2023年05月27日(現地時間)、アメリカ合衆国・デトロイトで「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会議が開催されました。
14の参加国は、サプライチェーン危機発生時に共同で対処することを核とする「サプライチェーン協定」を妥結しました。
IPEFは、アメリカ合衆国にとっては「TPPに代わるもの」で2022年05月23日に発足しました。
今回、14カ国は「サプライチェーンに悪影響を与える措置を自制し、投資の拡大と共同研究開発(R&D)などで供給先を多様化することに努力し、14カ国政府が参加する『サプライチェーン委員会』を設置する」としました。
その上で、委員会が各国の履行状況を点検する計画です。
また、サプライチェーンの安定化に不可欠な熟練労働者の育成と労働環境改善のため、各国の労働権関連の現状を把握し、改善事項を発掘するための「労使諮問機構」も構成することにしました。
そもそもIPEFは、「貿易」「供給網(サプライチェーン)」「インフラ・脱炭素(グリーン経済)」「税・反汚職」貿易(公正な貿易)という4つを柱としていたのですが、現在「脱中国して再構築だ」と最も注目されている「サプライチェーン」についての合意が(とりあえず)成立しました。
『IPEF』(インド太平洋経済フレームワーク)の参加メンバーは、
日本
オーストラリア
ニュージーランド
韓国
シンガポール
タイ
ベトナム
ブルネイ
マレーシア
フィリピン
インドネシア
インド
フィジー
の計14カ国です。上掲のとおり、中国を排除しており、このメンバー内でサプライチェーンを補完し合うことになったのは良い方向です。
中国はハミゴにされているので怒るかもしれませんが、自業自得というものです。
で、韓国。
尹錫悦(ユン・ソギョル)さんは、大統領選挙のときから「IPEFに参加する」としていたのですが、一応これがかなったことになりました。問題は「中国からの仕返し」です。
韓国メディアは「大丈夫だろう」ですが……
怒り狂った中国が韓国にどんな「断固たる措置」を取るか、です。
『韓国経済』に今回のIPEFの合意について記事が出ているのでご紹介します。記事から一部を以下に引用します。
(前略)
合衆国と友好国中心の「脱中国サプライチェーン」に拍車がかかるという分析が出ている。韓国としては、2021年に中国の輸出制限で国内物流が麻痺しそうになった「尿素水大乱」のようなサプライチェーンショックを最小限に抑える道が開かれたことになる。
産業通商資源部は同日、合衆国・デトロイトで開かれたIPEF閣僚会議で、韓国、米国、日本など14カ国がサプライチェーン協定を妥結したと発表した。
(中略)これにより、サプライチェーンの危機が発生した際に相互協力を要請し、代替供給源の把握、輸送経路の開発、迅速な通関などの緊急協力を受けることができる。
産業通商資源部は「韓国は特定国依存度が75%以上の品目が600を超えるなど、サプライチェーンの危機に脆弱だ」とし、「IPEFの危機対応ネットワークを活用すれば、短時間内に多様な性格の14カ国政府に代替供給先に関する情報などを要請し、協力も受けられる」と明らかにした。
(中略)
インド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)」は、合衆国が経済分野で中国を牽制するためにドライブをかける組織だ。
今回のサプライチェーン協定の妥結で、合衆国と友好国は「脱中国サプライチェーン」の基盤を整えた。
韓国も「第2の尿素水大乱」のような中国発のサプライチェーンショックを最小限に抑える手段を手に入れた。
しかし、IPEFに参加した14カ国のうち10カ国が「第1貿易国が中国」であるため、今回のサプライチェーン協定は対中国の圧力レベルは高くないという分析も出ている。
(後略)
韓国メディアは、これで「2022年に起きたような尿素大乱を避けられる」と書いています。自分が助けられることばかりを想定しているのが、いかにも韓国らしいところです。互助の取り組みであることをきちんと理解しているのでしょうか。
またぞろ「後頭部を殴られた」などと言い出さないのか、その点が非常に心配です。また、韓国が入っているということは、情報は中国にダダ漏れと見なければなりません。
今回のIPEFのサプライチェーン協定で興味深いのは、「デカップリング」や「デリスキング」といった言葉が盛り込まれなかったことです。
これは、東南アジア諸国が入っていることから、中国を直接刺激するような言葉が避けられたためと見られます。G7広島サミットでは「経済的威圧で他国に影響を与える行為に対抗する枠組みを構築する」と書かれて中国を怒らせたのに、今回は穏当です。
韓国はこれに安心するかもしれませんが、そうは問屋が卸さないでしょう。
「お前らの言ってる『一つの中国』原則は完全に口だけじゃないか」と、中国が非難するくらいですので、IPEFに進んで参加した韓国の(中国に対する)面従腹背な態度など見透かされていて当然です。
先にご紹介したとおり、中国は韓国を自由主義陣営国の中で「最も弱い環」と見ており、自由主義陣営国を分断するための楔に使うつもりです。そのために「韓国とは仲のいいフリ」もして、猫なで声も出します。
これで「中国は韓国に対してはそんなに怒ってないぞ」と韓国が誤解すると危ないです。
(吉田ハンチング@dcp)