(よせばいいのに)中国の無錫にDRAMのファウンドリーを有する韓国『SKハイニックス』。Money1でもご紹介したことがありますが、同社は『Intel(インテル)』の事業を10兆3,000億ウォン(約9,991億円)で買収する予定です。
『Intel』から買収するのは、以下の事業です。
SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)※
ウエハー
中国・大連の製造工場
※「Optane(オプテイン)」は含まれません。
また、この買収契約は以下のようになっています。
(約7,760億円)
2025年03月、第2次契約クロージングで2兆3,000億ウォンを支払う
(約2,231億円)
※2025年03月まで大連工場の運営権は『SKハイニックス』には譲渡されない。
『インテル』の事業を買収するというので、韓国メディアも「『SKハイニックス』はスゴイ!」となっているのですが、また例によって結合審査があるのです。
『SKハイニックス』が『インテル』の事業を買収することで、世界的に寡占的な支配力を有することになるといけないので、各国の公正取引委員会が審査します。
で、『SKハイニックス』が中国当局に提出した書類が注目されています。
『SKハイニックス』が中国当局に「白旗」
2021年12月22日、中国政府は『SKハイニックス』による『インテル』の事業買収を承認するという認可を出しました。
この承認の半月前に、『SKハイニックス』は中国当局に認めてもらうため、6つの交換条件を提示していた、というのです。
本件を報じた韓国メディア『朝鮮日報(日本語版)』によると、以下のような条件となっています。
●取引承認日から5年間、ソリッドステートドライブ(SSD)製品の生産量拡大を継続する
●競合企業1社が企業向けSSD市場に参入することを支援し、中国国内市場での競争を活性化する
ーーという2条項には「詳細は社外秘」という条件を付けた。
米中対立のさなかで半導体大手SKハイニックスに中国での生産量拡大を約束させ、中国企業の市場参入を助けることに保証を取り付けた格好だ。
『SKハイニックス』は「SSDの生産を拡大する」「中国企業を支援する」と書面で約束して、結合審査を通してもらったというのです。しかも社外秘で口外しない約束とのこと。
つまり「白旗」です。
自分のクビを締めるような条項を飲んだ
「中国企業を支援する」という約束は自分のクビを締めるような条項です。中国の会社が技術をキャッチアップしたら韓国製品を駆逐し始める。これがいつものパターンです。スマホも自動車もそうなっています。
大丈夫なのかと思わざるを得ませんが、『SKハイニックス』も好き好んで提出したわけではないようです。『朝鮮日報(日本語版)』の記事から一部を引用します。
(前略)
SKハイニックスは昨年12月、中国にインテルのNAND型フラッシュメモリー事業部買収に伴う企業結合届出書を提出した。しかし、中国当局は1年間にわたり、利害関係者の意見集約などを理由に挙げ、最終承認を先送りしてきた。
韓国と米国、欧州など7カ国・地域が既に承認している状況で、SKハイニックスは中国の承認が下りない事態を防ぐため、土壇場まで水面下で交渉を継続してきたとされる。
事情に詳しい業界関係者は「他国とは異なり、中国には『無条件での承認』はなく、『不承認』または『条件付き承認』しかない状況で、SKハイニックスは最大限受け入れ可能な範囲で条件を調整した」と指摘した。
(後略)
中国には「不承認」と「条件付き承認」しかない、というのはなかなか強烈な指摘です。
1年間も待たされましたが、『SKハイニックス』がこのような苦しい条件を提示したら半月で結合承認が出たのです。中国のやり口がいかに姑息なものか分かります。
同記事によれば、『SKハイニックス』は「自社から先に提案した条件ではない。技術支援ではなく、高仕様のNAND型フラッシュメモリーを安定的に供給するよう求めたもので、技術流出とは関係ない」と説明しているとのこと。
それで済むかどうは、まさに中国当局次第なのではないでしょうか。
中国政府は「中国に進出した企業に技術移転を要求しない」などと喧伝していますが、果たしてそうでしょうか? 中国政府のプロパガンダにだまされるべきではありません。
(吉田ハンチング@dcp)