先にご紹介した「韓国から輸出されたFA-50が12機のうち11機が飛行不能となっていた件」です。
上掲の記事では、韓国メディアの報道を引いてご紹介したのですが、ポーランドメディアを当たってみたところ、より複雑な事態となっていたことが分かりました。
例えば、2024年04月15日にはポーランドメディア『ONET』に以下のような記事が出ています。和訳してみます。
「FA-50戦闘機が地上に留め置かれる」韓国製機体に関する大きな問題
最新のポーランド軍の訓練・戦闘機である韓国製のFA-50は、数カ月間地上に留め置かれていました。
これは、前国防相のマリウシュ・ブワシュチャクによって締結された契約に起因する管理の不備や誤りが原因でした。
韓国の戦闘機に関する問題は他にも多く、パイロットたちは「現在、この機体は空軍にとって利益よりも問題を引き起こしている」と語っています。
FA-50戦闘機は地上に留め置かれた
2022年09月、当時の国防相マリウシュ・ブワシュチャク氏は、アンジェイ・ドゥダ大統領の立ち会いのもと、ミンスク・マゾヴィエツキで48機の軽戦闘機FA-50を30億ドルで購入する契約を締結しました。
専門家は、「ブワシュチャク氏は政治的成功を急ぎたがり、その結果、多くの問題が生じ、パイロットの訓練に大きな支障が出て、今後の使用の見通しも不透明になっている」と述べています。
契約の際に急いでいたため、ポーランド側はパイロット用の緊急脱出シミュレーターを注文し忘れ、さらにFA-50戦闘機に必要な武装も用意できていない状況にあります。
2024年03月中旬、韓国で購入したFA-50戦闘機が約3カ月の停止を経て再び飛行できるようになったとの情報が入ってきました。
しかし、ポーランド国防省は「FA-50の飛行が正式に停止されたわけではなく、韓国側が追加書類の提供に時間を要したため」と説明しています。
以前、ポーランド軍参謀総長のヴィエスワフ・ククワ将軍は、公にFA-50戦闘機の飛行が停止されたことを認めており、その契約が改善の必要があると発言しています。
(後略)⇒参照・引用元:『ONET』「Samoloty FA-50 były uziemione. Ogromne problemy wojska z koreańskimi maszynami」
これが04月時点の記事ですが、12機中の11機どころか「全機が数カ月間、飛行停止」になっていたと報じられています。
理由はややこしい話で――ポーランド側が契約を急ぎすぎて、パイロットが緊急脱出する際に利用するイジェクションシート(射出座席)のシミュレーターについての契約をし損ない、また武装について何も考慮していなかったため、「何の武装もない状態」になっている――とのこと。
また、なぜ飛行停止になったかというと――、
(前略)
第23戦術航空基地に配備されたFA-50戦闘機に搭載された射出座席の爆発物に関する認証が欠如していたことが直接の原因でした。これにより、昨年の秋にFA-50戦闘機が認証なしで飛行していたことに対して疑問が浮上しています。
(後略)
――と書かれています。
戦闘機の射出座席というのは、ロケットモーターなどを使ってパイロットの座席を打ち出しますが、これについての認証が抜けていたとのこと。しかし、それならそれで、なぜ2023年に認証なしで飛行していたのだ――と疑問を呈しているのです。
「危ないなあもう」という話です。
武装が付かないので中古市場を当たるポーランド
次に、ポーランドメディア『Money.pl』の2024年09月12日付けの報道です。
大問題な箇所を以下に和訳して引きます。
(前略)
戦闘装備なし副大臣の説明によれば、ブラスチャクが発注したバージョンでポーランドに到着した12機は、「恐らく世界初の非戦闘訓練機」である。
副大臣は、契約には戦闘機用の武装の購入は含まれていなかったと説明した。
「その結果、私たちは訓練はするが戦闘はしない戦闘訓練機を手に入れたのです」。
トムチク氏は、軍需庁と国防省はFA-50用の武装を提供するために最善を尽くしていると断言したが、こうした交渉は航空機の選定と購入の前に行われるべきだった。
(中略)
FA-50の武装はもう生産されていない
さらに国防副大臣は、FA-50用の武装がもはや生産されていないと警鐘を鳴らした。
「FA-50用の兵装が生産されていないのであれば、この機体用の兵装を購入するのは難しい」 と強調した。
同氏は、軍備庁は、訓練や戦闘モードで航空機を運用し、訓練を行うために、中古の軍備をリースまたは購入する機会を市場で見つけようとしていると付け加えた。
これに関連してトムチク氏は、国防省が最高会計検査院に「意思決定者自身に関するこの契約の詳細な分析」を依頼することを明らかにした。「つまり、そもそも武装が購入されていない戦闘訓練機を購入するという決定についてである」と彼は説明した。
(後略)⇒参照・引用元:『Money.pl』「Awantura o samoloty dla Polski. “To jest jakiś absurd”」
このFA-50には武装がないよーん――という話で、「中古の軍備をリースまたは購入する機会を市場で見つけようとしている」そうです。
↑ポーランドに到着したFA-50ですが現地では「どうすんだコレ」状態になっています。
韓国の『KIA』は、ポーランドと契約した「ポーランド用にカスタマイズした『PL』版のFA-50」をあと36機送りつけるつもりですが、ポーランドからすると「ちょっと待ってくれ」ではないでしょうか。
ポーランドメディアの報道を見ても、やっぱり「安物買いの銭失い」だったのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)