
『TIME』誌が、韓国大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)さんのインタビュー記事を掲載しました(アジア版・2025年9月29日号)。
「President Lee Jae-Myung’s Plan to Reboot South Korea」(李在明大統領は韓国をリブートする)というタイトルです。

↑ちなみに文在寅さんも『TIME』誌の表紙を飾ったことがあります。2017年05月15日号(アジア版)です。このときの見出しは“The Negotiator”でした。
2025年09月18日、韓国の大統領室が李在明(イ・ジェミョン)さんのインタビュー記事を全文引用して公開しました。以下です。
↑「なんだかなあ」な李在明(イ・ジェミョン)さんの写真。李在明(イ・ジェミョン)が就任初日に思い描いていた姿とは違っていた。
06月03日に韓国大統領に当選したのち、翌朝、新たな職場となるソウル中心部のオフィスに李のスタッフが到着すると、部屋にはごみが散乱し、机にはモニターはあるもののコンピューターはなく、すべて隅に積み上げられていた。
ドアの鍵を開けることや、基本的な文房具を見つけることさえ苦労した。
「非常に忙しく、混乱した時期だった」と、就任後ただ一つの欧米メディアとのインタビューで、61歳の李はTIMEに語る。
「事前に多くの準備をしてきたと思っていましたが、十分ではなかった」
この混乱の背後にいたのは、失脚した前任者、尹錫悦(ユン・ソギョル)だった。
彼が12月に発した戒厳令の宣言により、5,000万人のこの東アジアの国は6カ月にわたる政治的まひに陥り、尹の弾劾へ、そして解散総選挙を経て李の当選へと至った。
就任からわずか100日余りで、新たな指導者は迅速に動き、初日に直面した混乱は遠い記憶のように思える。
世界で最も人口密度の高い都市の一つ、ソウルでは、過熱した住宅市場を沈静化するため、物件購入向け住宅ローンに6億ウォン(43万ドル)の上限を課した。
一方、新たな労働法は、ストライキを行う労働者の法的責任を軽減した。
さらに、所得に応じて110~330ドルの範囲の現金バウチャー、総額約100億ドルが、地域の事業を後押しするために全ての市民に配布された。
「私の最大の成果の一つは、韓国の国内政治状況が安定したことだ」と彼は言う。
国内での数々の行動にもかかわらず、おそらく彼にとって最大の挑戦は対外的なものだった。
尹の戒厳令宣言によって引き起こされた混乱のため、韓国はトランプ政権との新たな通商協定の交渉で他国より半年遅れることになった。
ソウルとワシントンは2012年以来自由貿易協定を結んでおり、昨年、韓国は合衆国に347.4億ドル分の自動車を輸出した——これは同国の自動車輸出の約半分を占めるが、トランプ政権が25%の関税を課したことでこの数字は急落した。
07月31日、李は関税を15%へ引き下げる交渉をまとめる代わりに、合衆国への3,500億ドルの投資とその他の譲歩を約束した。
それは極めて重要な節目であり、停滞した経済を再活性化するという李の計画の中心でもある。
サムスン、現代、自動車、LGといった世界的企業の本拠である韓国は、数十年にわたり技術の最前線に立ってきたが、近年は締め付けの強い規制環境、人口動態の圧力、中国からの熾烈な競争のために運勢がしぼんでいる。
長年の着実な減速の末、韓国のGDPは2024年にわずか2%の成長にとどまり、アジア太平洋地域の平均の半分以下だった。
科学技術への支出をほぼ20%引き上げた李は、「スーパー・イノベーション経済」を創り出すことで状況を好転させたいと考えている。
彼の政府は、今後5年間で715億ドルを投資し、韓国を世界のAI上位3か国の一つに変革するという。
さらに07月には、テスラが、テキサス州にあるサムスンの新しい半導体ファウンドリーでAIチップを生産するため、165億ドルの契約に調印した。
李は、地政学的に韓国を東西の「橋」に位置づけたいと考えている。
李の進歩系・『共に民主党』の指導者たちは、伝統的には中国に近く、かつての宗主国である日本に敵対的で、合衆国とは距離を置いてきた。
