G7を非難することに躍起になっている中国ですが、一方で自由主義陣営国と完全に手切れすることを恐れています。
脱中国やカップリングではなく、中国を敬遠することを「デリスク(de-risk)」(脱リスク/リスク排除)と呼ぶようになってきたことに警戒感を顕にしています。
台湾を排除するためにも、また自由主義陣営国の思惑を遮断するためにも、中国はCPTPPにご執心です。2023年05月23日、中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』が「中国のCPTPPへのアクセスはデリスクの罠に直面すべきではない」という記事を出しました。
あくまでも「中国をCPTPPに入れろ」という主張です。
記事から一部を以下に引用してみます。まず冒頭部分。
オーストラリアでは、中国とオーストラリアの経済・貿易関係が雪解けと正しい軌道への復帰という重要な時期に直面している。
今、中国の環太平洋パートナーシップ包括的進歩協定(CPTPP)への加盟を重要な交渉材料と見ている人もいるようだが、彼らが見逃してはならないのは、中国のパートナーシップへの加盟が貿易・投資条約の今後の発展に大きな意味を持ちうるという大きな視点である。
(後略)⇒参照・引用元:『Global Times』「GT Voice: China’s accession to CPTPP shouldn’t face ‘de-risk’ trap」
冒頭からこれです。オーストラリアと中国の貿易が雪解け、なんて書いていますが、そもそも中国側が不当にオーストラリアの輸出品目を不当に締め出したことです。
その理由というのも、オーストラリアが「武漢での感染拡大について透明性」を求め、中国のメンツを傷つけたという世にもあほらしいものでした。こんなことを行う国が「中国は国際法を守る」などと言っているのです。
「中国のCPTPPへの加盟を認めてほしければ、オーストラリアとの貿易を正常化すべき」と、交渉材料にする向きに対して、「そんなことより中国が加盟することによってCPTPPが大きな利益を得ることに目を向けろ」と述べています。
Money1でも先にご紹介したとおり、オーストラリアが中国加盟を支持する可能性は低いのです。中国が行ってきたオーストラリアへの仕打ちを考えれば当然のことでしょう。
以下の部分はもっと呆れる主張です。
(前略)
現在、CPTPP加盟国のほとんどが中国と二国間自由貿易協定を締結しており、そのうち8カ国は中国を最大の貿易相手国としている。これは、中国が参加するための強力な根拠となっている。
中国の参加により、CPTPPは世界のGDPに占めるシェアを30%に高め、巨大な市場空間を提供することになり、地域協力のメリットだけでなく、CPTPPの世界的影響力も拡大することになる。
さらに重要なのは、中国が積極的に加盟を申請しているのは、さらなる市場開放への意欲の表れであるということだ。
中国がCPTPPの要件を満たせるかどうかを疑問視する人もいるかもしれないが、さらなる開放を実現するために、CPTPPの基準を満たす中国の能力と決意は過小評価されるべきではない。
中国商務省によると、中国はすでに一部の試験的な自由貿易区や自由貿易港でCPTPPの規則、基準、義務に従った実験を実施しており、条件が整えばより大規模に推進する予定である。
オーストラリアについては、中国とオーストラリア間の現在の貿易問題が、中国の加盟の障害になることはないだろうし、なるべきでもない。
なぜなら、中国はCPTPPに加盟すると同時に、同協定に基づくルールや基準を完全に実施し、両国間の貿易摩擦を一定程度緩和することになるからだ。
その意味で、オーストラリアは欧米の「脱リスク」に惑わされることなく、アジア太平洋経済の統合に向け、より良い展望を持つことが期待される。
(後略)⇒参照・引用元:『Global Times』「GT Voice: China’s accession to CPTPP shouldn’t face ‘de-risk’ trap」
「CPTPPの基準を満たす中国の能力と決意は過小評価されるべきではない」というのは、中国のいつものやり口です。『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)も『WTO』(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)もこの前口上に騙されました。
中国は資本移動の自由化も守っていませんし、『WTO』に加入するときに約束したことを反故にして恥じない国です。
中国を自由主義陣営国の国際的な取り決めに入れてやる必要はありません。
「中国が入れば市場が世界の30%を占めることになる」などといっていますが、ご案内のとおり中国市場は中国共産党が法の上に君臨する場所です。上記のとおり、メンツを潰されたから輸入を止めるなどを平気で行います。
あっても無駄ですし、民間企業はそんな市場をアテにすべきではありません。
日本でもいまだに「中国には大きな市場がある」などと言う人がいますが、自国の企業人が何人さらわれたらその愚に気付くのでしょうか。
「中国はCPTPPに加盟すると同時に、同協定に基づくルールや基準を完全に実施し……」も、いつか聞いた話です。実施したことがないからこんな現状になっています。
さすがにオーストラリアもこのような説明にだまされることはないでしょうが、中国が執拗にCPTPP入りを狙っていることに隙を見せてはなりません。
アジア太平洋経済の統合に向けては、デリスクこそ大事で、中国を排除することが最重要課題です。
(吉田ハンチング@dcp)