2024年12月29日、韓国の務安空港で死者179人(生存者2人)という、航空史に残る痛ましい航空事故が起こりました。
原因解明の要となるFDR、CVRの両方ともクラッシュ4分前には停止しており、最も重要な箇所が記録されていなかった――ことが判明しています。これでは正確な事故原因は永遠に分からないのではないか、という懸念も出ています。
そんな状況であるというのに、韓国メディア『朝鮮日報』が、事故機737-800を製造した『Boeing(ボーイング)』社に原因あったのではないかと言わんばかりの記事を出しています。
記事タイトルは、「ボーイング、技術を無視し『数字』に執着した結果、信頼も利益も失う イ・ヨンソンの海外企業ストーリー〈5〉 『済州航空』務安惨事の機種を製造したボーイングの翼なき墜落」というものです。
記事から一部を以下に引用してみます。
(前略)
2024年12月29日、全羅南道・務安国際空港(ムアン空港)で発生した済州航空旅客機事故機は737-800で、これを生産したのはアメリカ合衆国航空宇宙大手の『ボーイング』社だが、2024年中、事故航空機を作った場所としてイメージダウンしている。2024年は100年を超える『ボーイング』の歴史の中で最も悲惨で恐ろしい時間だった。
年明けから予兆があった。01月05日(現地時間)、アラスカ航空所属の737マックス旅客機で、離陸直後に胴体の一部が外れる事故が発生し、窮地に陥った。
4,900m上空で非常口カバーが外れて機体に穴が開き、乗客の携帯電話や帽子が飛び散り、酸素マスクが降りてきた。人的被害はなかったが、「アメリカの誇り」である『ボーイング』の墜落を示す事例だった。
03月には、合衆国オレゴン州ポートランド国際空港を離陸した737-800旅客機が約5,000m上空で外部パネルがはがれ、緊急着陸する事件が発生した。
04月には、『デルタ航空』所属の767旅客機がニューヨークJFK空港を離陸した直後に、緊急脱出用のスライドが分離・落下して回航する事故があった。
05月には、『フェデックスエクスプレス』所属の767貨物機がトルコ・イスタンブール国際空港で前輪が下がらず、緊急着陸した。
さらに、09月には16年ぶりの労働組合のストライキで、航空機の製造と引き渡しに支障をきたした。
航空機の安全性論議でストライキの余波で新型航空機の開発まで遅れ、『ボーイング』は第3四半期(07~09月)だけで61億7,400万ドル(約9兆1,011億ウォン)の赤字を記録した。
これにより、『ボーイング』は全従業員の10%規模である17万1,000人の構造調整計画を明らかにした。
ケリー・オットーバーグ最高経営責任者(CEO)は2024年11月20日の全体会議で「『ボーイング』の何が問題なのかという議論にみんな疲れている状態」とし、「文句を言わずに当面の課題に集中しよう。今が最低点だ」と強調した。
しかし、1ヵ月後、搭乗者181人のうち179人の命を奪った『済州航空』務安空港事故が発生した。
(後略)
2024年は『ボーイング』にとって災厄となる年だったとし、01月には胴体の外板がはがれる事故、04月には緊急脱出用スライドが機体から分離する事故、05月には前輪が下がらず……と数え上げて、最後に「搭乗者181人のうち179人の命を奪った『済州航空』務安空港事故が発生」と書きます。
これでは、務安空港での事故が『ボーイング』に責任があるかのようです。
繰り返しますが、まだ事故の原因は明らかになっていません。ヒューマンエラーの可能性だってあるのです。
ミスリーディングを誘う記事を出すのはやめたらいかがでしょうか。
また、コンクリで固めた頑強なローカライザーを設置したのは、明らかに韓国当局が責任を負うべき問題です。クラッシャブルなものにしておかなかったのは、誰が設置責任者はともかく「韓国」に起因するドメスティックな、そして致命的なエラーでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)