韓国では「1兆ウォン規模」といわれる『オプティマス資産運用』(Optimus Asset Management)の詐欺事件についてです。
実態はジャンク債に資金を投じたにもかかわらず、公的機関の売上債権を金融商品化したものに投資するとうそをついてお金を集め、結局償還できなくなったという事件です。2020年11月時点では5,146億ウォン(約53.6億円)のうち84.8~92.2%が回収不可能と推算されていました。
現在韓国メディアでは「数千人から1兆6,000億ウォンを集めた」と報じられています。
問題は、オプティマスの資金が政権内部に流れていたのではないかという疑惑があることです。公的機関から資金提供を受けることができたのは、ロビー活動によるのではないかと疑いが持たれており、検察も調査を行っていました。
オプティマスがロビー活動を行えるように手引きしたものがおり、その見返りにお金を受け取ったのではないか、というわけです。
前経済副首相、前国民銀行頭取、元検事総長(尹さんではありません:念のため)、元軍人共済会理事長などそうそうたる名前が捜査対象として挙がっていました。
また、現在大統領候補となっている李洛淵(イ・ナギョン)前『共に民主党』代表の秘書室副室長を務めた人(自死されました)もまた関係者と見られていたのです。
そのため、この疑惑を追っていけば一大スキャンダルに発展すると見られていたのです。
検察は諦めた?
ところが、2021年08月08日、ソウル中央地検経済犯罪刑事部は、このロビー活動関連疑惑についてほとんど実態がないと発表。これら疑惑の対象者を不起訴処分と発表しました(一部についてはまだ捜査中)。
2020年、検察が押収した「オプティマス文書」がリークされましたが、それによれば、前首相が前検察総長を紹介したこと、前副首相が某発電所プロジェクトへの投資を推薦し、オプティマスの大株主であったイ・ドンヨルさんが投資したという内容が含まれていたのですが、これはなかったことになりました。
それだけではありません。
自死された李洛淵大統領候補の秘書室副室長が4,000万ウォン相当の金品を受け取ったのではないか、という疑惑について、検察は李候補の関与は認められないと否定しました。
さらに「オプティマス文書」によれば、同じく大統領候補である李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事にも疑惑があったのです。
これは、オプティマスの資金が流入した京畿道奉賢区の物流団地事業について李理事が請託を受けたのではないか、という疑惑です。
しかし、検察は「当時二人は一緒に食事をしたりしたが、請託はなかった」とその事実は否定。奉賢区物流団地事業で許認可申請が却下処分されており、疑わしい点はないとしたのです。
結局、検察の捜査はほぼ政権関係者に及ぶことがなく終了を迎えそうです。
尹前検察総長が検察の捜査を批判
この検察からの発表があった同日、大統領候補の尹錫悦(ユン・ソギョル)前検察総長が「権力に免罪符を与えた検察の捜査、これは文在寅政権の指示なのか」と、こ有力者に疑惑なしとしたことを批判しました。
韓国メディアの一部からは「1年2カ月に及ぶ捜査は竜頭蛇尾に終わった」と批判も出ています。
政府与党にとっては胸をなで下ろす結果になったかもしれませんが、本当にこれで捜査が終わったかどうかは分かりません。
次の大統領選挙で保守勢力が政権の座についたら……再捜査を行うかもしれないからです。韓国ではそういったことが十分起こり得ます。関係者が安心するのはまだ早いかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)