おススメ記事

タイ「中国から潜水艦を買ったら『エンジンがなかった』でござる」

広告

タイにはお気の毒ですが、大変に興味深い話なのでご紹介します。

タイメディア『Bangkok Post(バンコク・ポスト)』に「わが海軍がエンジンのない潜水艦を買っちまった」という記事が出ました。

Youはナニしにタイへ?

面白い興味深い点を記事から引用します。まず以下の部分。

Pheu Thai党の議員は、海軍の潜水艦調達計画に不正があると主張し、軍部がだまされてエンジンのない艦船を購入させられていると付け加えた。

(中略)

Yutthapong氏は、海軍と潜水艦の契約を結んだ『China Shipbuilding & Offshore International』(CSOC)は中国政府を代表しているわけではないと主張した。

『CSOC』は民間企業であり、海軍が『CSOC』と締結した潜水艦契約は政府間の取引ではないことを意味する、と彼は指摘した。

Yutthapong氏によると、潜水艦基地を2期に分けて建設するプロジェクトもあり、その金額は約18億5千万バーツにのぼるという。

Yutthapong氏はまた、同社が潜水艦基地建設プロジェクトに従事するために4人の人員をタイに派遣したが、彼らは中国語を教えるための労働許可証を申請していたことが判明したと述べた。

⇒参照・引用元:『Bangkok Post』「Navy buying sub ‘with no engines’」

タイは中国から潜水艦3隻を購入することにしたのですが、その契約はそもそも中国政府と交わしたものではなく、『China Shipbuilding & Offshore International』(CSOC)とのもので、「大丈夫なのか?」といっています。

この『China Shipbuilding & Offshore International』は、『China Shipbuilding Industry Corporation(中国船舶重工集団)』(CSIC)の貿易部門です。

『CSIC』は一応国有持ち株会社なので、その貿易部門である『CSOS』も純然たる民間企業とは言いにくいと思われますが。

それは置くとしても、潜水艦基地建設に従事するために派遣された4人が「中国語を教えるための労働許可証を申請していた」というのは傑作です。

何をメインの仕事にタイを訪問したのでしょうか。

エンジンはおまへん!

また、次の部分です。

(前略)
また、引き渡し予定の最初の潜水艦にはエンジンがない。

中国は潜水艦用のディーゼルエンジンを製造できないため、ドイツから購入しなければならないからだ、と述べた。

『CSOC』の契約では、潜水艦にはドイツの『MTU』が供給するエンジンを搭載しなければならないが、同社が中国にエンジンを販売することを拒否したとYutthapong氏は主張した。

同氏は、『CSOC』がドイツのエンジンの代わりに中国製のエンジンを潜水艦に搭載するとの情報を得たという。

Yutthapong氏は、この問題をPrayut Chan-o-cha首相に知らせ、契約で規定されたエンジンの種類を変更する動きを止めるよう求めると述べた。
(後略)

⇒参照・引用元:『Bangkok Post』「Navy buying sub ‘with no engines’」

引き渡し予定の最初の潜水艦にはエンジンがない」には呆れるほかありません。

なぜ、こんなことが起こったかというと、潜水艦のエンジンはドイツ『MTU』(Motoren-und Turbinen-Union)製のものを搭載する予定でした。しかし、これがEUの輸出規制に引っ掛かるという判断になって、中国企業はエンジンが入手できなくなったのです。

実は、これはタイも中国も当惑するような話なのです。

というのは、1989年06月04日に中国で起こった天安門事件を契機として、『MTU』社製エンジンは対中国禁輸品目となりました。しかし、実はそれ以降も中国に輸出され続けてきたのです。

これは、その禁輸措置が全面禁止ではなく、柔軟に運用されてきたからです。

実際、『ストックホルム国際平和研究所』のデータによれば、56基のディーゼルエンジンが中国に輸出され、この他に少なくとも26基が中国の駆逐艦に装備されている――とのこと。

ではなぜ、今回このようなことになったのかというと、中国へのエンジン輸出にあらためてアメリカ合衆国が反対したためです。

また、EU側でも対中国の姿勢を新たにしていますから、どうも中国がエンジンの供給を受けるのは望み薄です。

外信の報道によると、中国は激怒しており外交部が「EU禁輸措置はずっと前に下されたもので、現在のEUと中国の関係に不適合であり、修正されなければならない」と述べたとのこと。

タイの世論は「たっかいお金を支払ってエンジンのない潜水艦を買うなんて!」と沸騰したとのこと。

まあ無理もありません。

(吉田ハンチング@dcp)

広告
タイトルとURLをコピーしました