なぜそんなことになるのかという事案が報じられました。韓国メディア『韓国経済』のスクープです。
2013年に始まったプロジェクトが終わらない
韓国の対北朝鮮用の偵察用無人航空機、簡単にいえば「ドローン」ですが、これの開発計画が2013年11月に開始されたのにもかかわらず、現在に至るもできていません。
開発完了は2017年10月のはずだったのですが、2023年までかかる、とのこと。
この計画(MUAV事業)は、アメリカ合衆国の技術を導入するのではなく、韓国が独自の技術で開発しようという野心的なプロジェクトで、『大韓航空』『LIGNEX1』※『ハンファシステム』が参加しています。
投入された資金は「5,000億ウォン」(約470億円)ですがプロジェクトは44カ月の遅延を記録しています。
無地偵察機開発計画を襲ったトラブルの数々
当記事の白眉は数々のトラブル対応にかかった期間を列記している点です。記事から以下にポイントを引きます。
飛行体と地上指揮所との間で通信エラー
⇒通信機器の交換と検証完了:14カ月翼の氷着現象(翼からの液漏れが原因と想定)
⇒不良パネルの交換と検証完了:9カ月大気データデバイスエラー(速度測定の不正確)
⇒機器を再設計と検証完了:9カ月飛行体の上昇性能が低下する現象が発生
⇒現機器を継続使用して運用的に解消:3カ月開発試験評価基準に達したが運用試験評価中断の延長
⇒事業継続:9カ月大気データ機器エラー(速度測定の不正確)が再発生
⇒スピード測定センサー(Pitot Tube)を追加装備中:9カ月
最新のものでは速度が正確に測定できないという現象が再び現れて、Pitot Tubeを追加装備中となっています。Pitot Tubeというのは、いわゆる「ピトー管」ですが、「今ピトー管を付けているの?」と思わざるを得ません。
「迂回」解決じゃないだろ
また、翼の氷結現象はメーデー民の皆さまならご存じでしょうが、揚力を低下させる極めて危険なものです。無人機ですから人的被害は出ませんが、だからといって墜落していいわけではありません。
しかるに、『韓国経済』の記事では以下のようになっています。
(前略)
2020年01月2日から8月28日までの8カ月の間に実施した開発試験評価中飛行試験の結果、3万6,000フィート上空で1時間余り以上飛行すると翼に氷着現象が現れ、これにより、飛行体の上昇性能の低下が発生したことが確認された。「防衛事業庁」はこれについて、氷着現象を根本的に解決するよりも、離陸前の気象情報を確認し、任務地域の移動経路を選定して、氷着するような環境を回避することで問題を「迂回」解決しようとしている。
(後略)※データ引用元は同上
「待て待て!」です。さらっとすごいことが書いてあります。
氷着現象の根本的解決をせずに、氷着するような環境を避けて無人機を運用しようというのです。いったいどんな偵察機を作るつもりなのでしょうか。
親北朝鮮の文在寅政権ですので、北朝鮮に無人偵察機を送り込むような事業を進行させなかった可能性もあるかと邪推したのですが、どうもそうではないようです。
この事業の遅延は、単に技術がないためだと思われます。韓国に技術を蓄積するという心意気は立派なものですが、しかしこれはいつ完成するのかが不安なプロジェクトです。
※『LIG Nex1』は日本ではあまり知られていませんが、韓国の軍需産業の一角を担う大手企業です。近接防御用の「CIWS-II」、「ウェアラブルロボット」「偵察用の多目的無人ヘリ(MPUH)」など手広く手掛けています(以下は同社のホームページ/スクリーンショット)。
⇒参照・引用元:『LIG Nex1』公式サイト
(吉田ハンチング@dcp)