合衆国はWTOを機能停止に追い込む。改革なくば解体か

これまでアメリカ合衆国トランプ政権は、世界に秩序をもたらしてきたと考えられる国際組織や条約、制度について真っ向から噛みついてきました。

政治家から大統領になったわけではないトランプさんは、これまでの事情、歴史的経緯を斟酌(しんしゃく)せず、「合衆国にとって損か得か」という切り口だけで見ているため、このように全方位で吠えることができるのかもしれません。

上級委員が一人になるので、12月11日には紛争解決できなくなる

WTO(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)もトランプ大統領に噛みつかれ、骨抜きにされている組織です。社会の授業では、WTOについて「自由貿易を推進し、国の間の貿易紛争を調停する組織」などと習ったのではないでしょうか。

しかし、合衆国のトランプ政権はWTOを有用な機関とは見ていません。紛争解決能力が十分ではないと考えており、WTO改革を強引に進めようとしています。その強引さは、WTOの「紛争解決機関」の「上級委員会」のメンバーを承認しない、という手法にも現れています。

国の間の貿易紛争がWTOに持ち込まれた場合には、まず「小委員会」(パネルとも呼ばれます)で判断が行われます。それで片付かなければ「上級委員会」が判断することになります。裁判で例えるなら、WTOの紛争解決は「小委員会 ⇒ 上級委員会」の二審制で、いってみれば上級委員会は最高裁判所です。

上級委員会は「定員7名」ですが、案件ごとに3名が担当するという決まりです。

ところが、合衆国は委員の再任や指名を拒否し続けており、上級委員は2019年08月05日現在、以下の規定ぎりぎりの3人しかいません。

・Ujal Singh Bhatia (インド)/任期:2015年12月11日 – 2019年12月10日
・Thomas R.Graham (アメリカ合衆国)/任期:2015年12月11日 – 2019年12月10日
・Hong Zhao (中国)/任期:2016年12月1日 – 2020年11月30日

また3人のうち、BhatiaさんとGrahamさんは、共に2019年12月10日で任期満了ですので、新たなメンバーが入らなければ、残る上級委員はZhaoさんただ一人。このままでは2019年12月11日には、WTOの紛争解決機関の上級委員会は紛争事案を扱うことができなくなります。

つまり、2019年12月11日をもって、WTOは二審制の紛争解決能力を喪失するわけです。トランプ大統領は、合衆国の国益にかなわないWTOを本気で機能停止に追い込むつもりなのです。

(柏ケミカル@dcp)

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