2020年06月05日、韓国の中央銀行『韓国銀行』から2020年04月の『国際収支統計』が公表されました。
先の記事で「経常収支(Current Account)」が31億ドルの赤字に転落したことをご紹介しましたが、「金融収支(Financial Account)」でも面白いものが見られます。
「金融収支」は海外との金融上のやり取り、その収支を記録しています。まず下をご覧ください。『韓国銀行』が公表した「金融収支」のデータです。
「金融収支」がマイナス63億2,000万ドルとなっています。これはつまり海外との金融上のやり取りで63億ドル資産が減った(負債が増加した)ということです。
なぜそんなことになったのか、と右の方を見ていくと「その他投資(Other Investment)」の収支に「マイナス174億ドル」(約1兆8,957億円※1)もの巨額の赤字(資産の減少・負債の増加)が計上されています。
この巨額の赤字は「資産(Assets)」と「負債(Liabilities)」の収支です。
「資産」が「マイナス6億3,640万ドル」と減少。「負債」は167億6,500万ドルも増加しています。つまり資産が減少して負債が激増し、結果としてこのような巨額の赤字になったのです。
なぜこうなったのかはさらにその下の細目を見ないといけません。以下をご覧ください。「その他の投資」の中の「現・預金 負債(Currency and deposits, Liabilities)」を見たものです。
中央銀行(Central Bank)のところに175億1,550万ドルもの巨額の負債が計上されているのです。
これはつまり『韓国銀行』が海外から巨額の現金を調達したことを示しています。借金の激増です。
そう、これこそ韓国が通貨スワップ※と呼んでいる、アメリカ合衆国のFED(Federal Reserve Systemの略称:連邦準備制度)と締結したドル流動性スワップによる巨額ドル調達の結果かと推測されます。
満期が07日といった短いものは04月に返却してしまいましたので、04月末にも未返済で残っている金額を計算してみると……。
第1次調達の79億2,000万ドル
第2次調達の41億4,000万ドル
第3次調達の20億1,500万ドル
第4次調達の21億1,900万ドル
第5次調達の12億6,400万ドル
小計:174億5,800万ドル
となり「175億1,550万ドル」とほぼ合います。
ドル流動性スワップを利用して調達した巨額のドルは、韓国の04月の「金融収支」をマイナスに転じさせるほどに大きなインパクトがあったということではないでしょうか。
もちろんこれは借金ですので、全部返さないといけません。
※12020年06月05日の「1ドル=108.95円」レートで換算
※2韓国メディアは「通貨スワップ」、時に「通貨スワップ協定」と呼称しますが、紛らわしいのでMoney1ではFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)に従って「スワップライン」「ドル流動性スワップ」と記載します。本稿のタイトルだけはアンカーが韓国の表記に合せて「通貨スワップ」としています。
(柏ケミカル@dcp)