「殴り合い」といっても比喩的なものではなく、実際に肉体的な接触の「つかみ合い」がありましたので台湾・中国どちらにとっても外交上の大きな不祥事です。
台湾メディアでは事件発生当初から大きく取り上げられていたのですがご紹介し損なっていました。中国共産党からの反応も出ましたので取り上げさせていただきます。
そもそもの事の起こりは、2020年10月08日、台湾の建国記念日(10月10日)を祝い、フィジーで記念祝賀行事が開かれたことです。
主催者は台湾側の貿易事務所(事実上の台湾大使館)。場所は首都スバ(Suva)の『グランド・パシフィック』という高級ホテルでした。
ところが、このパーティーに中国のフィジー大使館職員が入り込んでおり、写真撮影・パーティー参加者に接触しての情報収集を行っていたのです。もちろん招待されていません。
見とがめた台湾外交部の人間が退出を要求したところ、一度はおとなしく出ていったのですが、またやってきて警備員の制止を振り切るように侵入。大きな罵声を上げるなどし、駆けつけた台湾外交部の人間とつかみ合いになった――という次第のようです(台湾メディアによる)。最初のつまみ出されそうな段階ですでにつかみ合いになったという報道もあり、この辺りは情報の詳細が錯綜しています。
で、中国の外交官を逆上させたのはケーキという話がありまして、中国側の報道では「パーティーにニセの旗が現れた」としています。
『Radio Taiwan International』の記事にその写真があります。記事のスクリーンショットは以下です。
↑『Radio Taiwan International』の2020年10月21日付け記事。(C)『Radio Taiwan International』
世にもアホらしい話のように思えますが、まあ外交官というのは国の代表者ですからこういう時には怒りを露わにするのが正しいのでしょうか。しかし、冷静さを欠いたのは確かです。
台湾はこの事件をすぐに報道し、世界も「ナニをやってるんだ」と恐らく中国への嘲笑を込めて報じています(日本ではあまり報じられているようには思えませんが)。
中国外交部は「中国大使館職員は公共のスペースにいた。台湾の挑発行為によって中国大使館の職員がけがを負わされた」と主張してます。
公共のスペースがナニを意味しているのか全然分かりませんが、呼ばれもしないのにパーティー開場に侵入したというのは公共のスペースにいたことになるのでしょうか? 噴飯ものの自己弁護です。
また、経緯からいって中国側がつかみかかったことは明らかです。中国側が不当なことをしなければ、祝賀パーティー開場ですから台湾側には手を出す理由がありません。
また、中国は「台湾は中国の一部であって、台湾には外交官などいない」という主張も行っています。
これに対しては、2020年10月19日、台湾外務省は「中華民国である台湾は主権を擁する独立国であり、中国は台湾の国民の日のレセプションに干渉する権利はない」と述べました。
中国にとっては際どいどころのある主張ですが、台湾自身がこのように自信を持って発言できる環境になったのはよいことではないでしょうか。いずれにせよ中国はこの暴力沙汰で国際的に汚点を残しました。
恐らくどの国も「みっともないことだ」と思うでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)