経済が傾いてもうどうしようもないので、とにかく外国からの資金を入れてもらいたい中国。
G7の中で唯一「一帯一路に参加します」だったのがイタリアですが、「やっぱ、やーめた」となり、2023年12月に中国に対して「一帯一路から離脱しようと思う」と中国政府に正式に通告しました。
欧州の切り崩しのテコにしようとしていたイタリアが華麗に去ったので、中国は毒づくやら(「あんた損しますよ」主旨の発言etc.)すかすやらで反発しました。
しかし旧には復さず、それどころか欧州が中国の過剰生産性に文句をいい、中国と欧州の関係は悪化しています。
2024年07月29日、イタリアのジョルジャ・メローニ首相が訪中し、毎度おなじみの迎賓館で習近平総書記との階段を行いました。
上掲写真を見ていただければ分かるとおり、独裁者・習近平さんのみならず、王毅外相(外交部長官)、李強国務院総理(首相)など中国外交・経済関連の首脳がそろいました。いかにこの会談に力が入っていたかが分かります。
この会談について、中国外交部がプレスリリースを出しているのですが、これが面白い内容です。以下に一応全文を和訳します。
ただし、別に全文読まなくても大丈夫です。面倒くさい方は飛ばしてください。
2024年07月29日午後、国家主席の習近平は北京の釣魚台国賓館で公式訪問中のイタリア首相ジョルジャ・メローニと会見した。
習近平は、中国とイタリアは古代シルクロードの両端に位置しており、両国の長い友好関係は東西文明の交流や人類社会の発展に重要な貢献をしてきたと述べた。
平和協力、開放包容、相互学習、互恵共栄を核心とするシルクロード精神は、両国の共通の財産であると強調した。
現在、世界は急速に変化しており、各国が相互に通じ合い、団結すれば共に進むことができ、閉鎖や分裂すれば後退することになる。
中伊両国はシルクロード精神を保持し、歴史的視点、戦略的高さ、長期的視野から二国間関係を見直し、安定した関係を築いていくべきである。
習近平は、中伊関係の健全で安定した発展が、両国と両国民の共通利益に合致していると強調した。
現在の国際情勢が変化している中で、中国はイタリアとの関係を重視し、発展させたいという意欲を持ち続けており、両国関係の協力共栄の本質は変わっていない。
また、両国民の友好関係も変わりません。双方は友好な交流の伝統を受け継ぎ、相互理解とそれぞれの発展の道を尊重し続けるべきである。
中伊両国は産業の優位性が補完し合い、互いに機会を提供している。
中国共産党の第二十回三中全会が終了したばかりであり、中国は高水準の対外開放を進め、中国式現代化に強力な推進力を注入し、イタリアを含む各国との協力拡大に新たな機会をもたらすことを目指している。
中国側はイタリアとの経済貿易、投資、産業製造、科学技術革新、第三国市場などの伝統的な協力を最適化し、新興分野である電気自動車や人工知能での協力を模索することを望んでいる。
また、中国はイタリア企業の中国投資を歓迎し、イタリアの優れた製品の輸入を増やすことを希望しており、イタリア側にも中国企業がイタリアでの事業を展開する際に公平、透明、安全、非差別的なビジネス環境を提供してほしいと考えている。
双方は文化の相互学習の成果を重んじ、文化の伝承と革新を双方向に促進し、両国の国民間の親近感を深めるべきだ。
中国側はイタリアが2026年の冬季オリンピックを開催することを支持しており、中国市民がイタリアを訪れる際のビザ取得手続きの利便性を向上させることを望んでいる。
習近平は、経済のグローバル化時代において、グローバルなサプライチェーンと産業チェーンの開放的な協力を維持することが、共に発展するために不可欠であると強調した。
中国は平和発展の道を歩み、覇権を追求することはない。
各国と発展の機会を共有したいと考えています。イタリア側が中国の発展理念を理解し支持し、中国と欧州の対話と協力を促進し、中欧関係の積極的かつ安定した発展に建設的な役割を果たすことを期待しています。
<<ここからメローニさんが述べたこと(と中国側が言っていること):引用者注>>
