2025年11月01日、『APEC』首脳会議を機に訪韓した中国の習近平総書記と、韓国大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)さんとの間で中韓首脳会談が開催されました、

韓国の大統領室は中韓首脳会談の成果について以下のようなプレスリリースを出しました。一応全文和訳ですが、面倒くさい方は飛ばしていただいても大丈夫です。
習近平主席の国賓訪韓に関する魏聖洛国家安保室長ブリーフィング
2025年11月1日李在明(イ・ジェミョン)大統領は、11月01日、11年ぶりに韓国を国賓として訪問した中国の習近平国家主席と、就任後初の首脳会談を行いました。
本首脳会談では、両首脳が「民生(人々の暮らし)が最も重要である」という共通認識を土台に、両国国民の生活に実質的に寄与する韓中関係の発展方向を定めることに重点が置かれました。
まず、習主席の訪韓日程について簡単にご紹介いたします。
習主席は10月30日に入国し、11月01日午前までAPEC首脳会議に出席した後、11月01日午後から両国間の訪韓日程に入りました。
11月01日15時30分、慶州博物館・千年微笑館にて公式歓迎式が開催され、李大統領が吹奏隊の先導と護衛を受けて到着した習主席を迎えました。
両首脳は歓談を交わしつつ、特別展示館に設けられた首脳会談会場へと移動しました。
15時50分から約100分間、中韓首脳会談が行われ、中韓間の民生分野における実質的協力強化の方策をはじめ、多様な懸案について深い議論がなされました。
首脳会談直後には、両首脳間で議論された実質協力構想を具体化するため、両国中央銀行間で締結された通貨スワップ契約書および両国政府部門間で締結された6件のMOUに関する交換式が行われました。
その後、両首脳は別途設けられた場所にて親交を深める日程を持ち、18時15分から約70分間、中韓両国から約100人が参加する中で国賓晩餐会を共にしました。
両首脳は和やかな雰囲気の中で、地方から国民と共に歩み国家指導者に成長してきた経験を共有し、共通の趣味である「囲碁」に関する会話を通じて親近感と信頼関係を確認しました。
今回の首脳会談の成果を簡潔に申し上げます。
第一に李在明(イ・ジェミョン)政権の国益・実利に基づく対中外交によって、中韓関係を全面的に回復させる成果がありました。
これまで中韓関係の進展には浮き沈みがあったのは事実ですが、内外の環境の変化の中でも、国権を失った時期の困難を共に克服してきた中韓の歴史的経験、そして両国の経済成長を支えてきた互恵的協力の性格には変わりがないという点を再確認しました。
このような韓中関係の重要な資産を基に、両首脳は時代の変化に対応した中韓戦略的協力パートナー関係の成熟した発展を推進していくことに意見を一致させました。
第二に韓中関係発展の基盤を強化するため、両国政府間の政治的信頼を確保し、民間レベルでも友好的な信頼の蓄積を並行して進めていくことにしました。
特に、中間間のハイレベル定期対話チャネルを稼働させ、韓中関係の懸案事項および地域・グローバル課題についての戦略的意思疎通を強化することに加え、多様な分野での交流・協力を通じて両国民間の相互理解を高め、友好感情を増進していくことにしました。
第三に韓中の経済協力構造の変化を反映し、「水平的協力」に基づいた互恵的な協力を推進し、国民が肌で感じられるような民生分野における実質的な協力成果を創出していくことにしました。
両首脳は2009年から継続してきた中韓通貨スワップ契約の延長を歓迎し、中韓FTAサービス・投資交渉の実質的進展に向けた協議を加速し、地域経済の活性化のための協議チャネルを多様化するとともに、サプライチェーン安定化のための協力を強化していくことにしました。
また、文化・環境分野において両国民の「生活の質」向上に向けた協力を進展させるとともに、人的交流の活性化を目指して相互訪問の利便化措置を実施するなど、継続的な努力を行うことにしました。
さらに、最近、中韓両国民が国家を越えた詐欺犯罪の被害を受けている状況において、両国が「民生の安定」という共通の利益の下で対応協力を強化していくことにしました。
