韓国の京畿道が財政逼迫の窮状に陥りました。
京畿道といえば、大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)さんがかつて知事を務めたことがあります。

現知事は、文在寅政権下で法務部長を務めたあの秋美愛(チュ・ミエ)さんですが、2026年08月05日、悲鳴のような、ぼやきのようなプレスリリースを出しました。
「秋美愛(チュ・ミエ)知事、『京畿道の財政は非常事態』と公式宣言」――というタイトルです。
京畿道は単なる一地方ではなく、ソウルを取り巻く首都圏の中核であり、人口・産業とも韓国最大級の自治体です。
国家データ庁が2025年12月23日に公表した地域内総生産(GRDP)によると、京畿道の名目GRDPは651兆ウォンで、全国17市・道中最大で、全国名目GRDP2,561兆ウォンの25.4%を京畿道だけで占めます(第2位のソウルは575兆ウォン)。
特に強いのが製造業です。道内の製造業事業体数は全国の約30%、製造業従事者数は全国の約31%を占めます。製造業従事者は約124万8,000人。
読者の皆さまもご存じのとおり、京畿道は製造業の中でも半導体産業の心臓部ともいえます。例えば平沢には『サムスン電子』の巨大半導体キャンパスがあります。
ここが京畿道の面白いところで、東京のように(多い人口を基にした)サービス業基盤の経済ではなく、サービス業も製造業も強い。
京畿道は韓国で最も豊かな経済基盤を持つ地域といってもいいのです。
ですから、「地方の財政難」で片付ける話ではありません。なぜ韓国最大規模の経済基盤を持つ自治体が財政危機になる?――です。
ただし、現段階で「京畿道が倒れて首都圏経済が麻痺する」という種類の危機ではありません。
韓国で最も税源が豊富であるはずの地域の一つが、通常の行政サービスを維持するための財源に困り始めていることです。
非常に長いプレスリリースなので、全文和訳ではなく「何が起こっているのか」、そのポイントをご紹介します。
財源不足が露呈し不足を補う力も土俵際
今回公表された数字を並べると、かなり異様です。
2026年の自主事業予算3兆8,317億ウォンのうち、3,132億ウォンを財源不足で当初から編成できていません。
そのため老人長期療養、学校給食、市内バスなどまで9カ月分しか予算を付けられない事業が生じています。
不足を補う地方債発行もギリギリの土俵際です。
さらに地方債は2026年だけで本予算5,202億ウォン+第1次補正1,978億ウォン=7,180億ウォン。年間発行限度9,367億ウォンに対して残り2,187億ウォンしかありません。
京畿道財政に危機をもたらしているのは奇妙な構造です。
企業が儲かっても、その法人地方所得税は基本的に市・郡に入るのです。
ですから『サムスン電子』や『SKハイニックス』などを抱える巨大産業地域なのに、「企業業績好調 ⇒ 京畿道税収急増」にはなりません。
実際、京畿道議会でも、半導体好況にもかかわらず道の税収には直接つながらないとして、法人地方所得税制度の改革を求める議論が出ています。
京畿道が大きく依存しているのは取得税※で、その取得税収が不動産市場、とりわけ不動産取引の動向に強く左右されます。
しかし、
2021年:10兆9,301億ウォン
↓
2026年:8兆1,510億ウォン(年間徴収目標額)
――と、京畿道の取得税収は、2021年の10兆9,301億ウォンから、2026年の年間目標8兆1,510億ウォンへ、2兆7,791億ウォン、約25.4%減少しています。
京畿道側はこれを財政悪化の主因と説明しています
不動産取引の激減と不動産価格の下落によるダブルパンチ
では、なぜ取得税の税収が急減したのでしょうか? 理由ははっきりしています。2022年以降、不動産の取引が急減したからです。
2021年:43万5,426件
2022年:23万2,729件
――と、わずか1年で不動産取引は約46.6%も減少しました。
特に取得税収への影響が大きかった共同住宅、つまりマンションなどは、
2021年:20万3,820件
2022年:8万4,433件
――で、なんと約58.6%減です。
しかも「件数」だけでなく「取引価格」まで下がりました。取得税収にはこちらも効きます。同じ10万件売れても、10億ウォンの住宅10万件と、5億ウォンの住宅10万件では、取得税収がまったく違います。
京畿道自身、2022年決算について、住宅分は取引量と取引価額が同時に下落したと明記しています。
不動産取引の激減と不動産価格の下落によるダブルパンチを被ったのです。
問題の本質は京畿道財政の構造にある
しかし、一番の問題は歳出(韓国では支出)の自由度がないことです。
総予算:41兆6,799億ウォンのうち、使途・負担規模が事実上あらかじめ決まっている部分が約38兆1,799億ウォンもあります。
「約91.6%」です。
※ただし、この91.6%全部が法律上の「義務的支出(의무지출)」という意味ではありません。「法定義務支出+国庫補助事業に伴う地方負担+市郡への法定・制度的移転+その他使途拘束財源を含む、事実上の固定・拘束的支出」です。
ほとんど決まっている支出がほとんどであるため税収が減少すると、すぐに「お金が足りない」となってしますのです。これが今回の「財政危機」の本質です。
歳入(収入)は景気に敏感な取得税に大きく依存する一方、歳出(支出)の約9割が硬直的――という財政構造自体が根幹にあるわけです。
(吉田ハンチング@dcp)






