『韓国銀行』は短期資金調達市場をこう見ている。PF問題は終わったわけじゃない

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日本ではあまり報じられませんが、韓国は非常に不景気です。韓国の経済成長エンジンの一つ(内需を拡大する唯一のエンジン)である「不動産市場」が低迷していることからも明らかで、建設会社は流動性に問題を来したところからバタバタと倒れています。

韓国第16位の施工能力がある(とされる)大手『泰栄テヨン建設』が事実上破綻してワークアウト(再生手続き)に入ってたことは先にご紹介したとおりです。

韓国建設会社「不振・不景気」・大手『泰栄建設』資本蚕食「-5,826億」。株式は本日から取引停止!
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問題は、韓国の建設会社の短期資金が回らなくなっているのではないか――という点で、PF(プロジェクト・ファイナンス)問題と密接に関係して懸念されています。

大丈夫なのか?――なのですが、2024年03月『韓国銀行』が「金融安定状況(2024年3月)報告書を出しており、その中で短期資金調達市場についての考察があります。

以下が該当部分です(面倒くさい方は飛ばしていただいても大丈夫です。ご注目いただきたいのは最後の結論部分です。

泰栄テヨン建設』のワークアウト申請以降の短期金融市場の動向および評価

1.短期金融市場は、『泰栄テヨン建設』事案(23.12.28ワークアウト申請)以降も概ね安定している。

主な短期市場金利は、『泰栄テヨン建設』の構造調整推進問題にもかかわらず、年初のMMF資金流入、機関投資家の資金執行再開など、友好的な受給案件に支えられて下落し、基準金利に対するスプレッドも今年に入ってから概ね長期平均を下回っている。

発行市場でも、年末の財務比率管理などのために純償還されたCP(短期社債を含む)が民間企業CPを中心に純発行に転換するなど、資金調達が円滑に行われている。

2.PF-ABCP市場では、年初に『泰栄テヨン建設』関連の不確実性などで拡大した不安心理がワークアウト手続き開始(24.1.12)以降、やや緩和された。

しかし、優良・非優良物間の信用差別化の流れが続いており、一部の建設会社保証物などの場合には、借り換えの難しさ、高い発行金利水準の継続などによる困難が続いている。

3.このように、『泰栄テヨン建設』のワークアウトの短期金融市場への影響は現在まで限定的なレベルに留まっている、

これは、市場が同事案を既に認識していたことに加え、内外の金融環境も友好的に動いたことに起因するものと思われる。

しかし、不動産景気の低迷の持続、高金利・高コストによる事業性の低下などで不動産PFの不振が拡大する可能性に対する市場の懸念があるため、今後のPF市場の展開状況と短期金融市場への影響を綿密にチェックしていく必要がある。

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「『金融安定状況』(2024年3月)」

『韓国銀行』は、『泰栄テヨン建設』が事実上破綻したが、短期資金調達市場には大きな波乱はなかった――としています。そして、現在もおおむね金利は安定している、とも。

これは以下のグラフからも分かります。まず、主要な短期金利です。

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「『金融安定状況』(2024年3月)」

泰栄テヨン建設』がワークアウトを申請した後でも極端に金利が上昇したという傾向はありません。次にCP(Commercial Paperの略:約束手形の一種)です。

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「『金融安定状況』(2024年3月)」

『韓国レゴランド』のABCP(Asset-Backed Commercial Paper:資産担保コマーシャルペーパー)が償還不可となった2022年10月には異常な急騰を見せましたが、以降は金利も安定。2024年01月には、公社・公団の発行するCPの金利は上昇に転じていますが、他の発行主体のCPは低下傾向です。

ただし、『韓国銀行』が述べていますが、これは平均値であって発行主体によっては、市場では高い金利をつけないと資金を調達できないCPもあります。これは、企業のファンダメンタルズによるわけです。

「信用差別化」です。「一部には借り換えの難しさ、高い発行金利水準の継続などによる困難が続いている」わけです。

また、「不動産景気の低迷の持続、高金利・高コストによる事業性の低下などで不動産PFの不振が拡大する可能性に対する市場の懸念がある」としているとおり、PF問題が拡大する懸念は今もあるのです。

「04月10日以前の危機」はないでしょうが、PF問題絡みはまだ落着したわけではありません。

(吉田ハンチング@dcp)

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