2020年03月02日『中央日報(日本語版)』、02月28日に韓国・中小企業銀行が、邦銀2行『三菱UFJ銀行』『みずほ銀行』と総額600億円規模の「コミットメントライン契約」を結んだ、という記事が出ました。この契約は、もともと結んでいた契約の限度額を各行200億円から300億円に増額したものとのこと。
⇒参照・引用元:『中央日報』「韓国中小企業銀行、日系銀行とウォン・円優先供給増額…『内外の不確実性に対応』」
https://s.japanese.joins.com/JArticle/263172?servcode=300§code=340
記事は、これで新型コロナウイルスによる経済の先行き不安にも対応できる、みたいなポジティブな話になっています。
しかし「コミットメントライン契約」というのは、「一定の期間内・金額内であれば、銀行が『融資を実行することを約束(コミット)します』」というもので、そのコミットメントの分だけ「手数料」がかかるのです。
ですから「600億円に増えたー!」ではなく、「『手数料が余計にかかる借金』の限度額が増えたー!」なのです。さらに邪推すれば、普通の契約では受けてくれないから手数料も取られる契約になったと見ることだってできます。
もう一つは、このウォン安が進行しているときに円建て(韓国から見れば外貨建て)の借金を増やす話です。ウォン安がさらに進行していたら返済額は実質膨らむことになる(円を調達するのがウォン安ぶん大変になる)のですが、大丈夫なのでしょうか。
また、これは単に各中小企業に貸し付けるために中小企業銀行が取りまとめているものではないでしょうか。実際に邦銀2行が要請を受けた場合には、「どこへ貸し付けるの?」「その会社の資本金はいくらなの?」などの条件で融資が実行されないケースだって、契約内容次第であり得ます。つまり、「この期間で、融資限度は300億円だけれども、この条件を満たす貸し先にしか融資しない」といった契約の場合です。
というのは、コミットメントライン契約は、「融資を実行すると約束する」ものなので、銀行は取りっぱぐれそうなところとは基本的に契約しないのです。普通は「会社法上の大会社」「資本金3億円超の株式会社」などの条件をクリアしないと銀行も契約しません。
ですので、今回の件でも邦銀2行は、韓国中小企業銀行が手放しで喜べるような契約を交わしてはいないはずです。なんだか美談というか、よくやったみたいな報道ですが、そんなにいい話ではないのでは……と筆者(バカ)などは思います。
(柏ケミカル@dcp)