『韓・日・中3カ国国協力事務局』という機関があります。英語名は「Trilateral Cooperation Secretariat」で略称は「TCS」。
日本ではあまりメジャーではありませんが、2009年、李明博(イ・ミョンバク)政権下で事務局の設置が提案され、2010年に日中韓の3カ国が協定に署名。2011年に韓国のソウルで事務所が活動を開始しました。
米中の対立が激化し、韓国が前文在寅政権時に中国に肩入れして日本を貶めましたので、この3カ国での連携や会議は滞ったままです。
しかし、韓国としては中国から制裁を食ったりするのは困るので、日本を巻き込んで「3カ国の連携」などと言い出しています。
Money1でもご紹介したとおり、G7広島サミットが終わった直後に、韓国国家安保室の金泰孝(キム・テヒョ)第1次長が、勝手に「中韓、日中の二国間戦略対話を推し進める」などと話したほどです(以下の先記事を参照)。
中韓でのことは日本の知ったことでありませんが、なぜ韓国が勝手に日中の戦略対話を推進しているのかさっぱり分かりません。
で、上掲の『TCS』のペク・ボムフム事務次長が『中央日報』に似たような話を寄稿しているのです。
主張は「日中韓の首脳会議を即座に開くべし」というのです。なぜそれが可能と思えるのか分かりませんが、開くべき理由を説明していますので、以下に引用します。
(前略)
3カ国首脳会議はなぜ再開されるべきか。まず、3カ国首脳会議は、コロナ19などによる人的交流の縮小がもたらした副作用を克服するのに役立つだろう。
国際ビジネスに直結する人的交流の制約要因を解消し、相手国に対する悪化した国民感情を緩和するのに大きな助けになるだろう。
第2に、3国首脳会議は、デカップリング(サプライチェーンの分離)とデスリスク(リスク緩和)が話題になっている状況で、バリューチェーンとサプライチェーンを維持し、3国経済が活力を取り戻すのに役立つだろう。
3カ国経済は、新型コロナウイルス感染症、米中戦略競争、少子化による労働力と購買力の減少などで活力が大幅に低下している。
韓国は経済成長率の低下とともに15カ月連続で貿易赤字を記録している。
第3に、3カ国首脳会議は地域の安全保障と環境および気候変動などの問題を議論する良い機会となる。
北朝鮮の核とミサイルなど朝鮮半島の安全保障とエネルギー需給など、3国の指導者が知恵を結集すべき課題が多い。
第4に、日中韓サミットを通じた3カ国協力の強化は、東アジア・西太平洋地域の平和と安定を促進する役割を果たすだろう。
(後略)⇒参照・引用元:『中央日報』「한·일·중 정상회의 조속히 열려야」
G7広島サミットで、少なくとも自由主義陣営国は「脱リスク」(脱中国を言い換えただけです)で合意し、新たに(中国抜きで)サプライチェーンを組み替えようという基本方針となりました。
にもかかわらず、日中韓で首脳会議を行えば「バリューチェーンとサプライチェーンを維持し、3国経済が活力を取り戻すのに役立つ」などと言っているのです。
この駄目な思惑に日本を巻き込むのをやめていただけないでしょうか。
揚げ句に「韓国は経済成長率の低下とともに15カ月連続で貿易赤字を記録している」と付け足しています。日本からすれば、まさに「知らんがな」です。それは「韓国の都合」であって、日本の知ったことではありません。
中国の知ったことでもないでしょう。中国からすれば「うちの技術力が追いついただけ。30年たってうちがもうけるターンになったのだ」です。
「3カ国協力の強化は、東アジア・西太平洋地域の平和と安定を促進する役割を果たすだろう」に至っては、どれだけ頭がお花畑なのか――という話です。中国の覇権主義、遅れてきた(武力を使う)帝国主義こそが紛争の原因であって、日中韓の首脳会議で解決などするでしょうか。
中国共産党が態度を改めない限り、解決しません。
いずれにせよ、これは中国共産党の本質を見ていない、ためにする提案です。韓国に足りないのは、自由主義陣営の側に立つという断固とした覚悟です。それがないうちは、合衆国も日本も韓国を認めるべきではないのです。
(吉田ハンチング@dcp)