2020年05月25日、中国人民銀行は人民元の対ドルレートの基準値を「1ドル=7.1209元」に設定しました。
これは2008年02月以来最も安いレートで、中国通貨当局による「元安」の容認です。なぜこんなことになったのでしょうか。
それは中国通貨当局が「これ以上ドルを溶かせなくなったため」と考えることができます。
まず以下のチャートをご覧ください(チャートは『TradingView』より引用)。
上掲のとおり、新型コロナウイルス騒動でもそれほど中国の人民元は通貨安が進行しませんでした。
WHOが緊急事態宣言を行った01月31日には「1ドル=6.9363元」でした。その後、ドル元レートは「1ドル=7.0128元」に抑え込まれます。約1.1%の元安です。
この抵抗線が上に破られ元安が進行しますが、次はおよそ「1ドル=7.0819元」が天井になって元安が抑え込まれます。01月31日と比較して約2.1%の元安です。
世界的に「武漢ウイルス」「中共ウイルス」などの批判が行われているにも関わらず、わずか「約1.1%」「約2.1%」の通貨安で済むなんていう話が信じられるでしょうか?
なぜ元安はもっと進行しなかったのでしょうか。
中国の通貨当局が「元安阻止」で為替介入を行ってきたからです。
元安を阻止するためには「ドル売り・元買い」を行わなければなりませんが、そのためには大量のドルが要ります。
新型コロナウイルス騒動の中、アメリカ合衆国との対立が深化する中でドルの入手が困難になっています。輸出によってドルを稼ぐこともままならず、これ以上「通貨安阻止のためにドルを溶かすこと」に耐えられない状態になっているのではないでしょうか。
外貨準備の中の合衆国公債を売却して、通貨安阻止に使用したとも考えられます。
実際、2020年02月から03月にかけて、中国は合衆国公債の保有残高を「1兆923億ドル」から「1兆816億ドル」に107億ドルも減らしています(データ出典:アメリカ合衆国『財務省』)。
2020年05月27日、人民元の対ドルレートはさらに上昇し一時「1ドル=7.1783元」に達しました。中国は通貨安をどこまで容認するでしょうか。
(柏ケミカル@dcp)