中国では「お寺」は商売です。中国の皆さんは、現世利益を求めて参拝し、賽銭を投じます。
お寺にとって賽銭は売上です。人気のあるお寺ほど賽銭が集まり、売上は莫大なものになります。なにせ上海市が静安寺などの寺院から100億元を借りた――という報道が出るほどなのです。

Money1でもご紹介したことがありますが、中国の僧侶というのは(本当に仏教を信じ修行に励む人が一部あったとしても)ほとんどが生臭坊主です。
八戒ばかりだといっても恐らく過言ではありません。

↑ギラギラで全然ありがたくない外見の上海の静安寺。実は三国時代から続く由緒あるお寺。あの呉の孫権の命によって247年に西域出身の康僧会によって建てられた――そうです。
中国の生臭坊主で最も有名なのは、あの少林寺の住持(住職)・釈永信さんです。

↑中国で最も有名な僧侶といえば、恐らく少林寺の釈永信さん。高級車を乗り回し……という形容がそのまま当てはまる人物です。
体型が太っていることや、金銭的に贅沢な暮らしをしているという印象から、「猪八戒(八戒)」や「豚」といった蔑称で呼ばれることがあります。
「猪八戒」は『西遊記』に登場する俗欲が強く、食欲・色欲に溺れるキャラクター。中国では太っている人物を侮蔑的に呼ぶ際によく用いられます。
特に、釈永信さんがロレックスの腕時計を身に着けていたり、外国製高級車に乗っていたことが報じられたことなどから、出家者にふさわしくない生活態度だと批判され、こうした呼称が使われるようになりました。
金使いが荒いだけではありません。釈永信さんには私生児スキャンダルまであります。
傑作なのは、中国共産党から目をつけられたことです。
少林寺は年間「数億元」を稼ぐ!
釈永信さんは、少林寺の住持であるだけでなく、中国初のMBA学位を持つ僧侶でもあります。
彼が「少林寺」の看板をいかにボロ儲けしたのか――は中国メディアに情報があふれています。
彼は1998年にはすでに「河南少林寺実業発展有限公司」(現在はすでに登記抹消)を設立し、「仏門ビジネス帝国」の構築を開始しました。
釈永信さんはかつて「河南少林寺実業発展有限公司」と「少林文化研究所」を設立し、「少林学」というコンセプトを提唱。
霊芝茶、禅修用具、仏教関連の文化創造商品などの開発を主導し、2020年に開設した淘宝ショップ「少林歓喜地」は、年間売上が2,300万元に達しました。
2004年には「少林薬局」をリブートし、中医(中国伝統医学)の秘伝処方と無形文化遺産の技術を組み合わせて、活絡膏(塗り薬)や霊芝茶などを商品化。
2019年には少林薬局は売上が8,000万元を突破しました。
2021年には動画アプリ「抖音」に進出。初のライブコマースで500万元を超える売上を記録。
同時に「少林寺」は景勝地としても有名ですらから、べらぼうな観光収入があります。
最新データによれば「少林景区」の入場料は1人当たり「80元」、学生は「40元」となっています。このチケット代のほかにも、現地パフォーマンスやロープウェイなどのオプションサービスも展開。
オプションコースを含めると観光客1人当たりの支出は「400元」を超える場合もあるのです。
少林寺は、長年にわたり河南省で最も人気のある観光地の一つでした。今となっては信じられないかもしれませんが、少林寺は「禅宗の祖庭」と呼ばれ、かつ中国武術の重要な発祥地です。
観光シーズンには1日あたり2万人以上を受け入れることもある――とのこと。
2025年の直近来訪者数は公式には発表されていませんが、過去のデータを参考にすると年間来訪者数は300万~500万人に達すると推定されています。
この数字が正しいのであれば、入場料収入だけでも年間1.2~2億元になるのです。
これまで述べてきたとおり、少林寺が行っているのはただの商売であって、多岐にわたる商売を展開するテーマパークのようなものです。
まさに「破戒僧」というべき少林寺の釈永信さんですが、
プロジェクト資金や寺院資産の流用・横領、仏教の戒律に違反して複数の女性と不適切な関係を持ち私生児をもうけた疑い
――などで、中国共産党の複数の部門による合同調査を受けることになりました。
2025年07月28日、『中国仏教協会』は――、
『河南省仏教協会』から「釈永信の戒牒抹消に関する報告書」を受理した。関係規定に基づき、当会は釈永信(俗名:劉応成)の戒牒を抹消することに同意する。
――と公告を出しました。
(吉田ハンチング@dcp)






