中国EVメーカー「販売台数」を水増しする手口。「0キロ中古車」とは何か?

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2025年05月23日、中国の電気自動車メーカー『BVDは突然の値下げを発表し、結果株価が急落するという事態を招きました。

先にご紹介したとおり、『BYD』は2025年期初から03末時点まで在庫を33%も増加させています。

このたまった在庫を処分する方法が「零公里二手车(0km中古車)」という手口です。

走行距離がほとんどゼロであるにもかかわらず、中古車として販売される車両を指します。

これらの車両は、新車として製造され、ナンバープレートが登録されていますが、実際にはほぼ走行されていない状態で、中古車市場に出されています。

しかも大量に、です。

なぜこんな中古車が出回るかというとメーカーがやっているからです。日本にも「新古車」というクルマが出回ることはありますが、これは主にショールームで展示したものなどでレア。ほとんど新車ですが、安く購入できてお得です。

ただし、ボディーカラーやオプションについては制限がかかります。

中国の場合は、メーカーが売れ残った在庫を「売れたことにして」ナンバープレートを付け、補助金を受け取って中古車として販売するのです。

中国中央政府は電気自動車の補助金給付を廃止しましたが、地方政府の一部ではいまだに継続中です。

また在庫車両をまとめてディーラーに販売し、ディーラーが中古車として市場に出すことにより、在庫処分や販売目標達成が可能となります。

――このようなからくりを使って在庫処分を行い、販売目標を達成したと言い、補助金を不正に受け取っている可能性があるのです。

『長城汽車』の魏建軍会長がインタビューに答えた動画で「0km中古自動車」について言及し注目されることになりました。魏建軍さんは、

走行距離0km中古車は業界では異様な現象だ。

いわゆる『0km中古車』とは、ナンバープレートをつけたあとに登録された車のことを指す。

売れたように見えるが、今は中古車販売店の手に渡っている。3,000~4,000軒もの中古車販売店が販売しており、非常に混乱している」

と述べました。

今に始まったことではない「0km中古車」

確かに異常に見えますが、実はこの0km中古車は今に始まったことではないのです。

そもそもは、新エネルギー車の「国家補助金」や「地方補助金」政策の実施初期にすでに始まっています。

当時、新エネルギー車メーカーは大量の新車を個人の「名義貸し」や企業名義で購入・登録し、関連部門に報告する販売台数を水増しして、より多くの補助金を獲得していました。

中国で何の技術的なバックボーンもないのに雨後の筍のごとく電気自動車メーカーが乱立したのは、ポンコツを造っても補助金で儲かるだろ――という虎タヌの計算が後押ししていたのです。

今にわかに中国本土で注目を集めていますが、「0km中古車」は主に自動車「輸出」分野で見られました。

一部の業者が国内販売された新車のナンバープレートを登録し、その後中古車名義で輸出することで、輸出入規制や関税を回避していたのです。

2024年、中露では、一部の業者が中央アジアの国々とロシアの「個人購入優遇」や「低価格通関」といった政策を利用し、国内でナンバープレート登録した新車を中古車名義で「迂回輸出」してロシアへ送り、国内の「輸出還付税」差益を稼いでいました。

よく考えるものです。

その「0km中古車」はどこから出たものか? 当局は規制に乗り出した

一方の中国内市場では、現在流通している「0km中古車」は出所によって大きく三種類に分けられます。

❶自動車メーカーの「大口顧客」販売部門が外部に大量販売する「资源车(販売部門が大量一括で処分できる販売資源としての車)」。主に長期在庫車、売れ残り車、旧型モデルが含まれ、一部は未登録車。

❷自動車メーカーの認可する4S店が月間・四半期・年間販売目標を達成するために事前登録した「
冲量车( 目標達成・販売数稼ぎ用の車両)」。この種の車は「包牌包税车(ナンバープレート・税金込み車)」とも呼ばれる。

❸直営チャネルブランドでの顧客「退定车(予約キャンセル車)」。この種の車は中古車業者が顧客の代わりに残額を補填して引き取り、中古車チャネルで取引される。

――というわけで「0km中古車」というのは、一部の市場関係者が自らの利益のために派生させた異常な市場行動というころができます。

自動車メーカーにとっては、このからくりを使って在庫車・売れ残り車を処理することで、

・迅速に資金回収でき、
・販売実績を上げられ、
・既存の販売網の価格を安定させる

――ことができます。

4S店にとっては、「0km中古車」はメーカーからの抱き合わせ販売や売れ残り仕様車を最低コストで処理し、同時に販売実績評価を達成してメーカーからのリベートを受け取れる、というわけです。


この「0km中古車」については、中国語ネット上で大変注目されています。

中国商務部(の消費促進司)が、2025年05月26~27日に業界団体、自動車メーカー、取引プラットフォームなど業界関係者を呼んで会合を行う――という通知のスクリーンショットがネット上に出回っています。

会合はすでに終わっていますが、これは「中古車輸出の指導と0km中古車市場の規制」についてのものだった――と報じられています。

(吉田ハンチング@dcp)

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