日本企業の内部留保が400兆円を超えたという報道がありました(データ元は財務相の法人企業統計調査)。「内部留保」は、企業がその「内部」に温存している、貯めているという意味です。企業は商売を行って、利益を出すわけですが、勤務する社員の給料、商売に必要なお金、つまりは経費を支払い、投資を行い、税金を納めた(他にも配当金など社外へ出ていくお金を全部差し引いて)後に残ったお金を貯めておきます。このお金を一般に「内部留保」(あるいは内部留保金)と呼びます。
企業が大きな投資を行わない傾向が強くなったのは、バブルがはじけてからこっちのことで、つまり1990年代終わりからです。何が起こるか分からないので「とにかくお金を持っておかないと」というわけですね。しかし、企業が投資を渋ると、これはお金を使わないということですから、景気に影響します。
イフレターゲットが達成できず、景気の良さももう一つ実感できない(さらには歳入が足りない)というわけで、政府は企業の内部留保金に課税しようと虎視眈々と狙っているのではないでしょうか。その動きの現れで今回のニュースが流れたのではないか、と筆者のような疑い深い人間は考えてしまうわけです。
企業からすると「内部留保金はいざというときのお金でもあり、その多寡について政府にとやかくいわれる必要はない。大きなお世話だ!」というところでしょう。しかし、企業の内部留保金が大きく膨らみ続けているのは確かなのです。
実際下のようなデータがあります。
上記のグラフは吉川洋先生の『人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長』(中央公論社)P.188からの引用ですが、これを見れば分かるとおり、企業は投資ではなく貯蓄に邁(まい)進しています。吉川先生の記述をそのまま引用すると、
<<引用ここから>>
かつては家計が貯蓄し、企業は負の貯蓄、つまり借金して投資をしていた。企業は時代が変ったと言う。しかし変ったのは時代ではなく、企業だ。
⇒吉川洋『人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長』(中央公論社)P.188
<<引用ここまで>>
となります。企業による投資は生産性を拡大するための資源であり(問題はそれが増えても必ずしも生産性が上がるとは限らないことですが)、それが減少しているというのは、日本経済の成長にとってはあまり良いことではありません。
(柏ケミカル@dcp)