中国の鉄鋼業は採算が取れなくなっています。スグに自国市場をレッドオーシャンにして、その過剰生産性を外国に輸出する――というのが原因です。
また、不動産市場の墜落で需要が激減していることが大きな影響を与えています。
韓国などもその影響を多分に受けていますが、日本もそうです。中国企業がイナゴのように外国に向かい、外国市場を食い荒らすのを止めなければなりません。
世界的に中国の過剰生産性が問題になっているのは、故なきことではないのです。
そのような昨今ですが、注視されている中国の鉄鋼業について、中国の工業情報化部が非常に興味深い通知を出しました。
工業情報化部事務局からの通知:鋼鉄産能置換業務の停止について
通知番号:工信庁原函〔2024〕327号各省、自治区、直轄市、新疆生産建設兵団工業情報化主管部門へ:
「鋼鉄業界産能置換実施方法」(工信部原〔2021〕46号)の実施以来、鋼鉄業界は産能置換を通じて、業界の改造・アップグレード、構造調整、配置の最適化、そして合併再編を力強く促進してきた。
しかし、政策の実施が不十分であったり、監督と実施の仕組みが不完全であったり、業界の発展状況やニーズに適合していないなどの問題が依然として存在する。
現在、鋼鉄業界は新たな供給と需要の関係に直面しており、グリーン・低炭素、構造調整、配置の最適化、合併再編などが、産能置換政策に対して新たな要求をもたらしている。
これを受けて、鋼鉄業界の供給側の構造改革をさらに深化させ、産能置換政策を改善するために、当部門は鋼鉄産能置換方法を修正することにした。
以下の事項を通知する。
一、鋼鉄産能置換の実施を一時停止
2024年08月23日以降、各地域において新たな鋼鉄産能置換計画の公示・公告を停止する。本通知の要求に従わず、引き続き鋼鉄産能置換計画を公示・公告する場合は、違法な鋼鉄産能の新設とみなし、反面教師として通報される。
二、鋼鉄産能置換方法の修正
当部門は関係各所と連携し、鋼鉄産能置換方法の修正に向けた研究を加速し、産能置換政策の措置をさらに健全かつ完全なものにする。広く各関係者の意見と提案を募集し、それを反映した上で発行・実施する。以上、通知する。
文書内に出てくる「産能置換」というのは、古い設備を廃棄して新しい設備を導入することで、全体の生産能力を調整する政策です。
中国の一部の製鉄業では「古い生産設備」や「高エネルギー消費」のため、コストが高くなっています。これをは改善するためのものです。しかし、改善を推進することは「中国の過剰生産性を推進すること」に他なりません。
「産能置換」の公示・公告をやめる――というのは、世界的に中国の過剰生産性が問題になっている今、当局が状況を隠蔽しようとしているのではないでしょうか。
また、中国の鉄鋼業に対する「生産を拡大するな」という急ブレーキであることはいうまでもありません。
(吉田ハンチング@dcp)