これだからアメリカ合衆国は面白いのです。
合衆国連邦巡回区控訴裁(Federal Circuit)が、トランプ大統領がIEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠に課した「相互関税」など大半の関税は「違法」と判断しました。

↑トランプ大統領がノリノリで公表した相互関税は「違法」と判断されました。

↑PDFで127ページもある文書ですが、これが最初のページ/スクリーンキャプチャー
この判決で、Federal Circuit(合衆国連邦巡回区控訴裁/大法廷:7–4で評決)は――、
IEEPAの「輸入をregulate(規制)する」権限というのは、大統領に関税そのものを新設・上乗せする包括的権限を与えるものではない。
少なくとも本件のような世界中のほぼすべての貨物に、期間・上限が実質無制限の関税を課すことは認められない
――と判断を下しました。
よって、トランプ大統領がIEEPAを根拠に発した5本の関税関連の大統領令(Executive Order:通常EOの後に通し番号を付けて区別する)は権限逸脱で無効とされました。
これは、『CIT』(合衆国際貿易裁判所)が05月28日に違法と判断したのを控訴審が支持した形になります。
ただし、『CIT』の「全国的・恒久的差し止め」は最高裁のガイダンスに照らし過剰として撤回。
差し止めの範囲や形式は下級審に差し戻して再検討させる――としました。
Cunningham判事他の併記意見が書かれており、それによれば多数意見に全面賛同しつつ、「IEEPAはいかなる関税についても実施する権限を有していない」と踏み込んで明言しました。
「関税の“課税”はIEEPAの範囲外だ」としたのです※。
※ただし、aranto判事、首席判事Mooreらは「IEEPAは緊急時の広範な対外権限を与えるもので、その中にじゃ関税による輸入規制も許容される」と反対意見を表明しています。
この判決で違法とされた「5本」というのは、大統領令――
EO 14193
EO 14194
EO 14195
EO 14257
EO 14266
――を指します。前者3本は“麻薬・越境対策”を理由にカナダ・メキシコ・中国を対象とする麻薬対策関税=Trafficking Tariffs、後者2本は全世界向けの“相互関税”=Reciprocal Tariffsとその改定(中国向け大幅上げなど)です。
ご注意いただきたいのは、今回「違法」と判断されたのは、IEEPAを根拠に発した5本の関税関連大統領令だけだ――という点です。
一方、232条・301条・201条等に基づく関税については(現在のところ)影響はありません。
この後、どうなるかですが――「トランプ政権は控訴する」と見られます。
連邦巡回区控訴裁は10月14日まで「mandateを保留」しました。
つまり、この日までは『CIT』への差戻しは動きません。政府が10/14までに最高裁へ上告すれば、その審理が終わるまで保留が続く可能性が高い――です。
多くのメディアが「違法判決は出たが、とりあえずは現状維持」と書いているのは、そういう理由なのです。
(吉田ハンチング@dcp)






