今年も08月15日になりました。日本にとっては終戦記念日ですが、韓国では「光復節」と呼ばれ、日本帝国による占領から解放され、主権を回復した日とされています。
この日は韓国にとって重要な日なので、時の大統領が必ず一席ぶつことになっています。日本の敗戦日が祝祭日ですので、当然ながら日本についての話がメインになります。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領も本日、77周年光復節祝祭会において演説を行いました。
一部日本メディアでは、支持率が下がっているのでいよいよ反日的な発言が出るのではないか――といった推測がありましたが残念でした。ハズレです。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の発言から幾つかを拾ってみます。
「独立運動は、1945年のまさに今日、光復の結実を成し遂げた」
「しかし、独立運動はそこで終わったわけではない。
その後、共産勢力に対抗して自由国家を建国する過程、自由民主主義の土台である経済成長と産業化を遂げる過程、そしてこれを基に民主主義を発展させてきた過程を通じて続いてきており、現在も進行中のことである。
過去には弱小国が強大国によって抑圧され、奪われた国民の自由を取り戻すために主権国家を建てることが時代的使命だった。
今後の時代的使命は、普遍的価値を共有した国家が連帯して自由と人権に対する脅威に共に対抗し、世界市民の自由と平和、そして繁栄を成し遂げるのだ。
自由を求めるために始まった独立運動は、真の自由の基礎となる経済的土台と制度的民主主義の構築につながり、今は普遍的価値に基づいて世界市民の自由を守り拡大することで、受け継がれ発展しなければならない。
過去から未来を貫く独立運動の世界史的意味を再び刻み込まなければならない。
歴史の時期ごとに私たちの独立運動は、その性格と時代的使命を異にして進行されてきたダイナミックな過程であった。
自由を探し、自由を守り自由を拡大し、また世界市民と連帯して自由に対する新たな脅威と戦い、世界平和と繁栄を遂げていくことである。
光復後、北朝鮮共産侵略に対抗して自由民主主義を守るための闘争、以後産業化と民主主義定着のための闘争過程で犠牲と献身した人も「偉大な独立運動家」だ。
過去、私たちの自由を取り戻し、その政治的支配から抜け出さなければならない対象だった日本は、今や世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かって一緒に力を合わせていかなければならない隣人である。
日韓関係が普遍的価値を基盤に両国の未来と時代的使命に向かって進む時、過去史問題もきちんと解決できる。
日韓関係の包括的未来像を提示した金大中-小渕共同宣言を継承し、日韓関係を素早く回復し発展させる。
両国政府と国民が互いに尊重し、経済、安保、社会、文化にわたる幅広い協力を通じて国際社会の平和と繁栄に共に貢献しなければならない。
(後略)
なかなか感動的なスピーチですし、自由を連呼して左派勢力を「ぐぬぬ……」とさせるいい内容です。尹錫悦(ユン・ソギョル)さんにはけっこう優秀なスピーチライターが付いていると思われます。
日本については「自由を脅かす敵に対して共に力を合わせるべき隣人」としました。決して友人や友邦としていないところがミソです。
「敵の敵は味方」理論からすれば、普段は仲悪くても協力し合う隣人にはなれるでしょう。
共に進むことができれば、歴史問題も解決できると述べました。楽観的ではありますが、悲観主義者に明るい未来は造れません。これぐらいの表現で視線を遠くに向けさせるのは韜晦のよい手です。
金大中-小渕宣言を踏襲して、日韓関係を素早く回復させる――と自信を見せた点にも注目です。
恐らく自分の見通しが甘かった点は重々承知しているはずですが、大統領としては「ダメでしょう」などと口が裂けても言えません。よく我慢して前向きなスピーチにまとめたのではないでしょうか。
もちろん、実際に日韓関係が好転するかどうかは別問題です。希望を語れないTopに誰がついていくでしょうか。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領がこのように相当頑張った演説を行ったというのに、民主労総が組合員6,000人規模を動員した「反米集会」を開催したりしています。
「米韓同盟を解体せよ」「労働組合の力で米韓同盟を終わらせよう」といったスローガンを掲げました。
韓国は、日本人が考えも及ばないほどダイナミックな国です。
(吉田ハンチング@dcp)