韓国は「フッ化水素」を輸入するだけでなく、輸出もしています。この輸出入の単価がとても興味深いのです。
韓国の「フッ化水素の輸出入の相手」は中国が最大
韓国の半導体産業に日本産の超高純度フッ化水素・フッ酸が必須ということで、2019年07月に日本政府が打ち出した「輸出管理強化」は韓国に大きな衝撃を与えました。その余波は現在も続いています。
韓国は、フッ化水素を中国から最も多く輸入しています。以前の記事で用いたグラフを以下に再掲載します。
中国から輸入しているフッ化水素は半導体製造以外の工業用で、低純度のものと推測されます。
一方で韓国はフッ化水素を輸出もしており、最大の輸出相手先はやはり中国なのです。これは、中国にある韓国企業の半導体生産工場などに高純度・超高純度のフッ化水素・フッ酸を輸出しているものと考えられます。
その証拠に「中国からの輸入されるフッ化水素」と「中国へ輸出されるフッ化水素」の単価がまるで違うのです。
輸出入「フッ化水素」の単価を見てみると……
『韓国貿易協会』(KITA)のデータベースから2017年01月~2020年06月までの対中国の「フッ化水素の輸出入」の「金額」「量」をピックアップしました。残念ながら、データには「低純度」「高純度」といった区別がないため、例えば、
2017年01月:中国からの輸入6,755千ドル/6,919,010kg
であれば「0.98ドル/kg」というふうになで切りで計算を行いました。「中国から輸入されるフッ化水素」「中国へ輸出されるフッ化水素」の単価をグラフ化したのが以下です。
上掲のとおり、2017年01月~2020年06月で見ると、
中国から輸入されるフッ化水素は1kg当たり「1.6ドル」
中国へ輸出されるフッ化水素は1kg当たり「2.9ドル」
と単価が「1.79倍」となっています。これが純度の違いによる価格差ではないでしょうか。
そして、よくいわれているように、韓国には「日本の輸出管理強化までフッ化水素の精製施設がなかった」のだとすれば、韓国から中国へ輸出された高純度・超高純度のフッ化水素・フッ酸は日本産だったはずです。
つまり、日本から輸入したものを「中国の自社工場へ送る」などで中国へ輸出したのです。
そこで同様に日本からの輸入単価を計算しました(こちらもなで切りです)。例えば、
2017年01月:日本からの輸入1,968千ドル/1,452,656kg
であれば「1.4ドル/kg」になります。これを2017年01月~2020年06月の同期間で「中国への輸出単価」と比較したのが以下のグラフです。
上掲のとおり、2017年01月~2020年06月で見ると、
日本から輸入されるフッ化水素は1kg当たり「1.8ドル」
中国へ輸出されるフッ化水素は1kg当たり「2.9ドル」
です。驚くのは、高純度・超高純度のフッ化水素・フッ酸を日本は非常に安価に提供しているのではないかという点です(もう少し値上げしてもいいんじゃないでしょうか)。さらに、仮に韓国が日本産の高純度・超高純度のフッ化水素・フッ酸を中国へ輸出しているなら、日本産の約1.64倍の価格で出していることになります(いわば「仕入れ値の1.64倍」)。
自社工場に送るのにサヤを抜くというのもいかがなものか――ですが実際にモノを動かさないといけないのでこれぐらいは乗っけないといけないのかもしれませんが。
韓国は日本産のフッ化水素を横流ししていた、なんていわれたりしますが、むしろ「転売ヤー」として小遣い稼ぎになっていた(あるいは「なっている」)というのが本当のところかもしれません。量自体はそんなに多くはありませんので。
※上記のとおり、輸出入集計においてフッ化水素・フッ酸はひとつのコードで集計されており、純度の違いなどを全てなで切りにしたデータであることに留意してください。
⇒参照・データ引用元:『韓国貿易協会(KITA)』公式サイト
(吉田ハンチング@dcp)