<<第3回>>
「年利35%」という驚異的な運用成績を過去10年間叩き出している米国インデックス株(ETF)の投資方法「レバレッジ動的最小分散」。その実践者である「Dr.鈴木一郎」先生の連載第3回。
今回は、今年実際に運用してみたらどうなったかという実践編です。
「とにかく始めてみよう!」で……
S&P500と長期米国債の3倍レバレッジETF(SPXLとTMF)を足し合わせた分散値が最も小さくなるようリバランスしながら運用していく「レバレッジ動的最小分散」。
この手法による運用を実際に始めてみたのは今年02月初旬からでした。
まず02月05日にTMFを一株「29.8ドル」で3,280株購入、 続いて07日にSPXLを一株「73.1ドル」で1,250株購入してみました。
この時期に始めてみたのに大した理由はなく、とにかく始めてみないと分からないという感じでした。
始めて2週間、何もしてないのに含み益は160万円を超え、まさにウハウハの絶好調。
そのままの調子が続けば、年末には儲けが3,000万円を突破してしまう計算になるわけで、「このままいくわけはないよね」ということは、素人ながらも感じていました。しかし、まさかあんなことが起こるとは予想だにしていませんでした。
「新コロナ大暴落」がやって来たわけです。
コロナ禍による大暴落
02月22日に「マイナス17万9,471円」と一度負け始めると、あとはほとんどつるべ落としの如し。
3月20日までの約1カ月間、ひたすら暴落し続け、気が付けば「マイナス706万1,388円」と700万円を超える大含み損に成り果てていました。
新コロナ前のSPXLの最高値が2月19日の「75.83ドル」でしたから、ほぼ最高値で買ってしまっていたわけです。ひとたまりもありませんでした。
SPXLには3倍のレバレッジが掛かっているので、毎日S&P500の3倍落ち続け、やっと底を打ったのが03月23日。
そのときにはSPXLは一株「17.55ドル」、つまり「最高値の4分の1」以下まで大暴落していました。
正直、このコロナ大暴落の1カ月間は生きた心地がしませんでした。
価格が落ちることより、暴落がいつまで続くかわからないという、その終わりの見えなさの底なし沼加減の方がより恐怖でした。
コロナ禍から「プラス」に転じる!
しかし、この後米国株は驚異の大反発を見せ、2カ月半ほど経った06月06日には、あそこまで落ちまくっていたはずの自分の最小分散が「16万5,101円のプラス」とひょっこりプラ転してしまいました。
ここまですばやくプラ転したのは、最小分散ならではの大きな要因が二つあったと思います。
一つは、長期国債のTMFが実は、ほぼずっとプラスを保っていたということ。
一般論として国債と株には逆相関の関係があり、片方が上がると片方が下がるというシーソーのような性質があり、新コロナの大暴落時も、この関係はちゃんと保たれました。
SPXLが落ちるとTMFは逆にどんどん値を上げていき、3月9日には「51.57ドル」という、かつてない最高値まで上がりました。
以後、瞬間的には「28ドル」まで落ちるというシーンもありましたが、TMFは一貫してSPXLの暴落を埋めるようカバーしてくれました。
もう一点は、「分散を最小にするようリバランスする」という、この手法独特の「動的」という特性によるものです。
SPXLが底値を打った03月末の辺りで、TMFを売りSPXLを買うようリバランスを行えという計算結果が出たのです。
いわゆる「ナンピン買い」です。
普通だったら、落ちていくナイフを拾うのは恐ろしく、とても手が出ないのですが「分散を最小値にする」というのがルールなため、04月頭にSPXLを「1,200株」買い足しました。
「約25ドル」と当初の半値以下で買えたナンピン買いのお陰で、SPXLの平均購入価格が「50ドル」近くにまで大きく引き下げられました。
ほぼ最高値と目も当てられない価格で買ってしまっていたSPXLでしたが、暴落時に自然に「ナンピン買い司令」がでたので黒字化が容易になりました。
高値としては09月03日に「プラス539万4,100円」と500万円を超える黒字となりました。
しかしその後、09月の米国相場が大荒れに荒れはじめ、再び暴落して一時は250万近い大きなマイナスに落ち込みました。
ですが10月に入ってから持ち直し、この原稿を書いている10月16日の時点では「187万1,220円」のプラスとなっています。
この後は、11月に大統領選なども控えているのですが、どのような形で年を越すことになるのやら。
過去10年間の平均では年利35%近いプラスのレバレッジ最小分散なのですが、プラスが大きい分、マイナスに一度振れ始めると含み損も大きくなり、いつも大儲けというわけには行かない投資法だということが、身を持って分かりました。
以下が2020年02月以降の「レバレッジ動的最小分散の値動き」です。
↑赤線がTMF、緑線がSPXL、白線が両者を合成した動的最小分散。SPXLの落ち込みをTMFがカバーしていることがよく分かる。
次回最終回は、プラス・マイナスひっくるめて最小分散法の功罪を考えてみたいと思います。
人生倍々か、それともこのままグットバイバイか、それは相場の先行き次第!
では来週までバイバイ!
(第4回に続きます)
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