だが李は、あえてワシントンへ向かう途上で東京を初の外遊先とし、隣国同士の17年ぶりの共同声明で、日本の首相と「パートナーとして」協働することを誓った。
李の行動は韓国を再起動させることを意図したものだ。
西側は、彼の国を、最先端の技術や「KPop Demon Hunters」のような時代精神を形作る文化現象で捉えるかもしれないが、実際のところ韓国は先進国の中で出生率が最低、自殺率が最高、若年失業率が最高という問題と闘っている。
李は賭けの大きさを冷静に見据えている。韓国は「非常に深刻な危機」にある、と彼は言う。
「これらの問題に対処するには、経済を成長軌道に戻し、国民のための機会を増やす必要があります」
彼の売りは、韓国の繁栄を確保し、敏感なサプライチェーンにおける役割を高めることが、地域の安全保障にも資する、というものだ。
10月、韓国は20年ぶりにアジア太平洋経済協力会議(APEC)を主催する。
李は、米中両首脳が出席予定のこのイベントが、韓国のアジアの最前列への復帰を促進することを期待している。
しかし、針の穴を通すのは容易ではない。
李がソウルでTIMEと向き合ったその同じ日、600マイル足らず離れた北京では、中国の習近平国家主席が、第二次世界大戦終結80年を記念するため、ロシアのウラジーミル・プーチンと北朝鮮の金正恩を迎えていた。
ほかにも、イラン、ベラルーシ、ミャンマーの指導者らが参列し——西側メディアにより「動乱の枢軸」と呼ばれた寄せ集めの顔ぶれ——合衆国主導の秩序に対する明確な拒絶を示した。
「中国は私に出席してほしかったのだと思いますが、私はそれ以上は尋ねなかった」と李は笑う。
このような背景のもと、批評家たちは、李は伝統的同盟国である合衆国に近づき過ぎているのではないかと指摘する。
しかし、ワシントンが引き続き信頼できるパートナーであるのかどうかについても疑問がある。
少なくとも、09月04日に合衆国ジョージア州の現代自動車—LGの車載電池工場で、ICE(移民・関税執行局)当局者によって韓国人労働者300人以上が拘束された件を受けて、李の外務省が「懸念と遺憾」を表明したことが、その一因である。
しかし李は、ホワイトハウスとの関係を強化することで、韓国はこの地域で「交流と協力の橋」としてうまく立ち回れると主張する。
「新たな世界秩序の中で、また米国を中心としたサプライチェーンの中で、私たちは米国とともに立つつもりだ。
しかし同時に、中国を刺激しないよう、彼らとの関係を管理する必要がある」
李は認める「韓国が、二つの異なるブロックの間の戦いの最前線になってしまうリスクがある」と。
李にとって、困難は見知らぬものではない。
韓国東部の農村で貧しい農家の7人兄弟の5番目として生まれた彼は、小学校まで片道2時間を毎日歩いて通い、その後家に戻って畑を耕した。
李は13歳で学校を辞め、年齢を偽って工場で働いた。
そこでは怪しげな経営者たちがしばしば労働者の賃金を差し止めた。
ある職場では、プレス機で手首を押しつぶされ、そのけがにより公式に障害者と認定された。
絶え間ない痛みに苦しむ若き李は、自殺を図ったことさえある。
そのどん底から国家の最高職までの上昇について問われると、李ははにかみながら笑みを浮かべる。
「死ぬのは難しかった。死ねないのなら、より良く生きてみてはどうだろうか?」
朝鮮戦争後、世界で最も貧しい国々の一つから2020年には世界9位の経済へと(現在は13位)成長した自国と同様に、李の人生も目覚ましい反転の局面を迎えていた。
正式な中等教育を受けていなかったにもかかわらず、彼はロースクールに合格し、卒業直後に国家試験(司法試験)に合格した。
人権・労働権の案件に没頭する時期を経て、彼は政治に入り、まず城南市長、その後に京畿道知事を務めた。
2022年には大統領選に出馬したが、尹に0.7%差で敗れた。
今ようやく職に就いた彼は、経済の向かい風に直面している。
ぱっとしない成長に加え、韓国の国家債務は昨年、9,300億ドルに急増し、彼が自国をAI超大国へと変革しようとする野心に疑問を投げかけている。
来年度予算には、AI向けに特化したプロセッサーであるGPU15万基の調達が盛り込まれている。
