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『Fitch』韓国の格付けを「AA-」で維持! しかし無慈悲な評価も下した

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2023年もこの時期になりました。韓国の格付けを世界的格付け会社が判定するシーズンです。

結論からいえば、世界的格付け会社『Fitch(フィッチ)』は韓国を「AA-」の格付けで維持、「安定的」としました。

以下は、2023年03月13日、『Fitch』が出したプレスリリースです。

⇒参照・引用元:『Fitch』公式サイト「Fitch Affirms Korea at ‘AA-‘; Outlook Stable」

以下は韓国の企画財政部が出したプレスリリースです。

⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「国際信用評価会社Fitch(Fitch)、韓国の国家信用等級『AA-、安定的』維持」

企画財政部が出したプレスリリースは、『Fitch』がこう評価した――という内容なので差異はありません。要点は以下のようになります。

面倒くさい方は強調文字などの部分だけご覧ください。

1.対外需要の萎縮および高い金利・物価により、今年の成長率は1.2%に減速すると予想する。

ただし、下半期にはポジティブな成長モメンタムに転換し、2024年の成長率は2.7%に反発する見通し。

ㅇ上半期の輸出は、半導体を中心に低迷すると予想され、高い金利水準が投資・消費を制約する恐れがある。

中国のリオープニングは、成長の下方圧力を緩和するのに役立つが、サービス中心の回復であるため、ポジティブな効果は限定的な可能性がある。

2.国内物価圧力が緩和され、インフレは’22年7月の6.3%から’23年2月の4.8%に低下し、’23年末には2.0%まで低下する見通し

ㅇ政策金利は今年中は現在の3.5%水準が維持され、’24年に入って50bp引き下げられると予想

3.高い家計負債の負担が消費を弱体化させる恐れがあるが、銀行の健全性などを考慮すると、金融システム全般に対するリスクはないと評価。

*韓国はGDPに対する家計負債の割合が世界で最も高い国の一つであり、変動金利の割合も80%に達すると言及。
** “do not anticipate broader financial-sector risks”

ㅇ銀行のバランスシートは堅調であり、厳格な信用審査基準とマクロ健全性制度などを考慮すると、資産健全性が大きく悪化する懸念は限定的。

ㅇ残高基準の家計ローン金利は今年01月4.84%で’21.07月の安値から約210bp上昇し、アパート価格は’22.5月比△10.8%下落したと指摘

ㅇLTV比率が低く(約40%)、資産価格の下落が銀行に与える影響を相当部分遮断(insulating banks to a degree)できるだろう。

4.昨年第4四半期のレゴランド事件以降、政府と『韓国銀行』の迅速な(swift)流動性供給に支えられ、国内資金市場環境が改善されたと評価。

ㅇ今後、ストレス状況が発生しても、同様の流動性供給などを通じて効果的に対応できると言及。

*当局が今後、同様の流動性支援措置を展開することで、市場ストレスが発生した場合に効果的に対応できるようになることを期待する

5.今年に入って強度の高い健全化措置が実施中であり、これによりGDP比財政赤字は昨年の2.7%(『Fitch』の見通し)から今年1.0%に縮小する見通し

政府は強い財政健全化の意志を示しており、これは今後の財政赤字などが現在の『Fitch』の見通しよりさらに改善され、中長期的な格付け調整圧力を緩和するのに役立つだろう。

*”政府は財政再建の道筋にコミットしているようで、現在の予測を上回る財政赤字削減への支援を推進し、公共財政からの潜在的な長期的な格付け調整圧力をさらに緩和する可能性がある”としている。

ㅇまた、国債比率は緩やかな上昇傾向を維持するものの、当初の『Fitch』の見通しと比較すると大幅に改善すると予想している。

*26年GDP比国家債務を60%と予測していたが、今回’27年51.7%に修正

ㅇ一方、予算に対する収入不足が予想されるため、財政目標値をやや下回る可能性があると言及。

6.継続的な経常収支の黒字、大規模な対外純資産などを考慮すると、対外健全性は堅調で、グローバルな不確実性に対応するのに十分なレベル。

ㅇ昨年08-11月に経常収支が赤字となったが、輸入の減速などを考慮すると、輸出が多少低迷しても黒字基調を維持する見込み(’23年GDP比の経常収支は1.9%と予想)

ㅇ外貨準備高の場合、昨年やや減少したにもかかわらず、経常支払額に対して5.9倍で十分であり、今年は保有額が再び拡充(rebuilding)され、今年末には経常支払額に対して6.5倍水準に達すると展望

7.過去数年間、特に進展なく高い緊張レベルを維持している、最近、ミサイル挑発を継続しているが、核兵器実験は’17年以降中止している。

2023年の経済成長率を無慈悲に下げた!

