2026年06月16日、中国の国家統計局が「5月份国民经济运行总体平稳、向新向优」を公表しました。
和訳すると「2026年05月の国民経済は全体として安定的に推移し、新たな発展動力の育成と質的向上が進展」になります。
こういうのを大本営発表というのではないでしょうか。「ダメっぽいなあ」というデータがあります。以下に該当箇所を和訳して引用します。
面倒くさいという方は次の小見出しまで飛ばしてください。
(前略)
四、インフラ投資は増加を維持し、知的財産製品投資は成長が加速01~05月の全国固定資産投資(農家を除く)は17兆8,512億元で、前年同期比4.1%減となった。住宅不動産開発を除いた固定資産投資は1.2%減少した。
このうち、知的財産製品投資は前年同期比9.3%増となり、01~04月より0.4ポイント加速した。
分野別では、インフラ投資は前年同期比0.6%増、製造業投資は0.4%減、不動産開発投資は16.2%減となった。
全国の新築分譲住宅販売面積は3億1,320万平方メートルで前年同期比10.8%減、新築分譲住宅販売額は2兆9,366億元で13.5%減となった。
産業別では、第1次産業投資は前年同期比5.9%増、第2次産業投資は0.1%増、第3次産業投資は6.8%減となった。
民間投資は前年同期比7.1%減となり、不動産開発を除いた民間投資は3.5%減少した。
ハイテク産業投資は前年同期比4.5%増で、このうちコンピューターおよび事務機器製造業、航空・宇宙機器製造業、情報サービス業への投資はそれぞれ18.3%、16.7%、13.8%増加した。
5月の固定資産投資(農家を除く)は前月比1.91%減となった。
(後略)
そもそも固定資産投資って何? マイナスじゃん!
固定資産投資とは、工場建設・設備投資・インフラ建設・不動産開発などを合計したものです。中国はこれまでこの投資をテコにして経済成長を行ってきました。そのため、このような投資状況を示すためのリリースが出るわけです。
最も重要なのは固定資産投資全体がマイナスであることです。
固定資産投資 -4.1%となっています。
中国では長年、不動産開発・地方政府インフラ・工場建設が投資 ⇒ 成長のエンジンでした。
ところが今は、投資全体がマイナスです。これは中国政府が強調しているAI・半導体・新エネルギー・航空宇宙などの成長分野が伸びていても、経済全体を押し上げるほどの規模にはまだ達していないことを意味します。
負のスパイラルに陥っている!
数字として最も目立つのは「不動産開発投資 -16.2%」です。
さらに、
新築住宅販売面積 -10.8%
新築住宅販売額 -13.5%
――となっています。
つまり、投資が減っているだけではなく、販売も減っているのです。
販売不振
↓
資金不足
↓
新規開発縮小
↓
さらに投資減少
という悪循環のスパイラルが続いていることが分かります。
特に販売額の減少率(-13.5%)が販売面積(-10.8%)より大きいので、平均販売価格も下落している可能性が高いです。
民間企業には動きなし! 笛吹けど踊らず
もう一つ、指摘しておきたいのは、民間企業が極めて慎重で動きがないことです。
「民間投資 -7.1%」、不動産除いても「-3.5%」です。
もし不動産だけが悪いのであれば、「不動産を除く民間投資」はプラスになってもおかしくありません。
しかし実際には、不動産を除いてもマイナスです。
これは、民間企業が将来の需要・利益率・政策リスクについて慎重になっていることを示しています。
中国政府自身も近年、「民営経済を支援する」という言説を繰り返していますが、この数字を見る限り、企業側の慎重姿勢はまだ解消されていません。
興味深いのは「第三次産業投資 -6.8%」です。
第三次産業というのは、
小売
サービス
不動産
金融
情報産業
などです。
中国政府は近年「内需拡大」を強調しています。しかし実際には、サービス分野への投資が減っています。
不動産開発が掘った巨大な穴がデカすぎる!
一方で、戦略産業への投資は伸びています。
恐らく中国政府が喜んでいるのはこの部分でしょう。
知的財産製品投資 +9.3%
ハイテク産業投資 +4.5%
さらに、
コンピュータ・事務機器製造 +18.3%
航空宇宙 +16.7%
情報サービス +13.8%
です。これはまさに、半導体・AI・デジタル産業・航空宇宙・軍民融合産業への集中投資です。
中国政府が掲げる「新质生产力(新質生産力)」の方向性と一致しています。
ただし、ハイテクだけでは不動産の穴を埋められません。ここが最大のポイントです。
中国政府の狙いは、不動産中心経済 ⇒ ハイテク中心経済への転換です。
しかし数字を見ると、「不動産投 -16.2%」に対し、「ハイテク投資 +4.5%」です。下げの規模と上げの規模が合いません。
不動産は長年、中国GDPのかなり大きな部分を占めてきました。半導体工場やAI投資は伸びていても、いまだ住宅建設・土地開発・関連消費の落ち込みを代替できてはいないのです。
(吉田ハンチング@dcp)