しかし、現在の需要に対応するのにも苦心している韓国の老朽化した電力網が、李の野心に追いつけるのかは明らかではない。
李はまた、物議を醸す側近を赦免したことや、開城工業団地の2016年の閉鎖について正式に謝罪したことでも批判を招いている——そこは、韓国の工場が国境を接する地域で北朝鮮の労働力を利用できる場所だった。
韓国の当時の朴槿恵大統領は、北朝鮮の4回目の核実験に対応して操業停止を決定したが、新たな声明は北朝鮮のいかなる責任も明確に免責するものであり、保守派からは金政権への屈服だと位置づけられている。
これらやその他の要因の組み合わせにより、李の支持率は07月下旬の63%から08月中旬には51%に低下した。
その後、支持率は以前の高水準に回復した。引き金は?——ドナルド・トランプの支持を取り付け、交渉をまとめた李の成功である。
韓国の指導者は見事に手札を切った。
08月25日、李はホワイトハウスに到着し、トランプの体格に合わせてカスタマイズされ、彼の名前が刻まれたゴルフパター、「make america great again」とあしらわれた2つのカウボーイハット、そして韓国の造船の伝統を象徴するための、装甲のある亀甲船の30センチほどの模型を携えていた。
合衆国の最高司令官が李のペンを気に入ると、それも差し出した。
さらに賛辞もあった。
オーバルオフィスのけばけばしい新装飾、急騰する株式市場、トランプの外交手腕についてだ。
「欧州、アジア、アフリカ、中東における多くの戦争が、あなたの果たしている役割のおかげで平和へと向かっている」と李は熱弁した。
会談に臨むにあたり不安感があったのは事実だ。
トランプがその数時間前、Truth Socialに『韓国で何が起きているのだ?』と投稿し、前大統領・尹に対する捜査に言及して「粛清か革命か」をほのめかしていたからだ。
李のチームは、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキーや南アフリカのシリル・ラマポーザに仕掛けられたような待ち伏せに遭うのではと恐れていた。
結局のところ、雰囲気は和やかで、トランプは李を「とても良い人物」と称えた。
もちろん、賛辞に加えて李が持参したのは現金——5,000億ドル分——だったことも功を奏した。
既に合意済みの3,500億ドルに加え、李は米国内への追加の1,500億ドルの投資を発表し、その中には大韓航空によるボーイングへの500億ドルの発注も含まれていた。
舞台裏では、李は米国向けに用意した3,500億ドルの投資ファンドについて厳しい問いに直面していた。
それは全額が現金なのか? そして、その投資で損失が出た場合は誰がかぶるのか? 合衆国側の要求はあまりに厳格で、「もし私がそれに同意したら弾劾されただろう!」と李は言う。
「そこで私は合衆国の交渉チームに、妥当な代替案を求めた」
これらの問題で合意が得られなかったことを踏まえれば、李がトランプの金正恩に対する過去の外交的成功を称賛することに焦点を当てつつ、平壌との再関与を促したのも、ある意味では驚くに当たらない。
トランプは北朝鮮の指導者と3度会談しており、その中には、1950~53年の朝鮮戦争以来半島を分断してきた非武装地帯での会談も含まれる。
しかし、2019年のハノイ・サミットでは、シンガポールでの前回首脳会談で達成された「非核化」に関する当初の合意を発展させることに失敗し、その責任を互いに押し付け合いながら、両首脳が早々に席を立つという劇的な形で、金との芽生えつつあった蜜月は破綻した。
李にとって、韓国の関与を推し進めることは、リスクがないわけではない。
まさに彼の『共に民主党』系の前任者、文在寅が、スターリン主義の隣人への譲歩にこだわっているように見えたがゆえに、世論は彼に背を向けたのだ。
それでも、金との“外交界最大の連続ドラマ”を再点火することには、合衆国大統領も関心を示している。
「私は今年、彼に会いたい」と、トランプは記者団に語った。
しかも、金をめぐってトランプの意向に迎合することは、ソウルとの厄介事を李が小さく見せる助けにもなり得る。