メローニ首相は、2022年11月のバリ島での会談後、招きに応じて中国を訪問したことに喜びを感じていると述べた。今年はイタリアと中国が包括的な戦略的パートナーシップを築いてから20周年、そしてマルコ・ポーロの没後700周年に当たる。イタリアと中国は文明古国として、互いに尊重し合い、相互に学び合ってきた。
現在の国際情勢は深刻な変化を迎えており、中国は重要な大国として、グローバルな課題に対処する上で不可欠な役割を果たしている。
イタリア側は中国の国際的な地位と役割を重視し、シルクロード精神を受け継ぎ、より緊密で高いレベルのパートナーシップを構築し、イタリアと中国の包括的な戦略的パートナーシップに新たな章を開き、世界の平和と進歩に新たな貢献をしたいと考えている。
イタリア側は「一つの中国」政策を支持し、中国と対話と協力を強化し、より多くの可能性を探り、両国の経済貿易、投資、電気自動車、人工知能などの分野での協力を深め、人文交流を緊密にし、より多くのイタリア製品が中国市場に進出するよう促進したいと考えている。
イタリア側は「デカップリング(分離)とサプライチェーンの断絶」や保護主義に反対し、欧州と中国の関係の深化と具体化に向けて積極的な役割を果たしたいと考えている。
<<メローニさんの発言ここまで>>双方は、『中華人民共和国とイタリア共和国の包括的戦略的パートナーシップの強化に関する行動計画(2024-2027年)』を発表した。
この会談には王毅外相も参加した。
お気付きになったでしょうか? 「一帯一路」という言葉が全くでてきません。
代わりに「シルクロード精神」という言葉が登場しています。
「何それ?」なのですが、「一帯一路」構想に言及せずにイタリア-中国の関係が密になることは必然だ――とするために無理やりひねり出したようです。
一応シルクロードは長安(現在の西安)からローマまで――というのが基本理解ですから、シルクロードと言いたくなるのは分かります。
しかしながら、中国企業がイタリアに進出する際に「公平、透明、安全、非差別的なビジネス環境を提供してほしい」――などと述べています。
・公平さ
・透明性
・安全性
・非差別的なビジネス環境
は、中国市場のどこにもありません。
習近平さんは、自国が外国企業に対して全く提供していないものを外国には、いけしゃーしゃーと要求しているのです。
大笑いな言説で、これだから中国は嫌われますし、外国は中国に資金を投入などしなくなったのです。このように中国の独裁者・習近平さん自らが出て「お金入れてくれ」と言っても、もはやだまされる企業などありません。
だまされるのは二代ばかの河野洋平・太郎とその仲間たちぐらいのものです。日本企業の皆さんは決して二代バカの口車に乗ってはなりません。また、河野太郎を決して首相にしてはいけません。
ちなみに、ローマ帝国はシルクロード貿易によって、莫大な利益を上げていました。どうやってか?というと「関税」です。
商品の輸入について25%の関税を課していたのです※。
※輸入だけではなく輸出にも関税を課していました。つまりローマ帝国は出入の両方で関税収入がありました。
井上文則先生の推算によると、4億セステルティウスの関税収入があり、これは150年頃のローマ帝国の国家予算の4~5割に匹敵する規模なのです。
メローニ首相は「イタリア製品が中国市場に進出するよう促進したい」と述べていますが、ブランド物などならともかく、一般製品が中国市場で勝ち残るのは無理です。
ほとんど全てが国営企業(この時点で中国は『WTO』(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)加盟国の資格がありません)のような中国企業と競争しても絶対に勝てません。
ですから、イタリアは暗黒大陸のような中国市場に進出などせず、むしろシルクロード精神を発揮し、ローマ帝国の故事に倣って、中国製品の輸入について莫大な関税をかけてみてはいかがでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)