Money1でこれまでご紹介してきたとおり、韓国の鉄鋼企業は、中国企業による「過剰生産性の輸出」の余波で業績が傾いています。
韓国最大手の鉄鋼企業である『POSCO(ポスコ)』ですら中国に造った工場(1997年に設立した『張家港浦項不銹鋼(PZSS)』)を売却して撤退するほどです。

実際にどのくらい業績が傾いているかというと、以下をご覧ください。
まず日本からの資金と技術で興った最大手の『ポスコ』です。
2024年通年
総売上:77.69兆ウォン(-5.8%)
営業利益:2.17兆ウォン(-38.5%)
当期純利益:0.95兆ウォン(-48.6%)※( )内は対前期比の増減
⇒『韓国金融監督院 公示システムDART』公式サイト
かろうじて赤字になってはいませんが、営業利益は対前期比で38.5%減少し、純利益は48.6%も減少したのです。
次に『現代製鉄』が以下です。
2024年通年
総売上:23.23兆ウォン(-10.4%)
営業利益:0.31兆ウォン(-60.6%)
当期純利益:0.12兆ウォン(-72.2%)※( )内は対前年同期比の増減
⇒『韓国金融監督院 公示システムDART』公式サイト
こちらも赤字は免れていますが、営業利益は対前年同期比で60.6%減少し、純利益は72.2%も減少したのです。
キャッシュフローが厳しくなってきていると思われますが、同社は早期退職者の募集を開始しました。同社が希望退職を実施するのは2022年2月以来、約3年1か月ぶりのことです。
浦項工場の技術職員1,200人を対象に希望退職を実施し、同時に唐津工場や仁川工場への配置転換も行い、事業所の規模縮小に着手することになりました。その条件は――、
会社は退職者に対し、「1年間の月額基本給」×「定年までの残存勤務期間の50%」(最大3年分)を退職金として支給。また、1人当たり1,000万ウォン(約110万円)、子供最大3人分の学資金の支援に加え、55歳以上の退職者には別途、定年退職手当も支給する
――と報じられています。
傑作なことに、Money1でもご紹介したとおり、現在『現代製鉄』では「労使間の賃金闘争」が行われています。泣きっ面に蜂とはまさにこのことです。
『現代製鉄』は会社経営が傾いているので「無理」といっているのですが、労組は「もっと『現代自動車』のようにしてくれ」と無理難題を突きつけています。労働組合は「経営状況に関係なく、一貫して待遇が不足している」とごねています。
韓国の労組というのは、企業経営が危うくなっているのに「もっとくれ」と主張するのです。
韓国に投資して会社を興すというのは、このような労働者を抱えるということです。日本の企業人は、韓国には「労働者が強欲」というデメリットがあることを見逃してはならないでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)