「李氏はおそらく、通商と投資の問題からトランプの注意をそらすために、北朝鮮の話題を持ち出したのでしょう」と、北海道大学のナオミ・チー教授は言う。
トランプがノーベル平和賞を切望しているのは周知の事実だ——これまでにイスラエル、パキスタン、カンボジアが彼を推薦している——そして李は、その幻想を使ってトランプを味方につなぎ止めるかもしれない。
これはまた、北朝鮮の最大の後ろ盾である北京と関与することを必要とする外交的取り組みでもあり、世界の二大経済間の緊張を和らげ、李の言う「橋」としての韓国の国際的地位を高める可能性がある。
北朝鮮との関係改善に対してトランプをノーベル平和賞に推薦するかどうか尋ねられると、李は「この問題について具体的な進展があるなら……その賞に値する人はほかにいないだろう」と答えた。
問題は、その「進展」をどう定義するかだ。
リビアのムアンマル・カダフィ大佐やイラクのサダム・フセインが、自らの兵器計画を放棄した後に打倒された運命を考えれば、金が核抑止力の放棄を容認するとは、ほとんど誰も信じていない。
「合衆国が望める最善は、非核化ではなく、核兵器に関する協議です」と、かつて指導部の秘密資金を扱い、安全上の理由から偽名を使う、ソウル在住の北朝鮮脱北者、キム・チョルミンは言う。
「すべての制裁解除と引き換えに、核兵器の一部破棄ということだ」
だが、2017年に課された厳格な国連制裁体制を巻き戻すことは、ソウルと平壌の経済協力を事実上不可能にしてきただけに、極めて物議を醸すだろう。
とはいえ、軍備管理に焦点を当てることは理にかなっている。
北朝鮮は少なくとも50発の核爆弾を保有し、年間10~20発を生産できる能力があると推定されている。
李は、北朝鮮が1994年に、重油と軽水炉と引き換えに核計画の凍結に同意したことを指摘する(この合意は2003年に崩壊した)。
彼は、三段階のプロセス——兵器の停止、削減、そして最終的な非核化——と引き換えに、北朝鮮に対する「制裁の一部緩和または解除に向けた交渉」を提唱している。
「そして、トランプ大統領も同じ考えであると、私は信じている」
もちろん、いかなる合意も、北朝鮮がテーブルに着く意思にかかっている。
しかし今日、同政権は、プーチンのウクライナでの戦争を支援するための武器販売で得たと推定される200億ドルで潤っており、李の融和的な措置は嘲るような応酬で迎えられている。
昨年、金は平壌で祖国統一門を象徴的に爆破し、影響力のある妹の金与正は、南北の信頼回復に関する李の発言を「華やかで空想的な夢物語」と一蹴した。
結局のところ、たとえ失敗しても意味を持ち得る。
トランプのこれまでの北朝鮮関与は、客観的な尺度では失敗に終わったが、元リアリティー番組スターである彼にとってはそうではなかったのだろう。
彼にとって成功は、紙面の行数、ニュース速報のアラート、そして打ち破られた作法で測られる。
お世辞が戦略となる時代に私たちは生きており、トランプに渇望する舞台を与える李の行為は、逆境をはねのける術にかけては人後に落ちない指導者による、抜け目のない「目くらまし外交」なのかもしれない。
「韓国の人々には不屈の意志がある」と李は言う。
「私の人生の軌跡にも共通点がある。私たちの前には多くの困難があるものの、乗り越えることができると信じている」
李が『TIME』と向き合ったのと同じ日に(中略)北京では、中国の習近平国家主席が、第二次世界大戦終結80年を記念するため、ロシアのウラジーミル・プーチンと北朝鮮の金正恩を迎えていた――となっていますので、インタビューが行われたのは、2025年09月03日です。
この時点で、李在明(イ・ジェミョン)さんは「大の成果の一つは、韓国の国内政治状況が安定したことだ」と考えていたことになります。
面白いのは「逆境をはねのける術にかけては人後に落ちない指導者による、抜け目のない『目くらまし外交』なのかもしれない」という表現で、李在明(イ・ジェミョン)さんの本質を突いた言葉ではないでしょうか。
こういう「目くらまし」に日本の政治家はすぐだまされるのです。
増税メガネ岸田文雄とか、(まったく何を言っているのか分からない)石破茂などは、『TIME』の記者に劣ります。
(吉田ハンチング@dcp)







