04月10日投開票の「第22代国会議員総選挙」で政権与党が勝つために、韓国政府機関は、とにかく明るい話をしないといけません。
韓国の産業通商資源部は、（尹政権としては）三代目長官の下、目を引くようにプレスリリースを出していますが、上滑りしています。
例えば2024年01月31日、産業通商資源部は「2024年業務計画」を公表しました。
民生経済の活力回復を導く
– 輸出7,000億ドル、外国人投資誘致350億ドル達成
– 先端産業を中心に民間投資150兆ウォン実現支援
– 無炭素エネルギーへのエネルギーシステム大転換およびグローバル普及の元年を迎える⇒参照・引用元：『韓国 産業通商資源部』公式サイト「(참고자료)역대 최대 수출･투자 목표 달성으로 민생경제 활력 회복 이끈다」
毎度のことながら、これは産業通商資源部によるお題目みたいなもので、摘要の部分だけ見れば、だいたいお腹いっぱいです。
輸出金額より「ナンボ儲けたか」が大事です！
安徳根（アン・ドクグン）長官は、「今年（2024年）は、地政学的不安要素があり、挑戦的な目標だが、経済突破口の柱として残ったものの一つが輸出だ。全世界で輸出5～6位の輸出強国になるように総力を尽くす」と述べました。
産業通商資源部の長官として「できること」が限られているので仕方ありませんが、「やっぱり輸出なんだ」という結論が限界を示しています。
また「7,000億ドル」という輸出金額の目標はさして野心的なものではありません。
というのは、通関ベースの輸出額は、2022年に「6,836億ドル」を達成しています。あと164億ドルでした。ということは、12カ月で割って「1カ月に約13.7億ドルずつ」積めば達成できます。
そもそも輸出額が7,000億ドルを達成したからといって、韓国経済が回復するとも言い切れません。
なぜなら、韓国にとって重要なのは、輸出入でいくら儲かったかであって、輸出金額が増加したかどうかではないからです。
韓国は貿易収支（輸出 – 輸入）が十分に大きくないと、外貨をためることができず国が傾く構造になっています。ですから、「輸出金額が増加したー！」を喜ぶのではなく、「貿易収支が増加したー！」を喜ばないといけません。
実際、（通関ベースの）輸出金額が7,000億ドルに肉薄した2022年には、貿易収支（同通関ベース）はいくらだったかというと……。
2022年
輸出：6,837億5,000万ドル
輸入：7,312億1,700万ドル
貿易収支（輸出 – 輸入）：-474億6,700万ドル
と、2008年依頼の、14年ぶりの赤字になったのです。
もちろん韓国経済は傾いて不景気となり、その余波が現在も続いているのです。
ですから、たとえ（通関ベースで）輸出金額7,000億ドルが達成されても、「やったー、万歳！」になるとは限りません。
輸出金額ではなく「ナンボ儲けるつもりなんですか？」が大事なのです。
「直接投資350億ドル達成」こそ夢
さらに安徳根（アン・ドックン）長官が「直接投資」に言及していますので、これについても見ておきましょう。
驚くべきことに、外国からの直接投資「350億ドル」を達成する、と述べています。これが申告ベースの話なら可能かもしれません（2023年の申告ベースの直接投資は327億2,000万ドルだった）が、実際ナンボ入ってきたの？という数字の話なら、不可能です。
直接投資350億ドルは夢のまた夢な金額だからです。
以下をご覧ください。外国からの直接投資の金額は、国際収支統計の金融収支 – 直接投資の負債の部に表れます。
↑黄色でフォーカスしたのが「外国からの直接投資」金融収支-直接投資の負債の部合計。2010年：95.0億ドル
2011年：97.7億ドル
2012年：95.0億ドル
2013年：127.7億ドル
2014年：92.7億ドル
2015年：41.0億ドル
2016年：121.0億ドル
2017年：179.1億ドル
2018年：121.8億ドル
2019年：96.3億ドル
2020年：87.6億ドル
2021年：220.6億ドル
2022年：180.0億ドル
2023年：151.8億ドル⇒データ出典：『韓国銀行』公式サイト「ECOS」
2010～2023年の年次の国際収支統計を見ても、200億ドルを超えたのは、コロナ禍が明けるだろうと目された2021年の「220.6億ドル」のただ1回だけです。
このような推移なのに、「350億ドル」、つまり2021年の「約1.59倍」の直接投資を呼び込むというのです。
とうやって？――です。
これから人口が急減していく韓国にいかなる魅力があって、直接投資が約1.59倍になるのでしょうか。
無理でしょう。
（吉田ハンチング＠ｄｃｐ）