韓国政府としては、「安定的」という格付けを維持できたのは、ほっと一息なのですが――ポイントは、『Fitch』が、2023年の経済成長率を他の信用格付け会社よりも大きく下方修正したことです。

ちなみに世界的信用格付け会社、他の2社は以下のように読んでいます。

『Moody’s(ムーディーズ)』
2023年:1.6%
2024年:2.7%

『S&P』
2023年:1.4%
2024年:2.2%

上掲のとおり、『Fitch』は「2023年:1.2%」ですから、いかに韓国の2023年を低位と見ているのかが分かります。

さらに、『Fitch』は、中国のリオープニングについて、サービス業が中心となるでの、製造業の商品を中国に売っている韓国にはあまり関係ないかもよ――としました。

先にご紹介したとおり、韓国の企画財政部は「中国のリオープニング効果があるので、下半期には輸出の回復する」としていたのですが、この予測に『Fitch』は冷水を浴びせたことになるのです。

また『Fitch』は、2023年中は基準金利が「3.50%」で維持されるだろう、と述べています。

企画財政部がそのように吹き込んだのかもしれませんが、アメリカ合衆国が金利を上げていく中、それで耐え抜くことができるでしょうか。金利を上げると危ないのは確かですが。

不動産PFの爆弾は本当に破裂しないのか?

『Fitch』が2022年第4四半期に起こった「レゴランド事件」について触れているのも興味深い点です。「政府と韓銀の迅速な流動性供給に支えられ、国内資金市場環境が改善されたと評価していますが、残念なことにパッチワークで凌いだだけで、不動産PF(プロジェクトファイナンス)が危ないのに変わりはなく、また同じことが起こるかもしれないのです。

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今回『Fitch』が信用格付けを維持したのは、かつての予想よりも、政府負債の対GDP比の伸びが緩やかになったためと考えられます。ただし、もし国内で流動性を増さなければならない(要はお金をまかなければならない)事態が発生したら、また政府負債を積み増さないと仕方がありません。

例えば家計負債、あるいは不動産PFの爆弾に引火するよう事態になった場合、あそこに10兆ウォン、この緊急基金に20兆ウォン突っ込む、といった必要がでてきます。

そのときには政府がお金を出すしかないのです。当然、政府負債も増加するでしょう。

韓国の外貨準備は本当にその額あるのか?

そして経常収支

『Fitch』は輸入の減速(貿易収支は輸出 – 輸入で求めますから輸入が減少すれば黒字方向へへの圧力になる)によって、それでも2023年は通年黒字基調と評しています。

大筋で異論はありませんが、その黒字の程度がどのくらいになるのかが問題です。

韓国は通年経常収支が黒字でも通貨危機に陥ったことがあります。2008~2009年の韓国通貨危機時には、「2008年の経常収支:17億5,300万ドル」で危機となりました。

2008年末には、合衆国、中国、日本の3大国に泣きついたのです。つまり、たとえ経常収支が黒字だろうが、極端に黒字が減り、外貨資金の巨額流出に巻き込まれた時、韓国という国は脆弱なのです。

それは恐らく現在も同じです。

そうでなければ、2020年のドル枯渇によるドボン騒動の理由が分かりません。その時、韓国は外貨準備高が4,000億ドル超ある、となっていたのです。

最後に「外貨準備高」。

『Fitch』は、「昨年やや減少したにもかかわらず、経常支払額に対して5.9倍で十分」と評価していますが、これは本当にその額あれば――という話です。

1997年のアジア通貨危機の際に「ありませんでした!」と発覚して以来、疑問を持たれている韓国の外貨準備高は永遠に謎です。

もし本当にその額あるなら、なぜ2020年のドル枯渇危機の際に、合衆国の提供したドル流動性スワップにやっと救われるという惨状だったのでしょうか。

――ともあれ、韓国の格付けは安定的で維持されました。それにふさわしいかどうか、韓国政府のお手並みを拝見しましょう。

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(吉田ハンチング@dcp)

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