮮との境界線より以北、北朝鮮側海域で発見され、北朝軍の銃撃によって死亡。遺体は焼却されたという事件です(遺体は発見されず)。
このイ・デジュンさんは、海洋水産部の漁業管理団所属、全羅南道木浦市の公務員でした。仕事は北朝鮮に近い仁川の延坪島付近で漁業指導を行っていました。
事件発生時も漁業指導船に乗り組んていたのですが、突然いなくなったのです。
事件を時系列で追ってみると以下のようになります。
<<09月21日>>
01:30頃
イ・デジュンさんが同僚に「しばらくお願いします」と言って操舵室を出る。
11:30頃
イ・デジュンさんがいないことに気付いたスタッフが船内および海上を捜索。船内ではスリッパひと組だけが発見される。
12:51
海洋警察が行方不明の報告を受ける。
13:50
韓国海軍艦艇、船舶20隻、海洋警察航空機2機など投入して捜索。
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<<09月22日>>
15:30頃
北朝鮮の水産管理船が行方不明者を発見。
18:36
韓国国防部が、大統領府に「行方不明者を海上で発見した」という情報が入った書面報告を行う。
21:40頃
銃撃音を確認。
(北朝鮮軍警備艇が上部の指示で行方不明者に銃撃を加えて殺害)
22:11頃
延坪島監視基地から遠くで何かが燃えるような光を40分間確認。
(イ・デジュンさんの遺体を焼却)
23~24時頃
国防部長官が大統領危機管理センターに事件の経緯を報告。
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<<09月24日>>
韓国の国防部、アン・ヨンホ統合参作戦本部長(当時)が「私たちの国民に対して銃撃を加え、遺体を燃やす蛮行を犯したことを確認しました」と公表。
海洋警察は初回の捜査結果を公表して「イ・デジュンさんが自主的に越北した可能性を否定できない」とする。
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09月25日
大統領府が「北朝鮮から送られた通知文によると『銃撃はあったが、遺体は燃やさず、漂流物を燃やした』となっている」と公表。
国防部は「正確な事実確認が必要だ」と態度を変える※。
※国防部関係者が「当時、北朝鮮通知文を受けた大統領府安保室が国防部の上級関係者に『情報が不正確なのに蛮行という表現はいきすぎではないのか』と叱責した」と証言しています(『TV朝鮮』の報道:以下URL)。
長くなるので、とりあえず事件発生から25日までを時系列で並べてみましたが、ここまでで後に起こることの種は全部出ています。
親北の文在寅政権が「事件を大事にしないように動いた」という点が問題なのです。
状況からして、イ・デジュンさんは何かのアクシデントで海に転落。漂流物にしがみついて助けを待っていたのですが、それを北朝鮮の船が発見。軍が発砲して亡くなった――というのが事実ではないでしょうか。
北朝鮮が介入するややこしい海域でなければよくある海難事故で済み、イさんも助かったはずです。北朝鮮が発見したときにはまだ生きていたことが分かっていますので。
それを、大統領府が介入して「イ・デジュンさんが自ら進んで越北したのだ」というシナリオの線でまとめようとしたので話がややこしくなったと思われます。
ご注目いだたきたいのは、25日の時点で海洋警察の方はすっかり「大統領府のいいなり」で「イさんが自ら越北した」という線で落着させようとしている点です。
尹政権が誕生して海警は謝罪に追い込まれる
韓国政府(文在寅)は結局「イさんは自ら越北しようとして難に遭った」という結論で押し通しました(海洋警察が2020年09月29日に公表)。
しかし、納得できないのは遺族です。そんなはずはないと反発。青瓦台国家安保室、海警庁、国防部を相手に情報公開請求訴訟を起こします。
で……一審で敗訴した海洋警察は控訴していました。しかし文在寅大統領は退任。併せて文政権下の記録は保管庫に送られてしまいました(15年間は公開されません/ものによっては30年間)。
尹政権が誕生して控訴は引っ込められます。これは、尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが該当資料の公開を公約に掲げていたことに基づいた措置です。
その結果、2022年06月16日、海洋警察と国防部は「イさんが当時、北に渡ったと断定する根拠を発見できなかった」と記者会見を開く羽目になりました。
事実上の謝罪会見です。
尹錫悦(ユン・ソギョル)さんは公約を守ったのですが、「越北をしようとしたとされたイさん」の兄、イ・レジンさん)は、
「文前大統領と当時の国防部長官らを殺人ほう助と職務放棄の疑いで告訴することを検討中」
としています。実際に告訴するかどうかは分かりませんが、検察は……いうまでもありませんね(笑)。
そもそも「越北者だから仕方ない」はおかしくないのか
この事件については数々の疑問が提起されています。
まず、文政権が北朝鮮をかばうために「イさんを越北者とした」点です。
イさんが仮に越北者だったとしても「北朝鮮が銃撃して殺害したこと」を正当化できるでしょうか? 文在寅は南朝鮮の大統領であって、国民の生命を守ることが第一の任務のはずです。
越北者だから仕方ないといわんばかりの政府の態度は間違っています。
国防部の最初の声明「私たちの国民に対して銃撃を加え、遺体を燃やす蛮行を犯した」こそが、大統領府が発すべき言葉ではなかったでしょうか。
次に北朝鮮が大統領府あてによこしたという「通知文」です。
韓国政府が内容を公表し「金正恩総書記から謝罪の言葉があった」と大喜びでした。
本当にそんな通知文があったのでしょうか。というのは、この通知文書なるものが、後でこっそり文面が修正されていたことが確認されています。文書の真偽、またなぜ文面を修正したのかが解明されなければなりません。
さらに大統領府の介入の過程、内容が検証されなければなりません。北朝鮮が発見したときイさんが生きていたことは確実ですので、銃撃されるまでの間、「韓国政府は何をしていたんだ」という話になるからです。
上掲のとおり、韓国の国防部は「22日18:36」の時点で、「失踪者が発見された」という報告を上げています。つまり北で発見されたのはその時点で判明していました。
それから銃撃音が聞こえる「21:40頃」までの約3時間、政府が何もしなかったのだとすれば「遺族が殺人幇助で当時の関係者を告訴する」というのも理解できます。
『共に民主党』の愚かな反論
ここにきて急転換の当該事件なのですが、野党に転落した『共に民主党』の禹相虎(ウ・サンホ)緊急対策委員は2022年06月17日、本件についての記者会見を行い、「民間経済対策が大変な状況で、なぜ今この事件について掘り返すのか」という旨の発言をしています。
先にご紹介したとおり、この禹相虎(ウ・サンホ)緊急対策委員は文前政権への捜査を「政治報復」と規定する人物です。
政治報復ではなく、真相の究明です。イさんに越北の意思がなかったのなら、「事故」と考えるよりほかありません。北朝鮮海域に間違って行ってしまい、そのため不幸なことになったことになります。
当時の政府の対応が問題になっても至極当然です。
しかも、文在寅という人は、死亡したイさんの息子に調査を行うという手紙まで出しており、その上で何もしなかったのです。
――というわけで、本件でも文在寅前大統領、および政権関係者に対する捜査が行われるものと思われます。
(吉田ハンチング@dcp)