第四に中韓関係の発展が「民生の問題」と「平和の問題」の双方に実質的に貢献するよう努力していくことにしました。
李大統領がわが政府の非核化および平和実現構想を紹介し、北朝鮮との対話再開に向けた中国の建設的役割を要請したことに対し、習主席も朝鮮半島問題の解決と平和・安定のための努力を継続する旨、応じました。
最後に、今回の首脳会談での成果文書について申し上げます。
まず、前述の両国間の合意文書について詳しく説明いたします。
両国中央銀行間で、5年満期・70兆ウォン規模の「ウォン-人民元通貨スワップ契約書」を締結しました。
これは両国の金融・為替市場の安定と貿易促進に寄与するものと期待されます。
次に、韓中間の互恵的協力を推進していくための長期的方向性を設定する「中韓経済協力共同計画(2026~2030)に関するMOU」と、
中韓FTAサービス・投資交渉の実質的進展を通じて両国間の経済協力の制度的基盤を支える「サービス貿易交流・協力強化に関するMOU」を締結しました。
両国民の生活に実質的に貢献する未来志向の協力を推進していくため、
「『シルバー産業』および『革新創業』分野に関するMOU」、
また「韓国の農産物の中国への輸出を円滑に進めるためのMOU」も締結しました。
さらに、両国警察当局が国を越えるスキャム犯罪に共同で対応するための基盤となる「ボイスフィッシング・オンライン詐欺犯罪対応協力に関するMOU」も締結されました。
このほかにも、民間間では「中国の報道機関と韓国の複数メディアとの間でMOU」が締結され、これを通じて両国間の報道分野における交流・協力を強化し、両国民の感情的距離を縮めることに貢献するものと期待されます。
11年ぶりに実現した習主席の国賓訪韓はわが国の国益中心・実用外交の推進において、中韓関係の発展が安定した軌道に入ったことを示すものです。
わが政府は、中韓関係発展のモメンタムを維持し、国民の皆さまが中韓関係の実質的成果を実感できるよう、引き続き努力して参ります。
2025年11月01日
大統領室 国家安保室長 魏聖洛(ウィ・ソンラク)
「合衆国とのMOU」はないのに「中国とのMOU」は6本!
大統領室の魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長の長いお話ですが、注目したいのは「中国との間で――、
・中韓経済協力共同計画(2026~2030)に関するMOU
・サービス貿易交流・協力強化に関するMOU
・「シルバー産業」および「革新創業」分野に関するMOU
・韓国の農産物の中国への輸出を円滑に進めるためのMOU
・ボイスフィッシング・オンライン詐欺犯罪対応協力に関するMOU
・中国の報道機関と韓国の複数メディア間のMOU(民間MOU)
――とMOU(了解覚書)が6本も交わされたことです。これに中央銀行同士の「中韓通貨スワップ」契約1本です。
この中韓首脳会談の前に、米韓首脳会談が行われましたが(2025年10月29日実施)、驚くなかれ――
・共同声明なし
・MOUが一本もなし
――でした。
大統領室は「(MOUの締結まで)1~3日ほどかかるだろう」としましたが、米韓首脳会談が終わったのが29日ですから、このプレスリリースが出た11月01日時点で3日目です。
中韓首脳会談が終わってスグに本件についてのリリースが出ているにもかかわらず、米中首脳会談のMOUはまだ出ていません。中韓首脳会談まで時間を稼ごうとして「1~3日」といったのではないかと邪推したくなります。
中韓首脳会談まで時間を稼げば上掲のような(長い)発表ができるからです。
韓国にとって重要なのは「対中国」ではなく、最も貿易収支を稼いでいる「対合衆国」の関税をなんとかして下げることです。――にもかかわらず――「妥結した」と発表したのに米韓合意のMOUはまだ出ません。
おかしな状況です。
追記
注目したいのは「中国の報道機関と韓国の複数メディアとの間でMOU」です。先に中韓首脳会談についての中国外交部のプレスリリースをご紹介しましたが、中国側は「中国について口を慎め」みたいな内容が含まれています。
もしこれが韓国側発表の「韓国の複数メディアとの間でMOU」に該当するなら、中身が問題です。
(吉田ハンチング@dcp)







