中国で識者による為替に関する発言が中国語メディアで注目を集めています。中国が変動相場制に移行するしかない、という話だからです。
『中国人民大学』元副学長の吴晓求教授は、
中国は大国であり、国際通貨システムの中で新鮮な血と新しい力を必要としている。
と述べています。また、以下のようにも。
あるいはこの三つの中からは二つしか選べない。すなわち独立した金融政策と自由な資本の流れを選択しなければならない。
吴教授は、中国は完全な金融開放を行わなければならない。そうなると「独自の金融政策」「資本の自由な移動」を取るしかないので、つまり「変動相場制」に移行するしかない――という主張です。
これは、いわゆる「国際金融のトリレンマ」からきた話です。
「不可能な三角形」とは?
国が取り得る金融政策において、「Sovereign Monetray Policy(独立した金融政策)」「Fixed Exchange Rate(固定相場制)」「Free Capital Flow(自由な資本移動)」の3つの方針を全て取ることはできない。そのうちの2つしか取り得ない、これが「国際金融のトリレンマ」といわれるものです。
これは、経済学者のロバート・アレクサンダー・マンデル教授が提起した国際金融の定理で、現在では広く認知されるようになっています。
「不可能な三角形」と呼ばれることもあり、上掲図のようにその国が立ち得るのは三角形の「a」「b」「c」各辺のどこかです。すなわち、
a:「独立した金融政策」と「固定相場制」を取れば、「自由な資本移動」は実現できず
b:「独立した金融政策」と「自由な資本移動」を取れば、「固定相場制」は実現できず
c:「固定相場制」と「自由な資本移動」を取れば、「独立した金融政策」は実現できず
というわけです。
中国は自由な資本移動などする気はない
中国がどこに立っているかというと、上記の図の「a」です。まず、独立した金融政策を行っています。また、通貨当局がその日の為替レートの上下動の幅を設定するという事実上の為替介入を行っており、「固定相場制」です。
ですから中国には「自由な資本移動」はありません。というより、そもそも中国共産党は自由な資本移動をさせたくない(する気がない)ので、これははなから目標となっていません。
中国が変動相場制に移行するなら「自由な資本移動」を取ることができますが、それを取るつもりはないのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)