予想されていたことですが、現実になりそうです。
経営が傾いた『アシアナ航空』を救わないと!
事は、2019年に韓国『アシアナ航空』が経営難から身売りとなったことにまでさかのぼります。2019年末には『HDC現代産業開発』が買収することが決まっていたのですが、これが2020年のコロナ禍によって頓挫。
景気が悪くなって『HDC現代産業開発』が買収を取りやめたのです。
国策銀行『産業銀行』が主力となる債権団がなんとか支え続けて『アシアナ航空』をもたせましたが、いつまでもキャッシュフローの面倒を見るわけにはいきません。
そこで、『産業銀行』が描いた絵図が『大韓航空』との合併です。
↑『産業銀行』が描いた絵図。『大韓航空』と『アシアナ航空』を合併させて、両社参加のLCC(格安航空会社)3社も統合しようという計画
↑『大韓航空』と『アシアナ航空』合併までの資金計画(当時の構想)
ただし、これは当時から「可能なのか」という懸念が抱かれていました。
このような国際的な航空会社の合併には、主要国および関係国の公正取引委員会の許可が必要になるからです。寡占ともいうべき市場シェアを持つ企業が誕生されては困るからです。
上掲記事でご紹介したとおり、2020年の時点で「この合併は無理スジ」という観測が出ていたのです。
特に難敵は「EU」と「アメリカ合衆国」です。この2つの主要地域・国は恐らく認可しないだろう、と予想されていたのです。
その予想どおりの結末が訪れるかもしれません。EUが難色を示している――というのです。
EUは懸念を表明! 合併頓挫に直面か
2023年02月18日、『Bloomberg』に興味深い記事が出ました。以下に同記事から一部を引用します。
大韓航空がアシアナ航空を1兆8000億ウォン(現在のレートで約1900億円)で買収する計画が欧州連合(EU)の本格的な調査に直面している。
EUが競争上の懸念を表明した。
EUの行政執行機関、 欧州委員会は、買収によってEU地域と韓国間の「旅客輸送サービスで競争が失われる恐れがある」とし、貨物輸送分野でも他社が「統合会社に競争面で大きな圧力をかけにくくなりかねない」と警告した。
同記事によれば、EUの調査は07月05日まで延長されたとのこと。
また、EUの懸念に対して『大韓航空』は「合併が市場の顧客にプラスに働くと確信しており、欧州委との対話を継続し彼らの懸念に対処する是正措置を提出する」とメールで返信しています。
このようなM&Aは、認可が必要な国が1つでも反対すればおしまいです。まだ、難敵の「合衆国」が残っていますが、EUの否決によって『産業銀行』が描いた絵図は「合衆国承認の承認検討前」に頓挫するかもしれません。
思い起こされるのは『大宇造船海洋』の合併計画が、EUの反対によって頓挫したことです。『大宇造船海洋』は結局『ハンファグループ』によって買収されることになりました。
海に続いて空でも、合併計画は雲散霧消する可能性があります。一度目は悲劇、二度目は喜劇――などといいますが、果たしてどうなるのか、ご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)