韓国の造船業に暗雲が垂れ込めています。もっとも韓国造船業の暗雲は今に始まったことではありません。
薄利多売商売に自らシフトしたのが原因で、中国との安値叩き合いもあって非常に衰退しています。
現在の暗雲は、「①黒字にならない商売の構造」と「②人員不足」です。
①の方が商売の根本部分がおかしいという話なので、こちらをまずなんとかしなければいけないのですが、良い解決法が見つからないママに走り続けています。
ちなみに韓国の造船最大手の業績は2023年第3四半期で以下のようになっています。
2023年第3四半期単体
●『韓国造船海洋』
総売上:5兆112億ウォン
営業利益:690億ウォン
当期純利益:3,459億ウォン●『ハンファオーシャン』
総売上:1兆9,169億ウォン
営業利益:741億ウォン
当期純利益:2,316億ウォン
一応は営業利益で黒字になっていますが、ご注目いただきたいのは営業利益率です。
営業利益率
『韓国造船海洋』:約1.4%
『ハンファオーシャン』:約3.9%
『サムスン重工業』:約1.8%
経営が傾いて買収され、『ハンファオーシャン』となった旧『大宇造船海洋』だけはマシですが(通期では赤字です)、他の最大手2社は営業利益率が低く、「儲からない商売なんだなあ」という結果です。
ちなみに日本の『今治造船』は2023年07月31日に公示されたデータによると、以下のようになっています。
総売上:3,764.3億円
営業利益:152.1億円
当期純利益:62.0億円営業利益率:4.0%
韓国の造船企業は②の人員不足も深刻です。造船不況が国内の下請け企業がばたば倒れたこともあって、丸ごと1隻を韓国内で造ることがもはやできなくなってきています。
Money1でもご紹介したとおり、安価に受けてくれる中国の造船会社にブロックごとに発注してこれを組み立てるという方式にシフトしているのです。韓国は「組み立て強国」などと揶揄されることがありますが、それが造船にも及ぼうとしています。
『ソウル経済』が以下のように報じる記事を出しています。
(前略)
10日、業界によると、『現代重工業』は最近、国内で商船用ブロックの需給が難しくなると、中国の船体ブロック製造を手掛ける数社と接触し、船体ブロック生産の一部を任せる方案を検討している。『現代重工業』は1972年の創業以来50年間、国内協力会社からのみ商船用ブロックを供給されていた。
(後略)
そもそもなぜ人手不足なのかというと、造船不況のときに熟練した皆さんが職場を離れたのが一つ。これに「若い世代が造船業に入らなくなった」というのが追い打ちをかけています。
Money1でもご紹介したことがありますが、造船業は賃金がよい方ではなく、またきつい職場として知られているため若者が忌避しがちなのです。はなはだしいのは「夏は暑くて、冬は寒いからヤダ」などという声まであることです。
造船ジャックポットなんて記事が韓国メディアに出ることがありますが、それでも大儲けには至っていませんし、ジャックポットに慌てて人員を補充しようとしても急には集まりません。また、そもそも造船会社にお金がないので、現在では「良い給料」(競争力のある給料)を提示することができないのです。では、外国人を雇用できるかというと……熟練した職人となるには十年単位で時間がかかります。
ですので、収支の帳尻を合わせるためには「船体ブロックを安値受注している中国の会社に発注しよう」となってしまうのです。
早晩、韓国の造船業は本当に「組み立て屋」になってしまうでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)