「お金がないのは首もないのと同じ」は西原理恵子先生の名言ですが、「貧すれば鈍す」とも申します。
お金がないと何もできないのは企業も同じ。キャシュフローが何よりも大事です。また、投資ができなくなると、未来の食い扶持がなくなる可能性がありますから、投資分のお金は確保しておかないといけません。
韓国の半導体最大手『サムスン電子』が5兆ウォン規模の投資資金を調達するために、国策銀行『産業銀行』と融資交渉を行っている――という報道が出ました。
これが本当なら、かなりの驚きです。『サムスン電子』は金融機関からお金を借りない・社債を発行しない企業として知られているからです。韓国メディア『韓国経済』の記事から一部を以下に引きます。
(前略)
企画財政部と金融当局、業界などによると、『サムスン電子』は半導体投資に使う資金を調達するため、最近、『産業銀行』と融資規模、金利などを巡って実務者交渉を行っている。『サムスン電子』は『産業銀行』に大規模融資の可能性を打診し、『産業銀行』は政府の半導体支援方針に基づいて最大5兆ウォン程度を供給する案を提示したという。
金利は同日、企画財政部など関係省庁が共同で発表した半導体生態系総合支援案に盛り込まれた通り、年3.5%前後で決定される見通しだ。(後略)
これが本当なら驚きです。『サムスン電子』は半導体への投資資金をグループ企業からお金を借りるぐらいなのです。Money1でもお紹介しましたが、2023年02月には『サムスンディスプレー』から20兆ウォンを借りる(年利4.6%)――という公示を出しました。
グループから借りるといっても、上掲の場合には『サムスンディスプレー』が内部留保で保有していた「20兆ウォン」をすっかり寄こせ――という無茶なものでした。
同記事によると、このような大規模な資金調達は「2001年に5,000億ウォン規模の社債を発行して以来初めて」とのこと。
また、同記事は急きょ政府系の資金に頼ることにした理由については「サムスン電子が外部借入に踏み切ったのは、工場建設と研究開発(R&D)に投入する現金が急速に枯渇しているからだ」と書いています。
グループ企業からお金を借りる(しかも『サムソンディスプレー』の株式を85%保有している)のは身内でお金を回しているようなものですが、「4.6%」と比較したら、『産業銀行』が用意する融資金の「年利:3.5%」は確かに安いです。
「借りようかな」となってもおかしくはありません。しかし、他所様からお金を借りるのが嫌ってきた『サムスン電子』が融資を受けるというのは、投入できる現金が手元不如意になっているため、と考えられます。
証拠があるのです。以下は2024年03月12日に公示された事業報告書から切り出したものです。
営業キャシュフローは、その名のとおり、企業の本業活動から創出されるキャッシュフローを指します。純利益、減価償却費などの非資金費用、運転資本の増減が重要な項目となります。
ご覧いただけば分かるとおり、2023年は「71.7兆ウォン」あったのに、2023年は「46.5兆ウォン」まで激減しています。35.1%も減少しまた。
つまり、キャッシュを生み出す力が急速に弱まったことを意味しています。
これが「投入できる資金の減少」という状況を現出せしめ、「『産業銀行』から借りないとしゃーない」となったのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)