2020年05月06日、韓国の中央銀行『韓国銀行』は、市中銀行に「ドル」を供給するための第6次競争入札を実施しました。
韓国では「通貨スワップ」と呼んでいますが、これはFED(Federal Reserve Systemの略称:連邦準備制度)と締結した「ドル流動性スワップ」※1を利用したドル供給です。
FEDではこのドル流動性スワップの利用状況を毎週末公開しています。納税者に対しての透明性を高めるためですが、このおかげで「滞納」などしようものなら世界中に知られてしまいます。
05月08日に公開されたデータで『韓国銀行』のドル流動性スワップの利用状況を確認してみましょう。まず「U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results」(ドル流動性スワップ-運用結果)です。
確かに05月06日に落札された「13億2,900万ドル」が入っています。決済日は05月08日です。
次に「U.S. Dollar Liquidity Swap-Amounts Outstanding」(ドル流動性スワップ-未払い金額)です。
今回の公表データは05月07日までのお金の動きを記録したものなので、決済日05月08日の「13億2,900万ドル」は入っていません。ですので、未返却金額は先週と同じ「174億5,800万ドル」のママです。
利用総額「198億7,200万ドル」、利払い総額「約2,678万ドル」!返済開始は06月25日から!
『韓国銀行』は第6次競争入札をもって「ドル流動性スワップの利用を一時休止する」と表明しています。
では、ここまでの利用総額はいくらになったのでしょうか? これは「U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results」(ドル流動性スワップ-運用結果)のシートを足し算すればすぐに出ます。
『韓国銀行』のドル流動性スワップ第1-6次利用総額「198億7,200万ドル」
――です。ネット上では「240億ドル」といった言説を見ることがありますが、それはいささか過大です。約199億ドル、ざっくり200億ドルというのが本当のところです。
『韓国銀行』は上限600億ドルでFEDとスワップラインを締結していますので、ざっくり1/3を利用したところで休止したわけです。
利用総額「198億7,200万ドル」のうち、未返済金額は、05月07日までの「174億5,800万ドル」に新規第6次利用の「13億2,900万ドル」を足したものになりますので、計「187億8,700万ドル」です。
これは借金ですので、当然利払いが発生します。
先の記事で利払いがいくらになるかご紹介しましたが、その後第6次利用の「13億2,900万ドル」(年利0.2941%)が加わりましたので以下に更新しておきます。
調達金額 | 利払い金額 | |
第1次調達 | 79億2,000万ドル | 1,654万9,979ドル |
第2次調達 | 41億4,000万ドル | 507万1,579ドル |
第3次調達 | 20億1,500万ドル | 163万4,419ドル |
第4次調達 | 21億1,900万ドル | 165万1,218ドル |
第5次調達 | 12億6,400万ドル | 98万5,504ドル |
第6次調達 | 13億2,900万ドル | 88万8,802ドル |
小計 | 187億8,700万ドル | 2,678万1,502ドル |
※「06日もの」「07日もの」「08日もの」など満期が短いものについてはすでに返却が終わっていますので、これから利払いが発生するのは上掲のもののみです。
利払い額「2,678万1,502ドル」は日本円に換算すると「28億5,276万5,601円」です(ドル円レートは106.52円(05月08日)で計算)。第5次利用時点から利払いが「約9,500万円」増えました。利払いだけでウンザリするような金額です。
「利払い金額」の計算の仕方は以下の記事を参照いただければ幸いです。
なお、第1次利用の「84日もの:79億2,000万ドル」は上掲の利子「1,654万9,979ドル」を付けて06月25日に返さなければなりません。
もう来月です。さて、『韓国銀行』はきちんと返済できるでしょうか。ここも見物です。もし返却できなかったら「ロールオーバー(借り換え)」することになるでしょう。
※1韓国メディアは「通貨スワップ」、時に「通貨スワップ協定」と呼称しますが、紛らわしいのでMoney1ではFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)に従って「スワップライン」「ドル流動性スワップ」と記載します。本稿のタイトルだけはアンカーが韓国の表記に合せて「通貨スワップ」としています。
(柏ケミカル@dcp)