韓国では「反米意識」がにわかに盛り上がりを見せています。
本来であれば日本でも「合衆国のカツアゲ」に対してもっと怒るべきなのですが、次の自民党総裁が誰になるのかがメインイシューになっているせいなのか、本件が盛り上がりません。
日本はいったん置くとしても、韓国では「韓国人316人が合衆国で逮捕・拘禁された」こともあって、「関税なんざ今の25%のママで構うもんか」という言説が力を得ています。
「3,500億ドルの現金をむしられるよりも関税25%の方がマシだ」――というわけです。
この主張には一理あります。
Money1でもご紹介したとおり、そもそも韓国には3,500億ドルもの現金はありません。

上掲のとおり、韓国の外貨準備高からして直近08月末時点で約4,163億ドルしかないのです。
しかも現金たるDeposits(預金)は250億ドルしかありません。ほとんどは(正体不明の)Securities(証券類)で、その金額は(同じく08月末時点で)3,662億ドルです。
韓国の場合は外貨準備高は時価計算されていないので、正味ナンボあるのか分かりません。
もちろん資産は他にもあって、韓国は純債権国で、『韓国銀行』が公表した2025年第2四半期時点での対外純資産は「1兆304億ドル」あります(資産:2兆6,818億ドル/負債:1兆6,514億ドル)。
ただ、これを売却すればいいじゃんか――とはなりません。そんなことは不可能です。3,500億ドルというのは韓国にとっては非常に重い金額です。
トランプ政権がやっているのは、もう何度だっていいますが、覇権国家によるカツアゲであって、ジャイアンがのび太くんに「アイス買うから100円よこせ」といっているのと何も変わりません。
韓国が国を守るために「払いません」「なら勝手に25%にしろよ」と居直るのも無理はない――とも考えられるのです。
――で、韓国メディア『朝鮮日報』が面白い記事を出しました。
「3,500億ドルむしられるぐらいなら25%関税の方がマシだ」を理論武装するための記事と見られます。
マクロ経済学者Dean Baker(ディーン・ベイカー)さんにインタビューした記事です。ベイカーさんは、マクロ経済学、労働経済学、公共政策がご専門の経済学者で、シンクタンク『CEPR』(Center for Economic and Policy Researchの略:経済政策研究センター)の共同所長を務める人物です。
特に2000年代前半から住宅バブルの危険性を指摘し、リーマン・ショック以前から「数少ない警告を発した経済学者」として注目を浴びたことがあります。
ベイカー先生は韓国を勇気づけるような発言をされており、「25%関税の方がマシだ」の急所をついた発言の部分を以下に引いてみます。
(前略)
――最近、韓国と日本が25%関税を15%に減らす代わりに、トランプが自由に使える対米投資金5,500億ドル(日本)と3,500億ドル(韓国)を米国に渡すのは愚かな取引だと主張したが。「トランプの関税は、すべての国が共に繁栄できる道とは180度反対方向へ進むものに見える。
これは恐喝行為の試みであり、長年の貿易関係と安保協定を利用して、我々の貿易相手国や旧同盟国から可能な限り多くの金をむしり取ろうとするものだ。
トランプ下の合衆国は過去どの党の大統領の下にあった国とも同じではないことを知るのが重要だ。
はっきり言えば、トランプは本当に性格上、質的に異なる種類の指導者だ」
――あなたは、15%関税を払えば韓国の昨年対米輸出額1,320億ドルが5%減少して1,250億ドルに下がり、25%関税を払えば追加で10%輸出が減少し、さらに125億ドルが減ると主張した。
125億ドルの輸出を守るために3,500億ドルを支払うのは愚かだと言ったが、どんな根拠で算出したのか?
「その数値は完全に根拠がないわけではない。
合衆国がほぼすべての輸入品に15%関税を課すとした場合、それはドル価値が15%下落するのと似た効果を持つだろう。
両方ともわれわれの輸入コストを15%上げるからだ。
われわれは過去ドル価値が下落したとき貿易がどれほど減ったかについて一定の経験を持っており、大体5%程度の減少が合理的に見える。
ただし精密に分析した場合、その数値が10%に近づいたとしても驚くべきことではない。私は25%に追加上昇したときの影響はさらに大きいと仮定したのだ」
――まだ協商中の韓国とは異なり、日本は国内で『屈辱的な協商』という批判が出たにもかかわらず、結局米国に5,500億ドルを投資する取引を結んだ。
「中国に対する安保の懸念が主な要因だったのだろう。
経済的観点から見ると、日本はトランプが課したいと思うどんな関税でもそのまま受け入れる方がはるかに良かったはずだ。
トランプが大統領である限り、どの国も合衆国を輸出市場として確実に頼ることはできない。
彼は自分の合意に縛られていると感じないし、いつでもさらに多くを要求することができる。
思い出せ。
トランプは2019年に通商協定を結んだカナダとメキシコにも高関税で脅かした。
トランプに信頼できる約束がないということは安保にも当てはまる。
日本と韓国が中国との衝突でトランプが自分たちを防衛してくれると期待するなら大きな間違いをしているのだ」
(後略)
ベイカー先生も、合衆国が行っているのは「これは恐喝行為の試みであり、長年の貿易関係と安保協定を利用して、我々の貿易相手国や旧同盟国から可能な限り多くの金をむしり取ろうとするものだ」と述べています。
要するに「カツアゲ」です。
またトランプ大統領がいる限り「合衆国には信頼がおけない」というのも確かでしょう。
日本人も肝に銘じるべきです。
(吉田ハンチング@dcp)






