■用途別に呼ばれるので「赤字国債」
日本政府が発行する日本国債は、現在では大きく分けて「建設国債」と「赤字国債」の二種類があります。
●建設国債
公共事業費に充(あ)てるために発行する国債
●赤字国債
歳入が足りないときに発行する国債
発行の目的による呼び名があるわけです。戦争の際には、その戦費を調達するための「戦時国債」というのもありましたが、幸いなことに現在は存在しません。
つまり、赤字国債とはそもそも歳入補填のために発行されるもので、これを多くの人に購入してもらってはじめて政府の予算がなんとかなるという、その場しのぎ、ハッキリ言えばダメダメなわけです。
「今月はどうしても収入が足りない! せや、みんなからお金借りたろ!」というオッサンがいたとしたら、皆さんはそのオッサンをどう思うでしょうか。イヤな話ですが、今のうちの政府はそんな状態になっています。
■赤字国債はそもそも財政法違反なの!
1947年(昭和22年)に定められた、国の財政についての基本法『財政法』というものがあります。この財政法では、国の歳入・歳出についてなどの規定が盛り込まれています。
その中の第4条には、
「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」
とあります。
「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」ということは、そもそも国債(公債に当たります)を発行して歳入に充てるのは駄目! なのです。
ただし、その後に続く「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」のおかげで、「建設国債」についてはOKということになっているのです。
ですから、そもそもは「赤字国債の発行は財政法第4条違反」なのです。
■「1年だけだから!」とズルズル……だらしない私
なぜ現在はOKになっているかといいますと、「特例公債法」という法律を制定・施行して「赤字国債の発行を認める」としているからです。
この「特例公債法」は1965年(昭和40年)度予算のために初めて制定(1941年1月19日)され、このときに初めて赤字国債が発行されました。ただし、特例公債法は1年限りのものだったので、その後しばらくは特例公債法が制定されることも、赤字国債が発行されることもありませんでした。
ところが!
1975年(昭和50年)に再び「1年だけだから」と特例公債法が制定され、赤字国債が発行されます。その後は、1989年(平成元年)まで毎年毎年「1年だけ」といいながら特例公債法が制定され続けます。1990年(平成2年)には特例公債法は制定されませんでしたが、「臨時特例公債法」が制定され、そのための国債が発行されました。
1990年には湾岸戦争があり、その平和維持活動のためというわけで「臨時特例公債法」が制定されたのです。平和維持活動といいますが、湾岸戦争の戦費を援助するためですので、「戦時国債」みたいなものです。この国債により90億ドルを調達しました。
その後1993年(平成5年)までは赤字国債は発行されませんでしたが、1994年(平成6年)には「所得税の特別減税の実施等のための公債の発行の特例に関する法律」という「特例公債法」が制定され、以降ずっとなんだかんだで「特例制定法」を作っては赤字国債を発行し続けているのです。
「あと1杯だけ、1杯だけだから!」と言いながら閉店まで何杯まで呑み続けるオッサンがいますが、日本の予算編成はまさにそのような状況なのです。
(高橋モータース@dcp)