外貨準備高が増えるという、韓国にとってはいい話です。
1997年の「アジア通貨危機」で大変な目に遭ったためか、韓国ではしばしば『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)は「死神」と呼称されますが、この死神からの分け前が増えたのです。
なんのことかというと「SDR」です。
「SDR」とは?
SDRについてご存じの方はこの小見出しの文章を飛ばしてください。
SDRとは「Special Drawing Right」の略で「特別引出権」と訳されます。
『IMF』に加入した国は出資比率に合わせて、SDRが割り当てられます。いざというときにはこれを外貨に換えて使うことができるのです。
SDR、特別引出権は外貨準備高に計上します。例えば、以下の『韓国銀行』が公表した07月の外貨準備の中にもSDRが入っていますね。
↑「SDRs」という項目が韓国が『IMF』から引き出して使うことのできる「SDR」の金額です。07月は35億ドルとなっています
SDRというのは、一種の「仮想通貨」(暗号資産ではありません)のようなものです。ドル、ユーロ、ポンド、円、人民元の5種類の通貨から組成されます(この5つの通貨を入れて組成するのでSDRの通貨バスケットといいます)。
『IMF』はSDRを組成するためにそれぞれの通貨のウエイトを以下のように定めています。
2016年10月01日~
ドル:41.73%
ユーロ:30.93%
人民元:10.92%
円:8.33%
ポンド:8.09%⇒引用元:『IMF』公式サイト「Press Release: IMF Executive Board Completes the 2015 Review of SDR Valuation」
なぜこんなことをしているかというと、価値をできるだけ変動させないためです。
1億ドル借り、返す段になってドルが極端に強くなっていたらどうでしょうか? 返済する1億ドルを集める(両替する)のにそれ以外の通貨はより多く必要になります。お金の貸借に為替レートが大きな影響を与えないように、SDRという仮想通貨のようなものを用いるのです。
そのため、SDRの価値は日々変動します。
以下は2021年08月23日時点でのSDRの価値です。
上掲のとおり、この時点では「1SDR = 1.418470ドル」となっています。
『IMF』がSDRを配分!
で、2021年08月23日、『IMF』はこのSDR約6,500億ドル分の配分を決定しました。
上掲は『IMF』のプレスリリースですが、これはもちろんコロナ危機に対する対応で、経済的な危機にある国に流動性を提供するために行われました。
『韓国銀行』からは以下のリリースが出ています。
上掲のプレスリリースによれば、韓国は出資比率に合わせて「82億SDR」(約117億ドル/約1兆2,848億円)の配分を受けることとなりました。
そのため、韓国の外貨準備高は増えることになります。何かあると外貨不足に悩むことになる韓国としては、いざというときの安全弁が増えたわけです。
(吉田ハンチング@dcp)