「あんたたちは何をやってるんだ」という話です。
韓国がドル不足でドボン寸前になった2020年03月前、証券会社が飛ぶかも――という懸念がありました。その震源地が「ELS」でした。
世にもばかばかしい話ですが、証券会社自体に追証が掛かって「飛ぶや飛ばざるや」状態だったのです。また、世界的なドル不足でしたが、本当に証券会社のドル不足は深刻でデフォルト寸前となりました。
ELSというのは、Equity-Linked Securityの略で、簡単にいうとハイ&ローゲームみたいな金融派生商品です。韓国の皆さんからは大人気で、かつては「国民的財テク商品」と呼ばれました。
以前ご説明しましたし、紹介しだすと長くなりますので、ELSがどんなものかについてはMoney1の過去記事を参照してください。
このELSが今また韓国で問題になっているのは、中国・香港ハンセン市場の「ハンセン中国企業指数」にリンクしたELSが大変な事態になるのではないか――と予測されるからです。
どれだけ深刻な状況かをハンセン指数のチャートで確認してみましょう(チャートは『Investing.com』より引用:月足)。
ELSの場合、36カ月満期が多いので、2021年01月の終値が「1万1,208.78」で、2023年11月28日23:51現在の値が「5,961.21」。
なんと約46.8%も下落しているのです。ほぼ半値です。
2021年に顧客が張った「ハンセン中国企業指数を基礎資産とするELS」が満期を迎える2024年に、もし値が回復していなければ、投入した資金が全て償還不可能になる可能性が高いのです(償還になる値を超えられなければ元金が全部パーになるルールなのです)。
で、今になって「このままではマズい」と泡を食っているというわけです。
韓国の金融当局は、各証券会社のELSの全数調査に乗りだすとしています。例えば『アジア経済』の記事の一部を以下に引いてみます。
(前略)
26日金融当局と金融圏によると、金融監督院は去る20日から香港ハンセン指数を基礎資産(収益率基準指標)とする株価連携証券(ELS)をここ数年間売ってきた銀行と証券会社を対象に事実上全数調査に着手した。(中略)
ELSは専門家も構造を理解しにくく、元金が保障されない高リスク商品であるにもかかわらず、単に「市中金利 + α」を期待できる預金商品であると認識する投資家が少なくない。
数兆ウォン台が販売されただけに「元金損失の危険を正しく告知されなかった」という主旨の苦情と紛争が急増するものと懸念される。
金融当局も調査段階から不完全販売可能性を念頭に、関連資料と情況を把握している。
銀行圏は予想しなかったハンセン指数急落による大規模ELS損失に慌てながらも、過去のファンド事態とは異なり、不完全販売など違法行為とは無関係であることを強調している。
(後略)
このままでは元も子もなくした投資家から「聞いてないよ」という声が上がるに違いない――というので、当局は「きちんとリスクを説明して販売したんだろうな」と証券会社に圧力をかけているのです。
<<追記 ここから>>
2023年11月28日、韓国5大銀行の一つ『農協銀行』がELSの販売を中止するとしました。
2023年08月時点で「ハンセン中国企業指数を基礎資産とするELS」の発行残高は20兆5,000億ウォン。
このうち銀行販売分は15兆8,000億ウォン。この銀行販売分では、8兆3,000億ウォンが2024年上半期に満期となります。
満期を迎える金額を銀行別に見ると、
『国民銀行』:4兆7,447億ウォン
『新韓銀行』:1兆3,329億ウォン
『ハナ銀行』: 7,380億ウォン
『農協銀行』: 7,330億ウォン
『SC第一銀行』: 6,187億ウォン
となっています。このままだと、2024年上半期に顧客の資金8.3兆ウォンがパーになる可能性があるというわけです。
<<追記 ここまで>>
(吉田ハンチング@dcp)