『韓国銀行』が警告「過剰な家計負債は韓国経済の足かせ」

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2025年11月30日、『韓国銀行』が「わが国の家計負債が金融・経済に及ぼす影響」というリポートを公表しました。

『韓国銀行』がなぜ一所懸命に「家計負債」の増加を防ごうとしているのかがよく分かる内容です。

また韓国経済の特徴を把握することにつながりますので、ご紹介しておきます。

韓国の家計負債への問題提起

まず、冒頭の問題提起部分を全文和訳します。

1. 検討背景
わが国の家計負債(家計信用統計基準)は、グローバル金融危機以降、2010年末の843.2兆ウォンから2021年3/4期末には1,844.9兆ウォンへと、2倍以上に拡大しており、主要国と比較しても負債水準が高く、増加速度も速い方である。

2021年3月末時点の、わが国の名目GDP比家計負債比率(以下「家計負債比率」)は104.9%で、名目GDP(2020年)上位30か国の主要国平均(63.2%)を大きく上回っている。

また、直近10年間のわが国の家計負債比率の増加幅(+31.7%ポイント)も、主要国(+6.9%ポイント)より相当に高い水準となっている。

グローバル金融危機以降、一部の国では住宅価格調整が相当期間にわたり進行し、大規模な非自発的デレバレッジングを経験したのとは異なり、わが国はそのような状況を経験しないまま、家計負債比率が概ね持続的な上昇傾向を示してきた¹)(図 Ⅱ-1)。

経済規模の拡大とともに負債が増加することは自然な現象といえるものの、実体経済に比べて過度な負債水準(debt overhang)は、マクロ金融経済の安定性を損なう要因として認識されている。

すなわち、所得水準に比して家計負債の規模が大きい場合、家計負債と連動した住宅価格下落などの衝撃が発生すると、民間消費およびGDPがより大きく萎縮し、失業率も上昇するなど、内外の衝撃に対して脆弱となるリスクが高い(IMF, 2012 など)。

過去の家計負債関連の危機事例をみると、概して危機直前に家計貸出が急増した後、資産価格バブルの崩壊、急激な信用供給の萎縮など、内外衝撃の発生によって家計貸出の不良化が速やかに進行し、金融危機が誘発された(Reinhart and Rogoff, 2009)。

これらの点を踏まえ、本稿では、所得フローに比して過度な家計負債が金融・経済に及ぼす影響を、理論的観点と、内外衝撃時の否定的側面に区分して点検してみたい。

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「わが国の家計負債が金融・経済に及ぼす影響」

韓国の家計負債は異常なほどの増加を見せ、それは金融危機を誘発するリスクを高めるものでもあるのです。

何度もご紹介してきましたが、韓国にはまともな内需は不動産しかありません。「いつまでも右肩上がり」という神話が生き続け、韓国の皆さんは隙あらば不動産市場にお金を突っ込んできました。

普通ならバブルが弾けると、「調整」が入ってしばらくは低迷が継続し、またゆるゆると上昇トレンドに戻る――となります。

ところが韓国の場合には――『韓国銀行』が上記で述べたとおり「わが国はそのような状況を経験しないまま、家計負債比率が概ね持続的な上昇傾向を示してきた」――なのです。

不動産バブルがすっかり弾け飛んでしまい、不動産ローンを抱えて、しかし物件を売ることもできず――という中国人が現在どのような状況になっているか――は読者の皆さまもご存じのとおりです。

中国人の四面楚歌状況についてご存じない方は、法輪功系メディア『看中国』などがYouTubeに上げている動画をご覧ください。

1本見るだけで、すっかり暗い気持ちになること請け合いです。

家計負債の異常な増加が経済を荒すさませる

本線に戻りますが、韓国ではまだ「不動産はいつでも右肩上がり」という神話がいまだ残っているふうがあります。

問題なのは、不動産購入が「住宅ローン」とセットになっており、家計負債を増加させることです。

『韓国銀行』がこのリポートで指摘しているのは、家計負債の増加が経済成長の大きなオーバーハングになっている――という点です。

負債の増加――借金をするのは別に悪いことではありません。

あなたの負債は誰かの資産だからです。負債は経済成長を促すタネでもあるのです。

負債の増加が経済成長を大きくすることもあります。

しかし、それも程度問題。

先にご紹介したことがありますが、『IMF』も「中国と韓国を名指し」して、中国と韓国は負債の増加が経済成長を促すような状況では(もはや)ない――と指摘するリポート(論文)を出しています。

今回のリポートで『韓国銀行』が――、

「成長過程における家計債務の増加は、金融市場の発展、家計の金融アクセス性向上などの肯定的なシグナルとして解釈されることもある。

しかし、家計債務が適正水準を超えると、過度な債務負担により家計消費がむしろ萎縮し、実体経済の成長傾向を制約するなど、債務の負の効果が正の機能を上回るようになる」

――と書いているのは、まさにこの点を指摘しているのです。

はっきり言えば、韓国は家計負債の増加速度と水準が異常で、経済成長の足かせになっている――と『韓国銀行』は指摘しているのです。

家計の過剰な負債が金融・経済に影響を与える3つの経路

『韓国銀行』のこのリポートによれば、家計の過剰負債が金融・経済に影響を及ぼしうる主な経路は、大きく以下の3つに分けることができます。

過剰負債による元利金返済が可処分所得の減少をもたらし、これが消費を萎縮させる。

家計債務が資産購入に活用される場合担保効果(collateral effect)、借入による資産価値拡大のレバレッジ効果 (leverage effect)などを通じて、金融市場と実体経済のサイクルの振幅を拡大させ、金融不安や景気後退を引き起こす潜在的な不安要因となる。

これは何をいっているのかというと、例えば家計負債を増加させて(例えば住宅ローンを負って)不動産を購入すると、市場価格の変動が資産価値を上下させることになるよね、その上下動が金融市場や実体経済にリスクをもたらすのだよ――といった意味です。

これが爆発的に作用してどん底景気に陥ったのが中国です。

住宅ローンを抱えたままなのに、しかし不動産価格の低迷はもはや救いようがなく、購入した物件を誰も欲しがらない――という現況が中国です。

家計債務が増加する過程で、金融アクセス格差や資産価格上昇の伴走などにより、経済主体間の経済的不平等が深刻化する可能性がある。

この❸は中国・韓国ともに当てはまります。韓国で拡大している「格差」には「住宅を持てた者・持てなかった者」が存在します。

先に生まれて住宅を手に入れた者は右肩上がりのトレンドに乗って「持てる者」になりました。

オレも持てる者になりたい、コレが最後のチャンスかも――と文在寅時代に不動産ローンを背負った人たちが異常な不動産高騰を作りました。

これで不動産価格の大調整局面がくれば、中国のような阿鼻叫喚の地獄絵図のいっちょ上がり――というわけです。

経済成長を萎縮させる過剰な負債

見逃してはならないのは❶です。

過剰な負債のによる元利金支払いの増加によって、可処分所得が減り、これが消費を低迷させるのだ――という指摘です。

消費が低迷すれば、経済成長は当然萎縮します。

『韓国銀行』は、

もし家計負債の対GDP比が2012年水準で維持されていたなら、2024年の民間消費は現在より4.9~5.4%高かっただろう

――と衝撃的な分析を披露しています。

ずいぶん長い旅になってしまいましたが、要するに「韓国は家計負債を抑制しなければ経済成長もできませんよ」――というお話です。

(吉田ハンチング@dcp)

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