2022年08月04日、韓国政府、大統領室の崔相穆(チェ・サンモク)大統領室経済首席秘書官が「経常収支は黒字が予想され、財政収支と経常収支が両方とも赤字になる可能性はない」という考えを示しました。
これは07月の貿易収支が「46億6,900万ドル」の赤字で締まり(暫定版)、これによって4カ月連続の赤字に陥り、メディアで悲観的な報道が出ているのを牽制したものと見られます。
Money1では以下の記事でご紹介しましたが、崔経済首席秘書の言葉は正しいです。
何度もご紹介していますが、4カ月連続の赤字はあくまでも通関ベースの赤字です。一方の経常収支の方は国際収支統計での話です。
通関ベースで貿易収支が赤字でも国際収支統計の方で赤字になるとは限りません。上掲の記事でも書きましたとおり、「-46億6,900万ドル」ですので国際収支統計の貿易収支は恐らく薄いながらも黒字になるはずです。
国際収支統計のデータは締まるのが遅いので、確認できるのは09月に入ってからですが、貿易収支が黒字になるので恐らくは経常収支の方も赤字にはなりません。
ただし、黒字になったとしても昨年、2021年より大幅に薄い黒字になると推測できます。
また、この先も黒字で回るかどうかは分かりません。さらに、だからといって「経済危機にならない」とは限らないのです。これが面白いところなのです。
2008年の韓国通貨危機時の貿易収支・経常収支を見てみよう!
論より証拠、以下をご覧ください。『韓国銀行』が公表している年次の国際収支統計のデータから切り出したものです。
2008年は韓国通貨危機でドボン騒動が起こった年ですが、「黄色でフォーカスされている貿易収支」と「緑色でフォーカスされている経常収支」にご注目ください。
両方ともマイナスではありません。
しかしながら、貿易収支はわずか「117億4,610万ドル」しかなく、2007年の「324億3,610万ドル」と比較してほぼ1/3となっています。
経常収支に至ってはたったの「2008年:17億5,300万ドル」で、2007年:104億7,250万ドル」(これも十分に少ない:2006年のほぼ半分)と比較して、83.3%も減少しています。
ここからも分かるとおり、黒字だからって経済危機、ドボン騒動が起こらないわけではないのです(ただし年次)。このときはアメリカ合衆国、日本と締結した「通貨スワップ」でやっと助かったのですから。
もう何度だっていいますが、韓国が危なくなるのは、貿易収支が減少・赤転し、これが経常収支の減少・赤転を引き起こすのが、まず第1の兆しです。そうして資金流入が細くなり、その分をファイナンスするべく外貨建て債務が膨らむこと。これが第2の兆しです。
そして債務の返済に困る状況となって……ドボン騒動を起こすのです。
現在、すでに第1の兆しは現れています。また第2の兆しについては、これまた先にご紹介したとおり、政府と中央銀行がやたらに債券によって負債を増やし、顕在化しています。
ですので、韓国経済ははっきり危なくなってきています。むしろ、当局は危ないと分かっているからこそ、このように火消しに努めているのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)